五本場39
九巡目、ノノが手出しで二枚目の發を切って来た為、七海はそれを喰い、八を切った。
一二二九九5567中(發發發)
現在七海の手牌はこの形である。次巡七海は三をツモり、二を切った。
(中は二枚目……ドラポンした北家が王手飛車の可能性もありますが……これを切らなきゃ先へ進めない)
次巡、七海は九を引いて聴牌した。
一二三九九5567中(發發發) 九
七海はここから中を切って聴牌した。誰にも発声は無い。聴牌するにはしたが、ロンでもツモでも四十符一翻、これでは逆転はおろかクビすら繋がらない。
十二巡目、89を切った後、未だにツモ切りしている日和亭から九が飛び出して来た。
「すいません、カンです」
「カン?新ドラ狙いか?」
日和亭がそんな事を言っているが、七海は構わず九を晒し、嶺上をツモった。当然と言えば当然だが嶺上開花はならず、新ドラを中野がめくったが乗らなかった。
そして流局が近付いて来た十六巡目、七海は不意に手を倒した。
「……ツモ」
一二三5567(九九九九)(發發發) 8
「ツモって五十符一翻、四○○・八○○です」
「ドラ無しかい?という事は……」
七海の和了りで、点棒状況は以下のようになった。
日和亭二四八○○点
七海 二二九○○点
ノノ 二七五○○点
中野 二四八○○点
「中野くんと儂が同点だから上家取りで儂が二着か」
中野は特に何も言わず、七海の和了った手牌をしばらく眺めた後、七海の顔を一瞬ちらりと見た。
「……親かぶりで三着か。やられたな」
「まあ儂とのビンタは分けだからそうでもないだろ?」
同点の場合、順位は上家取りだがビンタのやり取りは無くなる。
三回戦の収支は以下の通り。
日和亭 ○円
七海 ▲五七○○円
ノノ +七七○○円
中野 ▲二○○○円
七海の狙いは、クビ無しの道連れを増やし、尚且つ中野を三着にする事にあった。
四十符一翻ツモの四○○・七○○では日和亭が二四八○○点、中野が二四九○○点になる為、中野が二着となってしまう。
そうなると、二回戦までの収支差が一六○○円であり、三回戦を中野が二着で終了すると差が七三○○円に広がってしまう。
こうなると、最終戦で二つ以上着順を離し、且つ自分はクビあり、中野をクビ無しにしなければ逆転は出来ない。ルールに慣れている中野に対してそれはかなり苦しい条件である。
しかしここで中野を三着にしておけば差は五三○○円となり、自分がクビありで中野をクビ無しに出来れば逆転は現実的である。
中野がクビありでもこちらがトップを取れば、それでも逆転可能である。
この差を維持する為、七海は転んでもタダでは起きない手を作り上げたという訳である。




