第6話 夜明けと共に
大地を赤く染めた太陽の光が、地平線のかなたに沈んでゆく、 草原の夜はゆっくりとやってきた。
天に輝く星たちは、手を伸ばせば、採れそうなほど近く感じた。
実際に手を伸ばしてみるが、僅かに届かない様だ。
「綺麗ですわね」
「サムライの国では、こんな星たちは見れ無いな」
「ええそうね。 そろそろ私達は行きますわ。 ソラも森の調査をお願いしますね。 」
くすりと笑うカナと、夜空を見上げていたミリアは、新婚旅行にでもきた夫婦の様に見える。
ミリアの男装は余りにも完璧で、思わず嫉妬してしまいそうだ。
ため息をつきながらも「こっちは、大丈夫だ。 そっちも注意しろよ 」 そう言うと俺は、単身森の調査に向かった。
目的は森の中心近くにある遺跡の調査だ、上手く行けば、ケンタウロスの減った原因もわかるかもしれない。
夜の森は冬が近いとはいえ、昼間以上に生き物が活発に活動している、猿や狼の群れが多いみたいだ。
遺跡近くまで来ると、猿の数がやたらと多い、それに、ケンタウロスも群れを作っている様に感じる。
ケンタウロスの警戒網をかわして、遺跡の内部に侵入すと、ケンタウロスと猿が話しをしていた……… 。
俺にはもちろん、猿の言葉もケンタウロスの言葉も分からないが、この生命反応は、会話をしているとしか考えられないのだ。
ケンタウロスが話すだけでも驚きなのに、猿まで話すとは……… 何がこの森で起きているのか???
更に遺跡周辺を調査すると、一部が砦の様にさえ見える。
然し何故だ!?!?
かりに、ケンタウロスと人間が争うとしても、こんな森の中を大軍で押し寄せるのは不可能だ。
と言う事は、ケンタウロスの敵は、少数の可能性が高いのか?
ん~、サッパリ分からないな? リクが起きる前に戻るには、そろそろ切り上げるべきだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そっちは、収穫あったか? 」と聞くと、カナが答えた。
「一応はね。 そちらは? 」月明かりに照らされる、カナの何気無い仕草は、何かエロい、流石に淫魔である。
ほんの一瞬だけだが、魅入られそうになったのは、内緒だ。
とりあえず、見てきた事を話すと。
「こちらの情報と一致するわね」
インキバスやサキュバスの最大の能力、夢を操る魔法を使い、情報を集めるのだ。
夢の内容を、相手に忘れさせる事も、覚えさせておく事もできる。
そして、一番恐ろしいのが、夢の中で殺され、魂を奪われると、二度と起きる事の無い眠りに落ちる、すなわち死だ!!
夢の中で戦う力をもたぬ者には、どうする事も出来ないのだ、その力は呪いに近いと言えるのかも知れない。
カナさん達のつかんだ情報では、政府軍のナペスによる、次期国王になるための陰謀がことの発端で、伝説の初代国王にならい、星草を探しているらしい。
「それで星草の研究者だった、薬師の三神さんが襲われたのか」
「ええ、その通りよ。 三神さんのかたきは、ナペスとコブラの実行部隊ね、巣の場所も割れてるは。 それに、リクちゃんは狙われて無いことも、わかったわ」
「明日は、コブラ狩りだな」と言いながら、猫耳をピーンたてて笑った。
ミリアの調子も良さそうだ。
コブラの巣……… 闇ギルドのコブラ・の連中は、ペナスの依頼で明日から、星草を探しに森の遺跡に行くらしい。
ケンタウロスと戦ってた連中はナペスの依頼を受けたギルドか何かだったんだろう。
そこに、コブラが加わるのか、単独かはわからないが、上手く行けば、バックアタックが出来るかもしれない。
翌朝、朝食にしては、じゅうぶんな食事を食べながら、今日の予定をリクにも伝えた。
リクちゃんも真剣に聞いている、戦力にはならないのは、彼女にも分かっているが、最後まで見届けると言う強い決意が伝わってきた。
「さて~と、朝食も食べ終わったし、準備が出来次第、遺跡に出発するぞ」
白い息を吐き出しながら 森へと向かうと、人が通った痕跡を見つけた。
「すでに、ヤツらは森入った様だな」
「それに、思ってたより、人数が多いそうだな」
痕跡を確認すると、草を踏んだ後に、霜がふったみたいだ。
時間にして1時間ほど前に通過したのだろうか? 足あとの人数はおよそ50人数分。
その中に3人デカいヤツが混じってるみたいだ。
「3人ほどデカいヤツらが混じってるな。 恐らく、こいつらがスネーク兄弟だろう、ミリアどう思う? 」こういった、痕跡を分析するのも、俺よりミリアのが上だ。
「私も、その判断に賛成だ。 ほかの足あとは、75センチ程度の歩幅だが、その3人の歩幅は120センチを超えてるな。 」
普通は、身長引く1メートルが標準的な歩幅だが、巨人族でも無いのに、この歩幅だと、もう少し身長は高いかも知れない。
「幸先よく敵の情報も手に入っりましたし、行きますわよ」
ミリア・リク・カナの順番で森を進んでゆく、俺は、少し横にズレ進むことで、弓の特性を生かす陣形をとりながら移動してるのだ。
遠くから、爆発音が聞こえてきた。
神経を研ぎ澄まし、魔力と生命力を探る………
矢張り!! 人間とケンタウロスが戦っている!!
!!む ? 一部の人間が、離脱して此方に向かってくる。
「“ミリア! そちらに2人ほど、何か生き物を抱えて向かってくるぞ!!” 」
「“ああ、こちらでも聞こえてきた” リクちゃん・カナさんは隠れて下さい。 」
リクとカナが隠れると、ミリアは敵に向かって走りだした。
それに合わせて、2人で敵を挟む、ミリアが木の影から、切りかかるのに合わせて、後ろから弓を射る。
突然あらわれた、ミリアに対処しようとした瞬間に、2人を無力化する。
何の相談も無く出来るほど何度も使った連結の一つだ。
「“みんな、もう大丈夫よ”」
「“了解”」
「“流石ね、今からそっちに行くわ” リクちゃん行きましょ」
「ハイ」
ミリアに、両腕を切られた敵が、唸りなが倒れている。
「さて、アナタたちは、何者なの? こんな森で何してたの? 正直に言いなさい」
「ただのギルドの戦士だよ、いきなり切りやがってクソ!! 」 ミリアの剣が、サクリと敵の頬を切った。
「チクショー! イテーよバカ、また切りやがって。」 無言で剣を振り下ろそとする手を、慌てて止めた。
「まあ、待てよミリア ここは俺に任せな。
お前、コブラの戦士だろ、何で森の遺跡で戦ってるんだ? 」
「確かに俺達は、コブラの戦士だけどよう、遺跡で戦う依頼が有ったからで、理由なんてねーよ」
「あの遺跡に、何があるんだ? それに、この子猿、何で運んでんだ? 」
「運べば、金に成るから意外に無いだろ! それに遺跡に何が有るかなんて知らねーよ、多分お宝でも有るんじゃねーのか? 」
「ソラ、無駄ですわ、その男、何も知らないみたいですわ」
「そうか、ところこの子猿どうする? 」
「ただの、子猿さんに見えますけど、一応何かの役にたつかもしれませんよ。 」
「一番足手まといな、私が連れてきます」
とりあえず、リクちゃんに子猿を預かってもらい、男はカナさんに、動け無くなる程度に、生命力を吸い尽くして放置していく事になった。
ケンタウロスと人間の戦闘は、ほぼ互角の戦いをしている。
ケンタウロスは、近づけば槍で、距離が有れば弓で攻撃している、時折、後ろ足に炎をまとい、爆発をおこして、敵を吹き飛ばしている。
対する人間は、鞭と氷の魔法で応戦し、近づけば盾で防ぐと戦略をとっている。
「ほぼ、互角の戦いのようね」
「ああ、少し手をかせば、簡単に蹴りがつきそうだ」
何か、納得出来ない