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PrivateSUN  作者: 未紀
3/4

幸せの割り勘

夜のこの時間って、空気が休憩してるみたいだよね




「ルイってさ、たまに何いってるのか理解できない時があるのよ。興味深いけど」



酔いつぶれたユキを横目に、ミサキがグラスを回した。



今日は水曜日。


一週間の中日であるこの日は、PriveteSUNの客も、上がりがはやい。



「そもそも、そんな事かんがえた事ないよ。夜なんて、酒飲むもんだと思ってるから」



空になったグラスに、手酌でウォッカを注ぎこむ。


ロックグラスには、大きな氷が二つ。


急速に中身を冷やしていく。



「わかりやすく言うと。そうだなぁ。高揚した色彩が舞い上がって、ゆっくりと戻ってくるみたいな?」



「わかりやすいような、まったくわからないような。でも。あたしも、この時間は嫌いじゃないよ。好きでもないけどね。疲れ切って泥のように眠る感じがさ」



ユキを顎で指して、ミサキが「あれね、あれ」と笑った。



ミサキにとっては、この時間こそが勝負。


そんな日のほうが多い。



昼間はたくさんの音や情報が氾濫して、筆が進まないそうだ。



自称155㎝の若手推理作家。



PriveteSUNでは、キョウと互角の酒豪で。


メインはもっぱら「下町のナポレオン」と、ウォッカ。



常連の客に言わせれば、彼女こそが「下町のナポレオン」と口をそろえる。


「そういえば、締切、間に合ってよかったね。本多さん、安心した顔で帰っていったよ」



「間に合わないなら、間に合わないでいいんだよ。間にあっちゃったけど」




ミサキがグラスの横に置かれたライムを軽く絞る。



「別に売れっ子になりたいわけじゃないから、好きな事書いて、好きな酒が飲めばいい。そしたら、割り勘負けしても、まぁ許せるかな」



「何の割り勘まけ?」



「ん?幸せの」



ミサキの笑顔が、小さく浮かんだ。




自分に不安なんて、もたない。



今、ここがいたい場所。


今、これがしたい事。




「負けたこと、ないけどね」



得意げに笑って、ウォッカに手をかける。



「かっこいいね」



「かっこいいでしょ。つきあう?」




「付き合う」



思わず笑ったルイのグラスに手持ちのウォッカを軽く注ぐと、ミサキがグラスを持ち上げた。





きっと。



幸せの総量はきまっていて。


それは命と同じように。



それぞれ平等なんかじゃないかもしれない。



だけど、欲張らずに。




今を生きてみるのもいい。




「あぁ?もうエビがないねん!」



忘れかけていたユキの寝言に、ルイとミサキが噴き出した。



PriveteSUNの本当の夜は、これから。



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