五本場21
先鋒 名古沙夜
次鋒 中野雄一
中堅 平坂夕貴
副将 及川七海
大将 柊彩葉
彩葉プロデュースのユニットは以上のように提案された。彩葉はホワイトボードから全員の方へと視線を戻し、全員の顔を見渡した。
「これが私の考えたオーダーです」
彩葉は再びファイルに視線を落とした。
「まず先鋒ですが、名古さんは連荘が得意なので僅差での勝負に向いています。そこで序盤に於いてトップを取る打ち方を目指して下さい。親番さえ残っていれば名古は無類の強さを発揮できます」
彩葉はファイルをめくった。
「続いて次鋒ですが、中野くんは安定力に長けている為名古さんのトップを守る事を意識して下さい。名古さんがトップを取れなかった場合も、中野くんならばフォローが出来るでしょう」
「野球でいえば遊撃手だな」
中野は冗談のつもりか、一人で笑った。
「平坂さんははっきり言って地力ではまだ劣りますが、瞬間風速は誰よりも強い。前半の貯金を更に上積み出来れば最良ですが、もしそれを溶かしてしまった場合、後半でカバー出来るよう中堅が最適かと思います」
「はーい、足引っ張らないよう頑張りまーす」
夕貴は反論出来ないのか、てへぺろしてみせた。
「及川さん、もし前半で貯金が出来なかった場合は副将が最終防衛ラインになります。インタージュニア優勝の及川さんには特に忠告する事も無いかと思いますが……常に不測の事態は有り得ます。油断大敵です」
彩葉の口調や表情は真剣そのもので、部員全員がその気魄に圧されるように頷いた。彩葉は自分の見解を述べ、手に持っていたファイルを下げた。
「以上が私の考えたオーダーですが……皆さんはどうでしょう?意見があればどんどんおっしゃって下さい……」
彩葉を除く全員は互いに目配せしたが、伊達に部長を務めている訳ではない彩葉の見立ては的確なのか反論する意見は出なかった。
「ではこれでオーダーを提出したいと思います。これを提出すれば後は本番へ向けて進むのみ。皆さん、一緒にインターハイへ行きましょう!」
部長の鼓舞を受け、部員全員が一致団結するように声を上げた。




