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五本場45

「……ツモ」

 七海は小さく呟くと、ツモった牌を手牌の右側にそっと置いた。その牌は4であった。

「4じゃ一通にはならんのぉ、一○○○・二○○○で首ナシの二着か?」

 日和亭がそんな事を言っているが、七海は構わず、全員の注目を集めている自分の手牌をゆっくりと開陳した。


2377999(456)(南南南) 4


「一三○○・二六○○です」

「んん?4を56で鳴いて8切りって事は、鳴いた4で和了りじゃないか」

「……ええ、4の出和了りでは首ナシ二着なので」

 つまり七海は、以下の形から4をチーしたという事である。


2356778999(南南南)


 この時点で1―4待ちであるが、そのまま手を倒したのでは中野との収支差をまくる事は出来ない。何とか五二○○点を作る為、4を56で鳴く事によって7を雀頭にスライドさせ、9を雀頭から暗刻に昇格させる事によりテンパネを図ったという事である。

「一三○○・二六○○という事は……」

 七海のテンパネツモで、点棒状況は以下の通りで終了する事になった。


七海 二五九○○点

ノノ 二二八○○点

中野 二三二○○点

日和亭二八一○○点


 トップは日和亭であるが、七海は首アリの二着をもぎ取った。収支に換算すると以下の通り。


七海 +二千一百円

ノノ ▲六千七百円

中野 ▲三千二百円

日和亭+七千八百円


 七海と中野の差は、ちょうど五千三百円となっている。

「うむ、お嬢ちゃんはビンタ初めてだったらしいが見事だったな」

 日和亭が称賛の声を掛けてくれているが、七海の耳には届かず、七海はただ対面に座っている中野に視線を向けていた。中野もまた、七海に視線を向けている。

 その時、店内のカーテンのわずかな隙間から真っ赤な陽光が射し込んで来た。気付けば雨は上がっているようで、張り詰めていた雲からお天道様がその顔を覗かせていた。

「お、雨上がったか……じゃあノノ、俺達は帰るよ。急に来て悪かったな。親父さんによろしく言っといてくれ」

「ん……もう帰る?」

「及川も帰るんだろ?」

「え……あ、はい」

 中野に突然振られて七海は曖昧に頷いた。七海と中野は席を立ち、手荷物を持った。

「マスター、好ければ店、開けてくれませんか?」

 中野が突然日和亭にそんな事を頼んだ。

「そうだな、雨も上がったし、客も来るかも知れないからな」

 日和亭も二人と一緒に立ち、背伸びをすると、出口へと向かった。

「ノノも一緒に来るか?」

「え……私は遠慮しとく。ありがとう」

 ノノは中野からの誘いを受けたが、顔の前に指でバッテンの印を作ると、それを断った。中野は苦笑いしながら肩をすくめ、七海と日和亭の後を追って、店を後にした。

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