五本場33
回り親で二回戦開始である。
二回戦東一局、ドラ⑥。親は中野。
一回戦目ラスの七海の配牌は以下の形。
二四四五③⑤⑦244南白白
形としては悪くない。役牌の対子があるし、ドラそのものは無いがドラ受けはある。中野が一切り、日和亭が西切り、七海は第一ツモで3を引き、南を切った。
四巡目、七海は一向聴となった。
四四五③④⑤⑦2344白白 3
(普通なら三四五三色か索子の一盃口、白のポンテン狙いで⑦切り……でも入り目次第ではリーチを掛けなければ和了れない。ここは……)
七海は一向聴に取らず、白を一枚切った。
次巡、七海は5をツモった。
(⑦を切っていればテンパイでしたが、片和了り三色はいかにも分が悪い)
七海は続けて白を切った。
「白の対子落としか……タンピンに移ったかな?」
白の対子落としを見て日和亭が怪訝な表情を浮かべている。他家の警戒レベルを一段上げてしまったが特に問題ではない。七海は次巡、⑧をツモり、五を切った。
四四③④⑤⑦⑧233445
(ピンフテンパイ、リーチを掛けて高めなら満貫は分かりますが)
「うーん」
七海の聴牌気配を察しているのか、中野は悩んだ末に場に二枚目の中を切った。確かに役牌の対子落としなら字牌の待ちは考えにくい。
「間に合うか?」
日和亭がそう言いながら⑨を出して来た。
「ロン、一◯◯◯点です」
「通らずか、せっかくドラドラだったのにな。まあ安めだったのがせめてもの救いだな」
日和亭は点棒を差し出した。
「その手をリーチしなかったのか」
七海らしからぬ打ち筋に、中野が声を掛けて来た。
「ええまあ……」
「ふぅん、さすがは及川だな」
中野はそんな事を言いながら、手牌と壁牌を流した。
(あそこで白対子を粘るより、やはり動き易いタンヤオに移って正解。他家も警戒して手を遅くしていた様だし……)
得たり、とばかりに、七海は勢い込んで牌を流した。
東二局、ドラ1。親は日和亭。
七海は配牌を理牌しながら、一連の流れを反芻していた。
(大事なのは早いテンパイではなくて和了る為のテンパイ。それも小回りの利くシンプルな手順が理想的……リーチを掛けるのは振り込んでもクビが残せる点棒がある時、あるいは三面張の満貫確定といったシーンだけ)
七巡目、七海聴牌。
三四五五五⑧⑨⑨45567 3
(テンパイ、でも役無し三面張だからといってリーチはしない。ピンフへの手変わりもあります)
七海は⑧を切った。
「ツモ、三◯◯・五◯◯です」
三四五五五⑨⑨345567 二
「っと、早いな……五◯◯とはいえ親かぶりか」
(東二局を終えて全員のクビを切った……このアドバンテージは大きい)
点は低いがこれで有利に立てる。七海はようやく落ち着く事が出来、深呼吸した。
東三局、ドラ八。親は七海。
三八⑤⑧122489南南發 ①
(手は重い……ですが、だからこそやれる事もあります)
普通ならチャンタか一通狙いになるだろうが、七海はのっけから三を切った。
三巡目、日和亭から出た客風牌の南を鳴いた。
「混一色か、対々和か?」
日和亭は警報をしている様であるが、七海の手はバラバラで、圧を掛ける為に南を鳴いたのであった。
八①⑧122489發中(南南南)
七海はここから⑧を切った。
七海が鳴いてから字牌と索子は出なくなった。この重い場を作り出すのが七海の狙いであった。
結局七海も他の誰も和了る事なく、流局した。
「ノーテン」
「ノーテン……」
「ノーテン」
「ノーテンだな」
全員字牌を抱えてオリてしまったらしく、七海は無傷で親番を終える事が出来た。これでトップ目のオーラスを迎える事が出来た。




