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浦島太郎の不運伝説

 不幸な主人公と言えばだれを思い出すだろうか。某ハーレム不幸な幻想殺しや、行く先々で殺人に遭遇する頭脳は大人なちびっこ探偵などが有名だろうか。さぞ色々な意見があるであろう。


 しかし日本童話に焦点を絞れば、確実にあの人が最も不幸だと私は思うのだ。


 日本三大太郎と個人的に呼び、日本童話で最も私が敬愛する浦島太郎氏である。


 彼を敬愛する所以はその生真面目な性格、そして亀にさえ抱く聖人のごとき慈愛である。


 さあ、ここからは内容を詳細にみていこう。浦島太郎ネタバレ注意である。


 とはいうものの私自身そこまで浦島太郎氏の雄姿を憶えていない。所詮このエッセイはテキトーである。


 浦島太郎が普段どういう暮らしをしているかからこの童話は始まる。私の記憶では「浦島太郎は病気の母のために漁をして貧乏に暮らしている」といった内容ではなかったか。


 なんと律儀な男なのだろう。私は目頭が熱くなる。母のためにこの青年は毎日をなげうっているのだ。


 しかもそのあとのことである。彼は浜辺で子供にいじめられている亀を救うのだ! なんという深い慈愛! 私はそんな彼を愛せずにはいられない。ああ浦島氏よ幸あれ!


 しかし、助けた亀、こやつが全ての元凶であった。


 そして亀は持ちかける「是非お礼がしたい。竜宮城までご案内いたします」と。


 純粋な浦島は恩を仇で返されると知らずについていく。


 こうしてたどり着いた竜宮城では乙姫らにさまざまな接待を受ける。


 しかし、浦島太郎はこう申し出る。「病気の母が待っているので帰りたい」と。ああなんたる聖人ぶりであろうか!


 乙姫たちは浦島を止めるが、しかし浦島氏の意思は固い。愛する母のため、彼は桃源郷から自ら去るのである!


 しぶしぶ納得した乙姫たちはかの有名な玉手箱を渡すのだ。「決して開けてはいけませんよ」と。


 こうして彼は陸上に帰っていく。


 陸に上がってみればそこは自分の見知った浜辺ではない。途方に暮れた浦島は玉手箱を開けるほか手はない。


 こうして誰もが知るあの結末が待っているのだ。


 振り返ってみてもなんと不幸なことであろう。毎日せっせせっせと母のために勤勉に働き、いじめられている亀を助け、誘惑にも負けず母のために帰宅したのに、待っていたのは非情な事実。


 いやあ竜宮城連中の非情さったらない。わかっていてこんなことをするなんて。とくに自分の恩人の人生をぶち壊す亀の所業はまさに夜叉。


 浦島は確かに一瞬は誘惑に乗ってしまった。しかし、彼はすぐに愛すべき家族のために行動する。玉手箱の件だって、確かに絶対開けるなと言われていたけれど、そこはもはや知らない土地。それ以外に打つ手はなかったのだ、しょうがないと言えよう。たまに「これが浦島太郎の悪いところだ! これが教訓だ!」と言う人がいるがどのことを指すのであろうか? ほんの少しだけ誘惑に負けたことだろうか? 約束を破り、玉手箱を開けたことだろうか?


 否。浦島太郎からわかる教訓は「優しい奴ほど損をする」というなんとも夢のないこの教訓だけである。


 逆に考えれば竜宮城の奴らは浦島氏が竜宮城で時を食い潰すことが目的であったのかもしれない。例えば浦島が時を食い潰していなかったら、浦島が大変なことをしでかしていたとか・・・。ただの妄想であるが。


 いや、それでも浦島氏の不幸加減は異常である。彼が未来だと気づいたときはさぞ虚しかったであろう。私は彼に同情せずにはいられない。あの愛すべき浦島太郎は現代日本に欠かせないものを与えてくれた。


 浦島氏へのせめてもの慰めとして、彼に感謝するとともに彼の意思を未来へ継いでいきたい。

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