老人の願い・・
三人の食事中、暗闇から、一人の老人が・・・。
ゆっくりと・・。ゆっくりと、狼と老人は、近づいてくる・・。
老人からは殺意は全く感じられない。それどころか顔はにこやかだ。
何を考えているのだろう。相手が考えている事を想像しても、思いつかない。
「シュラ、カイン、助けに着たのではないのだよ。そうじゃな、強いて言うなれば・・・、頼みに来た。じゃな。」
「頼み?」
キスカの口からそう発せられた。
その声にこたえて、老人は話出した。
「そう。頼みじゃ。こやつらを、一緒に連れて行ってほしいのだ。」
ゆっくりと、そう話す。
「無理だ!こいつらは、俺達の命を狙った。それに、こいつらがなんなのか・・・、俺達は知らない。そんな得体の知れない者達を、一緒に連れて行ってほしいと言われても。こっちが困るだけだ。」
クウは少し怒っている。それもそうだろう。仲間の命が狙われたのだ。あたりまえである。
そして、クウの言葉に続く者がいた。イーシンである。
「そうだ!俺なんか、本当に死ぬかと思った。変な臭いのする物をかいで、体が動かなくなったと思ったら、崖の上だ。しかも、そこまで運んだ奴に落とされた。まぁ、突き飛ばされた時にちょっとしたことをして、生き残れたけどな。」
実際はちょっとした事ではない。普通はできない事である。見栄なのか、本当の事なのか分からないが、そう語る。
「そうか。なら・・・、こやつ等と、わしの事を話そう。」
「おい!そんなこ・・。」
そうクウが言うのもほっといて、老人は話しだした。
「わしの名は、ロウハイ。わしも、こやつらも里に住んでおる。場所はお教えできん。隠れ里じゃからな。じゃが、わしらのやっている事は教えよう。暗殺じゃ。依頼を受けてから行動すると言うものじゃな。で、そこのぶらさっがっておる銀髪の者は、カインと言ってな、あやつの言うとうり、男じゃ。里で女として育てられた。まぁ、任務に役に立つようにな。作戦を立てるのが上手いのぉ。じゃが、時々・・、頭に血が上ってしまい、辺りかまわず暴れる事がしばしば・・・。そして、そこで無垢なのが、シュラ。見てとうり、女子じゃ。薬の調合は里一番じゃ。だが・・・、少し行動性に欠ける。こんなものかの。」
人とおり説明を終えたロウハイは、いかにも[どうじゃ!]と言わんばかりの顔をして、三人を見つめている。
「いや・・・、どうじゃって言われても。なぁ。」
「俺達の命を狙った奴だし。それに、肝心な事を言っていない。なぜ、俺達に一緒に連れて行ってほしいと?」
ロウハイの顔が少し曇る。
「それはじゃな。・・・カインも、シュラも、里から見れば、道具にすぎん。だが・・、わしは、こやつらをかわいく思う。だからかのぉ・・。この子達を、人として生かしたいのだ。頼む。この子達を、連れて行ってはくれぬか・・・。」
カインも、シュラも顔を俯けている。”道具”と言う言葉が効いたのだろう。その二人を見るロウハイの目は、自分の子供を心配している目だった。
そんな、様子を眺めているキスカは、なんだかロウハイを信じてみたくなった。
「クウ、イーシン、良いんじゃないか?」
「ちょ、ちょっと待てよ。いきなり何言い出すんだよ。命狙ったんだよ。それなのに・・・。」
「確かに。でも、こうしてまだ生きてる。なら、次に狙われても、大丈夫だと思う。」
「だと思うかよ!」
「うん。」
「即答・・・。」
なんとも幼稚な言いあいである。
「だから・・、良いだろ?」
「分かった。分かったよ。イーシンは?」
「別に、二人が良いなら。」
話はまとまった。
「ありがとう。こやつらを頼みます。」
そう言うと、瞬く間に、元来た道を引き返して行った。
「まだ・・、彼方には言ってないです・・・。」
ぼそりとキスカが言う。
だが、もういない。
しかたなく、カインとシュラを吊るしている縄を、切るのであった。
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。