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人形遣いと??の話(6)

 体育倉庫の中で待ち伏せしておこうという話が、そもそも体育倉庫にどうやって入るの?という話だけど。

「今日教師からパクってきた」

 社さんが見せた鍵を見て、ここに来ることは予定調和だったの?とか、これ出来るなら教師以外でも容疑者いるんじゃない?と思ったけど少なくとも後者は問題ないらしい。

「今日はたまたま先生が忘れて帰ってただけだ。いつもなら厳重に保管してある」

「なら犯人は先生で確定だね」

 体育倉庫はいつもは暗いけど今日は月明かりでやけに明るい。

 明るい。

 なんだろう、この違和感。

「ねえ、なんか変じゃない?」

「ん?変とはどういうことだ?」

「いやその……痛っ」

 何かが頭に当たった。

「ん?サッカーボール」

 え?

 すると外から声が聞こえてきた。

「先サッカーボール投げ入れるぞ~あとから中に入って籠に戻しときゃ大丈夫だ」

「しかしあんな大事になるとはなあ」

「だからやめとこうって言ったんだよ」

「いいじゃねえか、これでバレねえよ」

 何が。

「これってどういう……」

次々と入ってくるサッカーボール。

そう、窓からである。

「窓があいてる……違う」

 壊されてる!

「なんで気づかなかったの」

 病槻は体育倉庫で転んで怪我をしたと言った。しかし転んで手に大きな切り傷があるというのも不自然だ。

 しかし下にガラスの破片があったら?

 怪我を弄り回すという行いも、案外ガラスの破片を取り出そうとしていたのかもしれない。

「そうか、教師は犯人じゃない!ガラスを外から割って入ってこれば誰にでもこの事件は起こせる。ちっ何故今まで気づかなかったあの腐れ探偵気取り不良野郎!」

 気づくわけがない。情報が足りなすぎる。窓ガラスが割れたということを聞いていないであろう社さんにはいくらなんでも解決のしようがない。

「でも私は解けたはずだ」

 教師が犯人という先入観さえなければ病槻くんの手の傷からわかったはずなのに。

 呆然としているうちに犯人の生徒たちが続々と入ってくる。おそらく梯子を立てかけているのだろう。

「これはまずい展開だな」

「お前ら誰だ!」

 犯人のうちの一人がこちらを見て叫んだ。

「片方は一年の社三人じゃねえか」

 私は知られてない。まあ私のような地味な人間を覚えている人も少ない。というか知られている社さんが有名というべきなのか?

「お前らここであったことを他の所で言ってみろ。ただじゃ済まねえぞ」

 噛ませ犬臭がする。

「日本語に誤りがありますわ?他のところで言う、でもまあよろしいですが、そこは口外すると言うべきかと」

 誰が言ったのか一瞬わからなかったが、なるほど。これが普段の、お嬢様モードの社三人である。

「あなたがたたかが五人程度で私たちを脅せるとお思いですか?」

「ちょ、社さん」

 私はお思いなのだ。人形遣いも流石に五人を相手に喧嘩できるわけじゃない。

 というか一人でも無理。キーホルダーで何ができる。

「ふざけてんじゃ」

 しかし忘れていた。

 詳細は知らないとは言え、社三人は人間ではない。

 彼女の言葉を借りるなら。

化け物。

「私が本気で殴れば骨など簡単に折れますわ。諦めて降参してください」

 そこからはまあ描写する必要もない。あまりにも無敵、殴られてもビクともせず、殴れば一撃、わずか五分で残り一人となった。

「さて、これで終わりですわね」

 完全に見下した顔で相手を見る。

 が、しかし。彼女は忘れている。

 人を見下すべきではないと。

「社さん後ろ!」

社さんからは死角となる後ろに倒れていた男が立ち上がっていた。

 しかも持っていたのは鎌である。雑草を切り取る時に稀に使うと置かれていたもの。

「死ね!」

 間に合わない。いくら社さんの反射神経でもこの時間差では咄嗟に死角からの攻撃は。

 死ぬ。

「避けて!」

 それは実に奇妙な光景だった。社さんは後ろも確認せずにギリギリのところでそれをかわした。

 不可能なほどに。

 しかもその時の彼女の顔は、心底驚いていたのだ。

「なにが」

 まさか。

「死にさらせ!」

 綺麗な回し蹴りで二人の足をなぎ払い、倒した。

「危ないところでしたわ」

 彼女の正体がわかった。


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