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セイヴァー  作者: tama
3/11

入学一日目

「入学試験合格おめでとう。今日からこのクラスの担任となる久保敦也だ。よろしく。」


先日の入学試験が終わり、合格者が今日入学式を終えてそれぞれのクラスへ行きそこで自己紹介等を行う。

新入生の学年のクラスは全部で5クラスと少な目だ。入学試験者数は大体600人ぐらいはいた。しかし入学できたのは300人ほどだった。一クラス60人前後ということだろう。


「ではまずお互いを知るために自己紹介をしていってもらおう。じゃあ川村くん。」


教卓から見て一番右の列の一番前の席から自己紹介をしはじめた。俺はその列の一番後ろだ。ここは窓側にあって、落ち着く場所でもある。

しばらく自己紹介が進み、俺の番になった。俺は椅子から立った。すると周りはどよめいた。所々で陰口が交わされている恐らく俺の試験内容を覚えているのだろう。

俺はそんなクラスの光景を見ながらしゃべった。


「秋川俊介。よろしく。」


簡潔に自己紹介し、座った。辺りはまだどよめいている。


「えー…じゃあ次、広瀬さん。」


久保先生は隣の女子の列を当て始める。俺の隣の席から前へ進むのだろう。


「はい。私は広瀬菫(ひろせすみれ)です。よろしくお願いします。」


そう言って彼女はニコッと笑った。すると周りの…主に男子がどよめきだす。


「な、なぁ…あの子けっこ可愛くね?」


「あ、ああ…それにある(・・)よな…。」


彼女のルックスはかなりよく、世間で言う美少女だろう。スタイルもかなりいい。髪型は肩につくかつかないかのショートヘアーで黒髪だ。クラスの男子たちは鼻の下を伸ばしている。そんな男子たちを見て女子は


「やーね男子。ほんとそーゆーのしか見てないよね。」


「ほんと下品。」


と、毒を吐いている。俺は窓の外を机に肘をつけ、手に顎をかけて見ていた。

周りの反応を見ると俺は確実にクラスから浮いた存在になるだろう。俺に喋りかける者も現れないだろう。環境に馴染めないと後々面倒なことになりそうな気がしないことでもないが…まぁこの際は仕方がない。


「ねぇ、秋川くん?」


そんなことを考えていると誰かが俺に声をかけてきた。声のした方を見てみる。

それは隣の広瀬菫だった。


「?」


俺は言葉を発さず、ハテナマークをだした。


「あ…えと…よろしくね。」


少し気まずそうに彼女は言った。


「……よろしく。」


俺も少し間を開けてからそう言った。まさかこのクラスの人気者になるかもしれない広瀬菫から声をかけられるとは思わなかった。

なぜ俺が彼女が人気者になると思ったか。それは彼女の適性量が凄まじいものだからだ。

俺には大地さんの修行を受けているうちに人の適性や、その量。そして技術や運動能力が分かるようになった。大地さん曰く、この特技は大地さんの修行によるものではないらしい。

しかし、彼女は適性範囲がそこまで広くない。どちらかと言うと並みの人より少し狭いぐらいだ。適性範囲と言うのは、緑銀を物体化できる範囲のことだ。基本的にはハンドガンの引き金や、緑銀の刃を造るために押す剣の柄にある銃の引き金のようなスイッチを押すと空気中の緑銀が物体化される。だが、この武力学校の入学祝いに"カード"が配られる。このカードは厚さが3ミリほどあり、緑銀で出来ている。ここに意識を集中させると空気中の緑銀と反応し、物質化させることができる。

これによって適性範囲が決まる。これが遠ければ遠いほど範囲が広いと言える。ちなみに一時間目は適性範囲のテストだ。


俺たちはグラウンドに出て、整列する。男女二列ずつの四列横隊だ。


「よし!今から適性範囲のテストをする。適性範囲とは――」


ここからは俺がさっき説明した通りだ。そして久保先生は生徒たちにカードを出すように指示する。


「入学祝いに学校から配られたカード。これは『Gカード』と言う。GとはGreen silver。直訳で緑の銀、つまり緑銀のことだ。」


そう説明したあと久保先生はGカードの扱い方を教えてくださった。


「これは空気中の緑銀を物質化、又は物体化させるのを補助させる役割を持っている。感覚としてはこのカードに神経を集中させるのだ。今から私がやって見せるので参考にするように。」


そう言って久保先生はカードを手にのせそれを軽く握りしめた。


「すぅぅ……はっ…!」


そう声を出してから意識を集中させた。するとカードが緑色に光る。カードが空気中の緑銀に反応している証拠だ。


「これが空気中の緑銀に反応している証拠だ。この状態になったら本能的にわかると思う。例えばそこに緑銀を物質化又は物体化させたいと思うだけでできるだろう。」


そう言って久保先生は空気中に緑銀を物質化させた。


「さ、各自ペアになってやってみなさい。」


ペア……か。俺につく物好きなんてこのクラス……いや、この学年にはいないだろう。そう考えながら集団の外に出ると……


「あっ……あのっ!秋川くん!」


……広瀬菫は物好きなようだ。俺は彼女の方を向く。


「ペア…なろ?」


はにかみながらそう言ってきた。俺としてはありがたい…と思うかもしれないが実はそうでもない。


「広瀬さんが誰かを誘ったぞ!」


「えー!私広瀬さんとなりたかったのにー…」


「相手は!?」


「うわっ!秋川だぞ!」


「嘘だろ…?」


「広瀬さんが羨ましい。」


等と口々に言っている。最後のは男子の声だった。どうやら危ない趣味の持ち主のようだ。

つまり、俺が人気のある広瀬菫とペアになってしまうと周りから憎しみの目で見られることとなる。俺としてはありがた迷惑と言うわけだ。しかし、俺を哀れだと思っての行動かわからないがせっかく誘ってくれたのだ。これに乗らなければ失礼というものもあるだろう。


「分かった。」


俺はそう答えた。


「これって以外とできるもんだね…」


彼女は空気中の緑銀を物体化させながらそう言った。


「ああ、そうだな。」


「………ね、秋川くんってさ…」


彼女は控えめに聞いてきた。


「もしかして……その……秋川大地さんの息子さん……かな……?」


「……ああ。」


俺はそう答えた。


「やっぱり!!……ぁ…えと…ごめんなさぃ…」


「いや、大丈夫だ。」


どうやら彼女はとても内気みたいだ。


「どうして聞いたんだ?」


俺は聞いた。


「えと、私のお母さんの旧姓、もとの名前がね、秋川美千江(みちえ)っていうんだ。」


俺はそう聞いて大地さんと彼女の母親との関係性を考えた。そしてたどり着いた答えは…


「兄妹…か。」


「うん。」


俺は驚いた。大地さんに兄妹がいたなんて…彼は天涯孤独で親も早々に死んだと聞いていた。そんな大地さんに兄妹がいたなんて思ってもみなかった。


「すごい偶然だな。」


広瀬が俺なんかに話しかけてきた理由がわかる。恐らく俺が叔父さんにあたる大地さんの息子だからだろう。しかし内気な彼女にこんなことを言ってしまうとマイナスの方向に考えてしまい、気を悪くさせるのは明らかだったので俺は口には出さなかった。


「…てことは私たちは従兄妹ってことになるのかな?」


「いや、俺は大地さんの義理の息子だ。だから君とは関係が無い。」


少し言い方が悪かったか?俺は言ってからそう思った。案の定広瀬は少し残念そうな顔をしながら「そっか……」と呟いた。


「それではそろそろテストを始める!全員集合!」


久保先生が生徒たちを呼んだ。その呼び掛けに対して俺たちは再び四列横隊に並んだ。


「ではテストの内容を説明する!」


久保先生はそう言ってグラウンドに書かれてある白い線を指差す。その白い線は二本あり、それぞれの間隔が大体3メートルほどある。線の長さは50メートルほどある。


「この線は55メートルだ。そして横の幅は4メートル。この幅の間に緑銀を物体化してもらう。」


先生は説明を続けた。


「適性範囲の調べ方だが、まずあの55メートル先に立ててある赤い旗を見る。そして緑銀を物体化させようとする。そして無理だった場合、意識をどんどん自分に近付けてくる。例えば55メートルの時点で緑銀を物体化出来なかった場合、54メートル…53メートル…52メートルとどんどん距離を近付けてくる。そして50メートルの時点で緑銀が物体化された場合、それがその人の適性範囲と言うわけだ。我々教師は70メートル以上の適性範囲を持っていなければ資格を取ることができないようになっている。適性範囲は生まれつき決まるものなので広げたり等は出来ない。」


そう説明し終わったら出席番号の1番からテストが始まった。

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