五本場38
一二八九①⑦557西發發中
高打点が狙える役もドラも無く、急所だらけの五向聴である。これは逆転はおろか聴牌も無理かも知れない。
(これは……一体どうすれば……)
これで逆転を目指すとなると、せいぜい役牌をもう一つ重ねてのチャンタか混一色、重なりまくるツモに賭けての七対子くらいのものである。
親の中野は第一打に役牌の發を切って来た。手が早いのだろうか。
(これは鳴けない……)
鳴くと發のみになってしまう。そうなるとどうやっても逆転の目は無くなってしまう。しかし、恐らく早いと予想される中野の手に果たして追い付けるのだろうか?七海は第一ツモで二をツモり、①を切った。
一周して中野は、何とドラの南を切り出して来た。
(もうドラ?やっぱり親は早い手……)
役牌に続いてドラ切りと来ればタンピン系の好手牌に違いない。
「ポン」
(えっ!?)
そのドラに発声したのは北家のノノであった。オタ風のドラポンと来れば、混一色か対々和、あるいは役牌辺りであろう。
それよりもドラが使えなくなった事が問題だ。一枚でも好いからドラを引ければ打点を上げる事が出来るのに、ポンされてはそれも叶わない。
(完全に後手に回ってる……)
はっきり言ってここから他家の早さを上回っての和了りは不可能に等しい。余程の好ツモに恵まれなければ早晩ノノか中野に和了られて終局だろう。
七海は6をツモった。一応手は進むのだが最早徒花だ。七海は西を切った。
あっさりと終わってしまうかと思われていたオーラスだったが、序盤こそバタバタしたもののその後はさしたる動きも無く、七巡目を迎えた。
「ん……」
日和亭がツモり、しばらく手を止めた。聴牌したのだろうか。
(リーチ……?)
不意に日和亭は点箱を開き、中身を確認した。
「二五二○○点か……いや、すまん」
日和亭はそう言いながら点箱を閉じると、8を切った。
(リーチしようとして止めた?)
日和亭は現在トップのノノと二七○○点差である。五○○・一○○○ツモではまくれない為、手を伸ばしに行ったのだろうか。
(あ そっか……リーチしたらクビが切れちゃうから、ダマでも逆転出来る手に伸ばそうとしてる、という事ですね)
ドラが無い為何かしらの役を付けなければならない。リーチして裏ドラ期待もアリといえばアリだが、悪い待ちでツモれなかった場合にクビが切れてしまう為リーチを躊躇したのだろう。
(私もクビを繋げたいのに……ん?)
七海は日和亭がリーチを躊躇した事を受け、ある事を閃いた。
(リーチを躊躇して8切り、という事は多分89の偏張落とし……そしてどこかの牌にくっ付けての再聴牌を狙っているはず。となれば……まだ時間はあるかも知れません)
七海は九をツモり、⑦を切った。




