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五本場42

 四回目の最終戦、現時点での七海と中野の収支差は五千三百円である。トップを取れればほぼ問題は無いが、二着以下だと、自分は首アリ、中野を首ナシにし、かつ3ポイント以上の差を着けなければならない。

 七海は回り親で起家スタートであるが、起家スタートという事は序盤にリード出来る可能性もあるが親被りで被害大となる可能性もある。

 それこそ一○○○オールでも二○○○オールでも好いから先行し、他家より有利に立ちたい。そしてそう、それが出来れば苦労はしないのだ。

(何としてでも先手を取りたい……)

 最終戦東一局、ドラ⑧。親は七海。

 七海の懇願を乗せた配牌は以下の形。


三五五六八②④159東南白 一


 どうにも締まらない柔弱な配牌である。ツモが好ければ辛うじて平和になるか、という、一般的に見れば悪い配牌である。

(せめて東か白が重なっていてくれれば戦い易くなるのに……)

 この手姿ではドラも期待薄である。七海は仕方無く、オーソドックスに客風の南を切った。

「うむ、リーチ」

 七巡目、日和亭が①を切ってリーチを掛けて来た。どうやら運気に差があるらしい。七海の手はまだ三向聴であり、追い付くなどと言っている場合ではない。現物すら不足している。

 一発目筆頭の七海は一先ず場に一枚切れている白を切った。ロンも鳴きも発声はない。

 ノノは手出しの現物、中野は合わせ打ちで白を切った。東風戦での一発打ち込みは致命的である。差し当たって堅く打つは当然至極である。

「ん、ツモ」

 十巡目、日和亭は手を倒した。


七八九③④⑤⑥⑦⑧⑨888 ⑨


「リーヅモオモ……ウラ、二○○○・四○○○だな」

「三面張はツモられるな」

 中野はそんな事を言いながら千点棒を二本差し出した。

(いきなり親被り……これはキツい)

 ①切りリーチという事は、確定一通を見切って三面張に受けたという事である。和了りにくい嵌張リーチよりはツモが期待出来る大ノベタンに受けた方が他家の首を切る確率が高い。しかして裏も乗るとは、やはりこちらの運気は低迷しているようだ。

 七海は五千点棒を差し出し、釣りを受け取った。

 東二局、ドラ⑥。親はノノ。

 二局目も七海の手牌は芳しくなく、急所も引けず鳴けず、九巡目を迎えてもまだ字牌の残る三向聴であった。

 十巡目、ノノが切った⑤を、中野がしばらく見つめていたかと思うと、不意に発声した。

「失礼……チー」

 中野はドラ表である⑤を④⑥で鳴き、自風である南を切った。その時点での中野の捨て牌は以下の通り。


八二①西②五

中一二南


 捨て牌をだけを見ると変則的な切り方である為七対子か索子の染め手のようであるが、筒子のドラ面子を鳴いている為いずれでも無い。

「うーん、好く分からんな……」

 日和亭は中野の方向性を決めかねているのか、やや悩んでから手出しで白を切った。

「ロン、二○○○」


123678東東白白(⑤④⑥)


「役牌のダブルバックか。喰いタンとも思ったがなぁ」

 日和亭は点棒を差し出しながらそんな事を言った。七海はその様子を見ながら中野のその手を考察した。

(混一色の二向聴からドラ表を鳴いて後付け……普通なら東と白を刻子にしての満貫狙いが手筋だけど、遅い巡目である事も勘案して、二副露出来たとしても危険なドラ含みの嵌張を落とすよりは首の繋がる二○○○点の和了り……)

「さすがに染めなかったか」

「もう巡目も深いんで、和了れない満貫より首の繋がる二○○○点ですよ」

(さすがに隙が無い……)

 この辺りにはさすがにビンタ麻雀の熟練者としての的確な判断が見受けられる。こちらも大分小慣れて来ているつもりではあるが、いかんせん手が入らない。このまま不ヅキだけで負けてしまうのだろうか。中野の和了りがツモや自分からのロン和了りでなかった事がせめてもの救いである。

 成す術も無く二局が消化されてしまった。このままではマズい。不ヅキを何とかする事が麻雀であるが、ただただ吹き晒されるだけもまた麻雀である。

 七海は目の前にある壁牌を、ただ事務的に自動卓に流した。

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