表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PrivateSUN  作者: 未紀
1/4

PrivateSUN

夏の終わりの風が吹いた。



潔く突き抜けた青空に刺す淡い茜色。





ルイはすっと胸に空気を吸い込んだ。


女性にしてはやや高めの身長で、姿勢よく歩く彼女を目に留める人は多い。


柔らかい緩やかなくせ毛を背中で揺らして、その視線を気にすることもなく、彼女は空を仰いでいる。


気分は上々のようだ。



「あれ?今日はルイちゃんが店番?」



コンビニ前でタバコを吸っていたスーツ姿の男に声をかけられて、ルイは笑顔で手を振った。



「久保田さんだ!そうだよ。今日はミサキさんが締切だから、キレッキレだしね」



カラリと笑う彼女の笑顔は、バランスよく崩れてユニセックスな美しさのベクトルを愛らしさへと傾けた。揺れるように傾けた体に、髪が弾む。


この太陽のような笑顔をまた見たいと思えるのは、彼女を知る者の特権だ。



「じゃぁ、帰りに寄って行こうかな」



「あはは。そんなこと言ってると、ミサキさんに蹴飛ばされるよ?」



容易に想像できるそのシーンを思い浮かべると、久保田は苦笑してタバコを灰皿に捻じ込んだ。



「でも。待ってるね」



ふわり。微かに髪に残る甘い匂いと、子供のような微笑みを残して、ルイは指先で手招きをした。



「無自覚って凶器だな」



呟いた久保田は、照れた口元を隠すように手で覆った。



夕焼けが、鮮やかに色濃く空を侵食し始める。



ルイは光を増した西の空に目を細めた。




この時間が、好きだ。




頷いて、もう一度深呼吸する。




この街が、好きだ。




急ぎ足な人の波。遠くで響くクラクション。


歩道の信号が切り替わる音。


ビルの巨大広告。



賑やかでいて虚しいこの街が、好き。



空笑いみたいな、灰色の街。



時計ばかり気にしているあのサラリーマンも。


恋人を待ってる可愛い女の人も。


誰といても満たされない彼らも。



声にならない空笑い。



それがなんだか、とても侘しくて。切なくて。愛おしくて。



優しい気持ちになる。




立ち並ぶビルの一角に立って、ルイは大きく息を吐き出した。


これまたくたびれたビルに潜り込むと、エレベーターで8階まで上がる。



そこは、東京のとあるバー。




‘PrivateSUN‘



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ