五本場32
十二巡目、七海は中をツモった。
一二三①①89東發中(七八九) 中
(役が付いた、中でなくともチャンタが付く)
七海は東か發のどちらを切ろうか悩み、ドラ表にある東を切った。
「ダブ東が今出るんかいな?」
日和亭がそんな事を口にしてくる。五よりも後に字牌が出てくるというは混一色ではなくチャンタの可能性を警戒されているだろう。
「……」
中野は七海の捨て牌を見ながらツモった。そして手出しで①を切った。
「ポン!」
七海はようやく聴牌し、喜び勇んで發を切った。偏7待ちの聴牌である。
「ロン」
「え?」
七海が捨てた發で手を倒したのはノノであった。
四四③③⑥⑥11東東南南發
「ドラドラで六四◯◯……」
「て事はノノのトップか」
中野は手牌を伏せた。
「お嬢さんの一人沈みだな」
東風一回戦が終わって、ビンタを含めたスコアは以下の通り。
ノノ 三二五◯◯ →+七千三百円
中野 二六三◯◯ →+一千六百円
日和亭二五一◯◯ →▲一千五百円
七海 一六一◯◯ →▲七千四百円
(一人沈みだとこんなに……クビがあれば三着でもほぼ負けはない。いかに原点が大事か、という事……)
七海は負け分を差し出しながらようやくこのルールの肝を把握した。
(それにしてもチャンタが見え見えなのに①を切って来たのは、鳴かせれば字牌が余るの見て脇に打ち込ませた?)
中野がどんな手牌から①を切ったかは定かではないが、差し勝負を一回落としてしまった事になる。その差は九千円である。
(後三回……いえ、慣れないルールなのだから一回目は捨てるくらいの気持ちでいないと。お陰で分かって来ました)
むしろ授業料と思えば好い。負けたが七海の気持ちは腐っておらず、二回戦へと臨んだ。




