もふ、おもふ。
──汝は猫になりたいか。
問われる。それは暗い天の底を割り地を穿つ一条の雷。私は全身を打ち据えられる。
対峙するは一匹の黒猫。その金色の双眸は、見惚れるほどに美しく、それでいて妖しい。
筆先から墨の滴を一つ落としたような丸い瞳孔が、すうと細められ、まるで臥待月となる。
「ええ、なれるものなら、なってみたいに決まっているわ」
そしてその声に陶然と惹かれていた私は、微塵も迷わずに答えたものだ。
だってこれは、望まない結婚だもの。
ああ……、私はなんと愚かで贅沢で無礼な女であることだろうか。
およそ女に生まれた身の上ならば、女御に、帝の妃になれる名誉など、身に余りすぎて弾けてしまいそうなほどの僥倖だというのに。
それが、畏れ多くも、嫌だ、なんて。
そこまでして固辞する理由なんて皆目見当もつかぬ、とさては思うだろう。でも、それでも、私は、私だけは違っていたいのだ。あるいは皆とは違うということ自体が、私における唯一の良さであったやもしれぬ。
思えば貴族の姫に生まれたのが運の尽きであった。しかし何に不満があるのだ、と少なからず人は問うだろう。
煌びやかな錦と彩色の絵襖と多くの従者に取り囲まれ、欲しいものは欲しいといえば与えられ、それはもう衣食住の保証された何不自由のない生活だ、非の打ちどころのないはずだ。
が、人間というのはあまりに欲深で、己に足りぬものあらば不平不満を吐く生き物なのだ。かくいう私も聖人君子ではなかったし、そういう俗の側の人間だった。
この際だから、私も欲を言おう。
私は……、本当は女房に、姫君に仕える女官になりたかった。夜半に褥からこっそり起きだしては、灯台の明かりで随筆をしたためようと取り留めもなく筆をとる。それくらいの生活が。
庶民の娘だって、きっといい。夏は躑躅の葉で草笛を吹いて、冬は南天の紅い実で雪兎に点睛などしてみる。茅葺屋根の下、藁を槌で打つ音をこだまさせる、そんな慎ましやかな暮らしは、素朴で厳しいながらも生きる本来の歓びというものを実感できることだろう。
やはり私は度し難い欲深で、どうしようもない女なのである。生来、そういう性質なのである。
貴族の法という名の蜘蛛の巣に囚われた蝶ではなく、野にあるまま、奔放不羈に羽ばたいている、そんなふうに生きてみたかったのである。
あるいは、のびのびと描かれた墨絵の雲。悠々と薄墨の天に寝そべり、気まぐれに下界へ雨を降らす……、そんな泰然自若で誰にも咎められない無責任な在り方こそが、私にはふさわしいのだ……。
ああ、人はなぜ……、獣と違って、この世に生まれ出た瞬間から責任を問われるのだろう。
だから私は、寸分の違いもなく答えるのだ。
「猫になりたい」
……と。
──汝の願い、叶えてやろうぞ。
夜の帳は下ろされる。射干玉が、光を濡れそぼつ。私も最初からその一欠片であったかのように呑み込まれてしまう。心地いいほどにぬるい、闇。
♢
さあ、つい最近の宮中での出来事というのが、これまた嵩江にとってのお誂え向きと疑いたくなるくらい、とびきりの珍事なのである。
今上帝は生類をたいへん好まれることで有名であるが、その帝が離宮に行幸なさった際、離宮近くの池にふと目を奪われた。夕暮れ時の池は落日を映して橙色に染まり、そこに棲まうは一羽の麗しい鷺。紺と灰がかった青の羽毛に紅い瞳をもつ、世にも美しい鳥であった。帝はさっそく鷺を捕らえさせた。すると、鷺はなんと帝の宣旨に従い頭を垂れては神妙にしたらしく。
その鷺は鳥ながら帝と対面するためにわざわざ正五位下の階位を賜る。それで「五位鷺」などと、たいそうな名で呼ばれることになった。
水鳥らしく小魚や蛙などを好み、夜の畔に佇んでは捕食をするそうで、どこか眼光鋭いという。
「あの鷺、目つきがどことなくおぬしに似ているぞ」
と唯一の人間の友人からは揶揄い半分に言われたものである。その鷺と己の顔とを鏡で間近に見比べたわけでもないが……、嵩江はそれなりに美男であったものの、やや顔がきつい。しかし不思議、〝精悍な顔つきをしている〟といえばたちどころに魅力を放つ。
『──ねえねえ、嵩江』
不可視の睡魔と太刀弓をとっては大立ち回りを演じて、うつらうつら舟を漕ぎかけていた嵩江は、その笛の音にも似た声に呼びかけられて、はっと意識を現に戻した。
「あ……ああ。やれやれ、宿直明けは身体がしんどいな」
掌でぽんぽん、と凝りかけた首筋をなだめるように軽く叩き、ほろ苦く笑んでみる。人生朝露の如し、五十年も生きられればよい世の中で、嵩江も今年で齢二十五だ。この歳になれば若きは終わりを告げ、ちょうど山の中腹。あとはゆるゆると老いの坂を下るだけ。つまり、もう若くもない。
「これからは老骨扱いか、泣かせてくれる」
嵩江がそんな愚痴にもならない、しかしどうにもならないつぶやきをこぼせば、なぜか麩は感心したように言った。
『徹夜なんてよくやるよね。僕は夜目がきかないから夜はなにもできないもの。でも人間は夜目がきかずとも火が使える。その五位鷺とやらはきちんと夜目がきく。ああ、〝違う〟って羨ましい』
「それを〝ないものねだり〟というのさ、世の中というけったいなものはな。これは屁理屈のようだが、なにかを羨ましいと思うのは一見すれば欲深な主張でも、実は己の限界を知る謙虚な心があるからこそ生まれる、極めて誠実な感情なのだ」
『うん、僕、謙虚だねっ!』
「鷺、怖いのだろう」
嵩江がそれを指摘すれば、麩は若干ばつの悪かったのか、ぎくりと身じろぎする。脚で、かかかっ、と頭をかいてから丸くうずくまった。
『う、うん……まあね。だってあいつら、よく水場にいるけど、でかくて小鳥まで食いかねない勢いじゃない。蛇みたいに鎌首をもたげるんだぜ』
うへえ……と麩は黒々とした目を細めてあからさまに顔をしかめたので、嵩江はやや面白がった。
「なるほどな、ちんまりしたおまえにとっては鷺は脅威なのだな」
冗談交じりに茶化してみれば、
『ち、ちんまり言うなっ』
と、身体を不満げに膨らませた麩である。
「ふむ……言われてみれば、鷺にも色々とあるらしい。体色も大きさも何やら違う気がするものな」
そんなふうに麩と由なし事を喋っている。麩の身体は小さく、嵩江の掌に収まってしまうほどだ。確かに大きな鷺からしてみれば、〝手頃なおやつ〟のようなものだろう。きっと、ぱくんと食まれて、ごくんと丸呑みされてしまう。
「……はあ」
嵩江は軽くため息をついた。それにしても、春だというのに、気分はこれから冬眠を迎える熊か。まるで糊のようにどろりと重く眠気を誘う、気だるいほどの陽気だ。あくびを噛み殺そうとして、そして見事失敗する。くああ、と半端な唇の隙間から吐息がもれでた。
「ああ、仕事が終わったからよいものの、これが何某かの儀の最中であれば、素っ首が建礼門の外まですっ飛ぶな」
『人間って殺生な生き物だよねえ。まあ僕も、お日様があたたかいから、一眠りしたい気持ち……』
優しく車輪の転がる車内がさながら揺籃で、余計に睡気がさざ波めいて押し寄せてくる。
これは内裏から左京三条にある邸宅へと帰る道中だった。その網代車(牛車)の物見窓から、ふと一陣の微風がやわらかく舞い込んでくる。それに乗ってほのかに漂うのは梅の香か。
甘く薫る風を頬に感じ、屋形の天井を寝ぼけ眼でぼんやりと眺めながら、嵩江はとりわけ風流でもない至極当たり前のことを思う。
春はいい。冬と違って、花がある。
弥生(新暦四月頃)の初旬。山桜のほんのり薄桃に染まった花弁も、はらりはらりと散り始めている。桜の下、人々が酒の宴でも開いては歌に興じる季節だ。
『ねえ、嵩江の仕事場って〝このえふ〟とかって言うんでしょ? 僕は人間のことよくわかんないけどさ、いっつもしかめ面のやつらが得物を持ってうろうろしてる。僕、得物嫌い』
「そうだな」
麩の率直な感想に、嵩江は苦笑を禁じえない。狩りを楽しむ人間は追われる鳥獣の心など気にも留めないものだ。
嵩江は内裏の内郭を警護する近衛府に勤めている。れっきとした殿上人で、役職は長官である左大将の次官・左中将。帝に拝謁が許される従四位下の官位をもっている。
「ま、仕事だからな。得物がなければ、人という生き物は弱い」
『ふうん、難儀なんだね、人間って』
近衛中将ともあれば、典麗風雅な歌舞音曲と馬芸とで、儀式や節会を彩っては持て囃される、いかにも貴族の良家子息が就きそうな花形職である。実際に、近衛府に勤めるには、良家出身であることが条件の一つであった。
まあ〝武官のくせに有名無実の名ばかりぼんぼん〟と根も葉もある悪口を言うこともできた。が、それは嵩江とて納得していない。本人は至って質実剛健の立ち居振る舞いをしているつもりである。だから、実のところ嵩江は〝地味な警護〟の方にこそ積極的なのであった。
兎にも角にも、嵩江はそういった職務上、御所や後宮に立ち入る機会が多い。それこそ、帝の身辺や陣定(政策会議)の警護やらで嫌でも政の仔細を聞いてしまうから、そのため耳聡いといえば耳聡い。
『でね、結局のところなんだけどさ、その鷺と僕は話したことがないや』
役に立てず申し訳なさそうにしゅんとした麩。嵩江は、気にするなと言うように口元をゆるませる。
「それはまあ、そうか、仕方ないさ。なにか話が聞ければ……と思っただけだから」
帝がその鷺を手に入れたのは、おそらく、このたび承香殿に入内する新しい女御、左大将が一の姫・花雲の君に見せるためだろうと思われる。
──籠の鳥、か。
嵩江はどうしても、その鷺を花雲姫の境遇と重ね合わせずにはいられなかった。
むろん、帝に選ばれることは至上の名誉であることは前提として、それでもある種の喩えようのない憐憫を覚えてしまうのはなぜか。帝が手放さぬ限り、あるいは死ぬまで宮に閉じ込められる女だからか。
承香殿は皇后の住まう弘徽殿に次いで格式高く、そして帝のお住まいである清涼殿に最も近い殿舎のうちの一つである。
これは帝の相当な熱の入りようであるかもしれない。しかし当の本人の思惑はこれいかに。
──機会があれば、鷺に直接会って話を聞いてみたいものだ。
そうやって結局、鷺の方に思いを馳せてみる。人間の姫君の方は、むろん直接会うなど叶うわけもなく、御簾越しに決まっている。
やがて、のんびりと進む車が水路を渡す石橋の傾斜に差しかかり、ぎいぃ……、と屋形が小さく軋んで鳴いた。足を崩して座る嵩江の指貫(袴)の膝上で、それに応えるようにして一羽の雀が、ちゅんと鳴く。
ぎいし。ちゅん。ぎいし。ちゅん。
麩が車の鳴きに合わせて調子よく歌うのに、嵩江は自然と笑みをこぼしてしまう。
「今日は一段と機嫌がよいではないか、麩」
まったりと羽を休めているその雀に、嵩江は「麩」と名をつけた。麦をひいてできた麩粉が雀の好物だったからだ。また、ちゅちゅん、と麩が返事した。
『春だからね。仲良しの子ができたんだ』
「春だから……か。そうか、つがいを探す季か」
傍から見ればまるで会話が通じているような、その光景。そして実際にこうやって通じている。一般人が耳にすればただの囀りとしか思えぬだろうが、嵩江にはきちんと意味を伴って聞こえてくるのだ。
『ねえねえ、嵩江。ところで聞いてほしいんだけど』
麩が呼びかけてくる。
「改まってどうした」
『この橋の下にね、弱った猫がいるの』
なにせ猫は雀の大敵。どこか居心地悪そうに焦茶の羽毛をぶわりと広げ、麩は怪でも見たかのごとく首をすくめる。嵩江は筆で描いたように繊細な眉を跳ね上げて、麩をまじまじ見やった。
「猫?」
『うんっ。まあ僕は猫なんて大大大嫌いだけど? ほら、さすがに可哀想じゃん? 僕は特別優しいから、助けてやらないでもない、と嵩江に一応ながら提案してみたわけね。死なれても寝覚め悪いしさあ』
「……よし」
うなずいた嵩江は、さっそく物見窓から従者に手を振り、車を止めさせた。ゆっくりと車輪が制動し、やがて車が完全に停止する。
周囲の従者たちが何事かと隣同士で囁き始めた。急に橋上で止まりたいとは、いったい主人は何用があってのことだ。舎人(護衛)や牛飼童は不審げに言葉を交わしては、嵩江をちらと目の端で垣間見る。それはあまり好意的ではない、ように嵩江にはどうしても思えてしまうのだった。
この嵩江の獣と話す異能。これもあって周囲からそこはかとなく敬遠されているように感じるのだ。それで今までなにか不都合が生じたわけでもなかったものの……。
山鳥のしだり尾のように長い水路に架かるから、この石橋は洒落で「足曳橋」と名付けられている。枕詞というやつだ。
澄んだ水がさらさら清らかに流れては桜を運び、風流な花筏というのがまさにふさわしい。水面は燦とした陽を浴びて、水晶のような光を弾いている。
立派な足曳橋の下、水路を挟む狭い石畳には、つややかな唐墨の毛並みをした猫が石の一部のようにうずくまっていた。
石段を下りた嵩江は身をかがめて黒い猫の様子をうかがう。黒猫の身体は冷たく濡れそぼって、あたたかな陽気の中でも憐れに思えた。嵩江が目を細めると突然、ふしゃーっ! と全身の毛を逆立て、毒蛇のような音声で懸命に威嚇してくる。
『私に何用ですか!』
黒猫は確とそのように申し立てている。や、思ったより元気そうだな、と嵩江は薄い唇に苦笑の気配をやんわり浮かべた。
「落ち着いてくれ、危害を加えるつもりはない」
つとめて静めた声でそう告げる。しかし黒猫はなおも小さな背を弓なりにさせ、威嚇をゆるませない。嵩江は口元をほころばせたまま、そんな険しい姿勢の黒猫に短く名乗ってみせた。
「おれは左近中将の矢野嵩江と申す者」
『矢野、嵩江……!』
そのとき黒猫が、はっと金の瞳を見開いた気がした。そのわずかな変化に、嵩江は小首をかしげて問う。
「はて、どこかでその耳目はおれのことを見聞きしているのか」
『い、いえ! あなたのことなどいささかも存じ上げませんわ!』
黒猫がぶんぶんと勢いよく首を振って否定するのに、嵩江はやや違和をおぼえた。どうも仕草が人間くさいのである。猫はよく人間の行動を真似する、とは聞いているものの、なにかが怪しい。だがまあ、今は深く追及しないことにした。猫の命に関わる喫緊の問題がある。
「そうか……まあいい。が、身体を濡らしておろう? そのままだと凍えて死ぬぞ」
嵩江がそんなふうに諭すと、黒猫は冷えを思い出したように激しく身震いして、身体から水気を振り落とそうとした。毛先から細かな雫が飛んで刹那だけ宙を舞い、射し込む陽を透かして粉雪が煌めいたようにも見えた。兎角、見ていてこちらも震えたくなるほどの寒々しい光景ではある。
『それは、わかっておりますっ。……ですが、行くあてもなく彷徨う身。住家を追い出されて、野犬に追い立てられ、逃げ延びるためこの水路に決死で飛び込んで、そのまま流され、ここでみじめに震えるだけです』
くしゅんと小さなくしゃみをした黒猫は、また香箱座りにうずくまって、疲れたように瞼を閉じてしまった。身体を冷やしたことで、相当に体力を消耗しているのだろう。
「……そうか」
嵩江はうなずき、そのまま黒猫に向けておもむろに手を差し伸べた。目を閉じたまま、すんすん、と嵩江の手の匂いをかぐ黒猫。やがて、梔子で染めたような色の目を、おそるおそるといった様子で開く。
『これはいったい、何のおつもりでしょうか』
嵩江は、ふ、と微笑んだ。
「や、おまえを助けにまいったのだ」
『……助けに?』
黒猫の声に戸惑いの響きがのる。
「なに、おまえはここで死ぬつもりか?」
『そんな、それは……、その』
嵩江が声音を落として穏やかに問えば、黒猫は口ごもる。それで数瞬を考えて、黒猫はこう言うのだった。
『……私は、自由になりたかっただけなのです。この身体は、その願いを叶えてくれるものです』
「いやはや、先ほどから不思議な物言いをする。まるで、己の身体が元から猫ではない言いよう」
嵩江が言のおかしさを指摘すると、
『あ、いえ』
黒猫はなにか誤魔化すようにつぶやいて、三角の耳をぺたりと伏せ、曇り顔でうつむいてしまった。
『待っていたのは凍え死にのようでしたね』
それに、嵩江はますます笑みをふかめる。
「ん、おれはどうする」
そう言い返せば。
『え?』
黒猫は弾かれたように顔をあげた。きょとん、と二つの瞳が薄闇の中で揺れ光る。
「ここでおまえを見殺しにした非情な男になれと申すか」
『え? いえ……、そんな、ことは。……なれど!』
しどろもどろ、言葉を途切れ途切れにさせては二の句に困っている黒猫に、嵩江は再び手を差し出す。
「な、うちに来い」
『…………』
黒猫はぱちぱちとまばたきして、そのつぶらな瞳は一瞬こちらを疑心で確かめるように見上げられる。が、やがて、黒猫は観念したように微小ながら首肯した。
『承知、いたしました。黄泉路を往くにしては、まだやり残したことが多うございますからね』
黒猫が手をとってゆっくりと立ち上がったことに、嵩江は満足して唇を三日月にさせた。
「では、名を聞こうか」
『そうですね……、さしずめ〝たま〟とお呼びいただければ』
「たま……か。玉のごとき清らかな、いい響きの名だ」
『うふふ、世辞が上手でございますこと』
たまはくにゃりと身体をしならせ、どこぞの姫君のようにたおやかに笑う。
「邸に着いたら、さっそくなにかきこしめすだろうか」
『でしたら私、蘇蜜煎がいいわ』
その要求を聞いた嵩江の顔に、また苦笑の色がにじむ。案外、図太い猫らしい。希少な猫を飼えるのは貴族だけだ、とあれば、その貴族の館から逃げてきたらしき猫の舌も、また貴なるものだということなのだろう。
「蘇の蜂蜜和えか。なかなかやんごとなき舌の持ち主らしいな。まあなに、たんまり馳走してやるから」
嵩江は束帯の袍が濡れて毛がつくことも厭わずに、たまをひょいと両手で抱えあげる。
『……ひゃっ』
やにわに宙に身体が浮いて足が空を蹴ったからか、たまは小さく悲鳴をあげた。黒い尾がぴんと立つ。むろん周囲の人々には、猫がただ「ねうねう」言っているようにしか聞こえていない。
嵩江はうつむくようにして胸元のたまを見、落ち着かせるように優しく声をかけてみた。
「すまない、抱きあげられるのは慣れていないか? ではこれから慣れてくれ」
『意外と雑な御人のようですね』
呆れるようなたまの声を聞きながら、嵩江は橋上へと戻る階を踏みしめる。
『──あ、交渉成功したんだ、よかったね』
嵩江が橋上の網代車に戻るなり、車の先端に手持ち無沙汰そうにとまっていた麩は、たまを目に留めて、若干あての外れた声をだす。
「猫だからとそう気を落とすな、麩。あとでおまえにも旨いものを食わせてやるから」
『えっ、いいの!? いつもの、くれるの!?』
麩はにわかに嬉しそうにしてその場で羽ばたいた。
「今日は趣向を変えて、麩粉ではなく初物の枇杷をむいてやろう」
『枇杷? やった!』
「ふっ、虫のいいやつ」
『虫のいいやつ!? 僕やわらかい青虫がいいなっ。たくさん捕まえてきてっ』
「違う」
『……ずいぶんと元気そうなお友達がいらっしゃるのね』
他愛もない会話を聞いてだろう、たまが抱きすくめられたまま、静かな声でつぶやいた。
「まあな、ちと囀るが」
嵩江がつまらない冗談を飛ばせば、たまはそれにも真剣に『ふふっ』と笑いをこぼす。
「ふ、ははっ」
嵩江もつられてついつい笑声をあげてしまった。その周りに待機していた従者らは、いつもの光景だ、とでも言いたげに、この獣と話せるとかいう珍妙な主人を見守っては生あたたかい目つきになっている。
「これ以上、身体が冷えてしまうといけないな」
『……んなぁ!?』
急に、嵩江は凍えるたまをすっぽり懐に入れてしまった。自分の青毛の手綱を持たせていた従者に一声かけるや、ひらりと乗馬する。
青毛が凛々しい声で言う。
『我が主、御用命をお待ちしておりました』
「頼むぞ、昴。よし、麩もついてこい」
『はいはい』
麩は昴号の立派な尻尾に舞い降りて、しっかりとつかまった。
『ぅにぁぁぁぁぁ────』
嵩江は邸へ向けて、あっという間に飛ばしてしまった。
主人が猫を連れ帰ってきたとあって、嵩江邸に仕える家人らは驚いていたようだった。
嵩江は池にせり出した釣殿の勾欄(欄干)に身をあずけていた。
『ああ、たまらないわっ……。これ、甘くて本当においしいっ……』
目と鼻の先では、たまが一心不乱に器に盛られた蘇蜜煎を食している。
『ああっ、これ、しゃくしゃく。こっちはぷりぷりっ。春の果汁と青汁……』
その隣では麩が、小さく刻んだ枇杷と、それから新鮮な青虫をついばんでいた。結局、嵩江は青虫を捕まえさせられた。
どれだけ眠っていたのだろう。
蜜色の光が斜めに射しこんできて、嵩江はその眩しさに目をすがめた。もうすぐ日が暮れる。
今の嵩江は立烏帽子を被り、蘇芳の袙(中着)に重ねるのは透ける薄物の藍の袍。色あざやかな直衣姿は、一応ながらも宮中の女達に色男と噂される貴公子のそれだ。出で立ちは洗練されているといっていい。
釣殿の床上でだらりと寝ころんでいた嵩江は、いつの間にか、うらうらとした陽光にあてられて眠りの世界に誘われていたらしい。その間、雀と猫は気を利かせて嵩江を起こさずにいてくれたのだろう。
家人が嵩江に来訪者のいることを告げた。嵩江に暇のできるこの宿直明けを狙ってわざわざ訪ねてくる者などそういない。その人物が嵩江の予定を詳細に知っている、ということだ。実際、嵩江は予定をその人物に詳しく教えていた。
『いったいどなたですか』
と、たまが近寄ってきて尋ねてくるのに、嵩江は「唯一の人間の友人さ」と飄々答える。
やがて、西門から、ぽて、ぽて……とどこか間の抜けた足音をさせながら、仔牛ほどの大きさの獣が一頭、庭園に踏み入ってきた。
嵩江邸の家人は、これもまたいつものことだ、と獣に礼を返す。それどころか、その挨拶は丁重だった。
なんとそれもそのはず、その獣はありがたい吉祥の神獣なのであった。
神獣の毛並みは頭と前脚の黒、腹が白く、後脚がまた黒、ときれいな烏鷺に染め分けられている。
「左中将様、楽橘がまいりました」
音楽的でまろやかな女声が神獣の細長く伸びた口から奏でられる。嵩江は近寄るとしゃがみ込んで神獣と視線を合わせた。
「おお、楽橘。相変わらず息災そうで何より。……が、おまえの御主人はどこへ?」
嵩江は神獣の主人がいないことには気づいていた。「楽橘」と名乗ったその神獣は、主人の所在を言おうとする。
『左中将様、申し訳ありません。我が主は『きみが囮になれ』と私に言うのです……』
「囮?」
囮という表現は、まるでこの邸が危険の只中にあるようではないか。嵩江は、何事か、と片眉をあげた。
『あの方、人使いといいますか、獏使いが荒いものですから。私は一応、花も恥じらう乙女なのですよ? ああ、前からそうなのです。何かあれば、まずは私を盾にするのです。神獣だか瑞獣だかで霊力のあるきみなのだから、おおよそ問題ないだろう、と』
これこれこうこう、と説明する楽橘だが、なぜそこまでして遠回りな来訪の仕方をするのだろうか、と当たり前の疑問を抱いた嵩江である。危険といえば、友人の職務といえば。やがて、嵩江は一つの可能性に気づいてそれを口にした。
「まさかここから……妖の匂いがするというのか」
楽橘は真剣そうな面持ちでうなずいた。
『おっしゃる通りです。このお邸に妖の類いが潜んでいること、間違いないのです』
「それで、おまえが先行してこの邸を調査しろ、ということか。突然やつの手に負えぬほどの物の怪が出てきても困る、と」
『やっぱり、獏使い荒くないですかあの方~!』
涙声で主人のぞんざいな扱いを訴える黒白の獏に、嵩江は思わず微苦笑をこぼしてしまった。なめらかな毛並みをなでてやると、楽橘は、きゅう……と心地よさそうに鼻を鳴らして甘えてくる。
「よしよし、おまえの主人は人の心がない。よければうちの子にならないか、楽橘。好きな青物をたんと用意してやるぞ」
『うぅ~、なんて魅力的なお誘いなのでしょう~!』
すり寄っては足を嬉しそうにぽてぽて踏み鳴らす楽橘としばらく抱擁していると、やがて玲瓏とした若い男の声が門の陰から響いた。
「何をしているのかな、楽橘。その朴念仁に浮気とはいただけないぞ。そも、妖の様子はどうだ。その嵩江は本物か?」
すると楽橘は鼻先で嵩江の匂いをかいだ。
「主様、この左中将様は本物でございます。私の鼻が確かであれば、ですが」
門の陰に向けて、そんな声を返す楽橘。
「では、どこから妖の匂いがする?」
「ええと、左中将様の御手から」
「では、きみはやはり嵩江が妖だと主張するのか」
「いえ、違います。これは、かすかな匂いの残滓でございます。……おそらく、妖にお触れなさったものかと」
「妖に、触れたあ!?」
そこで、人影が西門から慌てたように駆けこんできた。その影は、やはり一人分である。
「──私にも、触らせろ!!」
清々しいほどの喜色満面であった。
陰陽助・臺仙幸音は都に生きる陰陽師としては異色の経歴を通っている。
陰陽師とは、古代中国の陰陽五行説に基づいた陰陽道という法術を用いて、災異を祓ったり、吉凶を占ったり、加持祈祷をする者のことである。
陸奥国(国府は現在の宮城県多賀城)出身の幸音は、なんと深山に暮らす妖女・山女を母にもち、生まれついて見鬼の才があった。
今の陰陽頭が陸奥国に下向した際、その稀有な才能を陰陽頭に見いだされて上京することとなり、陰陽寮の門戸を叩いた。
これは当時まったく異例の事態であった。陰陽寮の門生となれるのは貴族の良家出身者がほとんどを占めていたからである。高級貴族や御所での官人を相手に職務を執り行うため、必然、職務にたずさわる者も〝上等〟な出の者であることが必須だった。
が、幸音の場合はそういう縁故といった外的要因を実力でねじ伏せ、陰陽助の位まで上り詰めた才人であった。
かつて、御所の周囲に妖が出たとの騒ぎがあった。幸音はそれを見事解決してみせたことがある。
──事件の内容はこうだ。
後宮に出入りする女房をつけ狙って、女房の血を啜ろうとする蟲がいた。それは蚊ではないのか、と人々は言ったが、実際には呪から作り上げた蚊を使役して害をなす敵方の呪術師の仕業。その女房に嫉妬した他の女房が依頼したのだ。
幸音は蚊の使役権を乗っ取って逆に敵のところまで案内させ、なんとその根城を叩くことに成功したのである。
この事件をきっかけに陰陽助(次官)に取り立てられた幸音だった。
幸音は解決したあと、こうぼやいたという。
「──やれやれ、蚊は痒くてかなわん。私も血を吸われたせいか、頭が冴えたな」
このとき事件を追っていた嵩江と知り合い、今日まで続く友人関係となった。
そんな幸音であるが、その容姿こそは白皙の貌と、ほっそりなよやかな体躯とを兼ね備えた妖艶で見目麗しい美丈夫である。しかし実は母譲りの怪力の持ち主。まずは妖を殴ってから調伏するという、極めて特異な戦い方をする。
「相変わらず何をどこから突っ込んだらよいのやら……」
と、嵩江は頭を抱えかけている。目の前の陰陽助はからからと愉快そうに笑う。
「おぬしの庇い立てするその黒猫、おそらくは化け猫の類い。楽橘が妖の匂いがぷんぷんすると申しておる」
「主様は何もなさっていないではないですか!」
と、人語を解する楽橘の文句があった。
「たまが、化け猫とはな……」
嵩江は、じいっと注意深くたまを眺めてみる。たまは青ざめているようだった。いや、実際には黒い毛並みを青くすることは叶わなかったが、全身から血の気が引いているようで、小刻みに震えている。
『信じてください、私は妖魔ではありませんわ!』
嵩江の指貫の裾に前脚をかけて、必死に訴えてくる。
「おい、黒猫はなんと言っている?」
居ても立っても居られないように幸音が嵩江に問うてくるので、嵩江はわざととぼけるように口角を下げた。
「自分は妖ではない、と主張しているな」
「ほう、ではなにか。妖でないなら雹か、槍か。それか〝唐猫〟とでも名乗るつもりか。正体を現せよ、化生。──毛がなくなるまで、もふもふしてやるぞ」
いかにも気を利かせて韻を踏めたことに満足したかどうか、幸音は歌うように言って、たまを鋭くねめつける。
『……ひっ』
たまが身を縮めてひるんだ。完全に妖とみて身を乗り出す幸音だが、それを嵩江は手で制した。
「幸音、そういじめてやるものでもないさ。たまにもなにか事情があるのやもしれん」
『はい! 事情、あります!』
たまが渾身で叫ぶのに、幸音は諦めたように軽くため息をつく。嵩江はそれに片目をつぶってから、たまに視線を合わせて言った。
「わかった、おまえのことを全面的に信じよう。信じないことには話も進まんからな。だからこそ、きちんとその事情とやらを話してはくれないものか」
その落ち着きはらった低い声音に、ようやく、たまの緊張が緩みはじめた。
『はい、今から正直に経緯をお話しいたします……』
そして、たまは語る。
──自分は花雲の君である。
──化け猫と身体が入れ替わってしまった。
──猫になった自分は左大将邸を追い出された。
──花雲の身体を奪った化け猫姫は、今も入内の準備をするため左大将邸にいる。
──化け猫姫の目的は杳として知れない。
「つまり、おまえ……、いや、あなたは、女御になるはずであった花雲の君……?」
嵩江は目を見張り、喪神したようにつぶやきを落とした。
『はい、おっしゃる通り、私こそが花雲です』
一輪の花がしおれでもするように花雲は砂利の上にうずくまる。
「だが、花雲の君たる証拠は?」
と、なおも幸音が詰めよる。すると、たまはそれにこう答えた。
『私は、璋子。これはごく近しい縁者しか知らぬ諱でございます』
「…………」
普通、女子は諱を名乗ることはない。そこまで身の裡を言われては、さすがの幸音も黙らざるをえなかった。
「てっきり、ただの高級志向の黒猫かと……」
嵩江はまた頭を抱えかけた。
「花雲様とはいいお友達になれそうですわ!」
と、やけにのんびりした様子で言う楽橘であったし、
『じゃあ僕、姫を助けたってこと?』
嵩江の肩にとまっていた麩は感慨深そうであった。
「そうなるな」
嵩江もこの事態は想定外である。帝の妃になろうとしていた左大将の姫君が、左大将の部下の邸に囲われている? ……まずい。
「花雲の君、おれのことを最初からあなたはご存知だっただろう」
すると、花雲はしゅんとして金の瞳を伏せた。
『……はい。素知らぬふりをしてしまい、申し訳ございませんでした』
はあ……、と大きすぎるため息が嵩江の口からもれる。
「いずれにせよ、あなたの御父上にどう説明したものか」
♢
帝の御座所がある清涼殿の殿上間(評議・詰所のための部屋)にて、嵩江は拝謁のために待機していた。
殿上間に昇殿を許された者だけが殿上人と呼ばれる。ここには櫛型の窓があり、これは、待機している公卿や殿上人らを帝が覗き見るためのものである。
殿の東庭に面した孫廂と呼ばれる謁見の間の正面に御簾を隔てて、帝の御座所・昼御座がある。北側には御寝所である夜御殿、西側には女房と女官の詰所である台盤所がそれぞれ配置されていた。北の渡殿(廊下)を渡れば、後宮の七殿五舎に通じている。
ついに嵩江の順番がめぐってきた。形式の礼をとってから発言が許されて、嵩江は若い帝に向けて口を開いた。
「主上に奏上したき仕儀がございまして、参内いたしました」
「そう硬くならずともよい。私と従兄殿の仲だろう。……さ、申してみよ」
「このたび入内なさる女御、花雲の君につきましては──」
帝が嵩江と相談して決めた策の内容はこうだ。
──皆であえて、化け猫姫を内裏で待ち伏せしよう。
♢
高貴な薄紫の袿をまとった花雲姫。檜扇で隠されていたその下の顔は、柳眉と桜の唇とを持ち合わせた、輝くように美しい女であった。しずしずと膝行で帝に近寄り、拝礼するや、いきなりこんなことを放言する。
「妾は、花雲姫の身体を借りて御前に参上いたしました、一匹の化け猫にございます」
妖艶に笑む姫君に、しかし帝は恐れず言い返しなさる。
「その化け猫が、私に何用ぞ。むろん私が帝であると知っての狼藉であろうな」
大事あるを予期して御座所の警護に太刀を佩き控えていた嵩江は、内心で冷や汗をかいていた。謎めく妖を内裏に招き、あろうことか御座所にまで近寄らせると、大胆にも提案したのは他でもない嵩江であったから。隣で同じく控えていた陰陽助・幸音もいつでも緊縛の呪を唱えられるよう、符札を握りしめている。
「いえ、妾がこうして、いささか回りくどい方法で御前に参上いたしましたのは、他ならぬこの嘆願を聞き入れていただきたかったからなのです……」
袖を口元に持ち上げ、よよよ、と嘆く仕草をする化け猫姫。
「なに、私の身の破滅とでも申すか」
「まさか! 妾は、鷺の妻に頼まれて、夫殿を取り返しにまいっただけですわ……」
警護の者たちや話を聞きつけ様子を見にきていた公卿らへと、葦原を風が通り抜けたようにさざめきが広がっていった。
そして、姫はこう語った。
腹に卵をかかえた鷺の妻が他の場所へと餌を獲りに行っている間に、夫がなんと攫われているではないか。化け猫は魚を獲りに偶然その池に居合わせて、一部始終を見ていた。御所に連れていかれたことを話せば、妻から夫を取り戻してほしいと依頼される。
しかし、化け猫一匹が内裏に忍び込んでそのまま帝に事情を説明しても取り合ってもらえるわけもない。
そこで、花雲姫に目をつけ、彼女から〝身分〟を借りた──。
「夫殿をお返しいただかなければ、この姫の身体、傷つけますわ」
姫は袿の袖を払うや、白魚のような腕をいつでも引っ掻けるように、鋭く爪を立てる真似をした。
「──鷺の妻に頼まれた、か。なるほどなあ、私らの出番はなしか」
隣で幸音がほんのわずかに苦笑をこぼした気配があった。嵩江も同じく苦笑いで肩をすくめかけた。
帝はこの経緯にたいそう驚かれ、鷺に対してお謝りになった。
そして鷺は──
「──よかったな、妻に会えて」
嵩江が訊くと、五位鷺は軽く羽ばたいて首を伸ばす。
『帝に、御所近くでの営巣を許していただけました。いつでも御前に戻ってくるつもりでございます。これで無事に解決ですね』
「かわいい雛が見られるのも近そうで何よりだ」
嵩江は微笑んで、抜けるような蒼空に飛び去っていく鷺の後ろ姿を見守った。
一方で、花雲の君である。彼女は人間の姿を取り戻した。化け猫は律儀なことに、花雲に身体をきちんと返したのだ。
「まさか、あなた様が王であらせられたなんて……」
「いや、おれは先帝の弟の不義の子だ。そう気にしないでくれ」
「まさか、女御のお勤めを取りやめていただけるとは思いませんでした」
「よかったな、というのもなにか違うしなあ……」
つまり、得体の知れない妖と身体をすげ替えられ、そのことが公表された時点で、花雲はその間の行動を証明できない。
皇統正統性の観点から、花雲は女御として〝不適格〟となり、自然と入内も取りやめられる、という理屈だ。
──なんと、化け猫はそこまで考えての策だったのだ。
それを言うべきか言わざるべきか、嵩江が言葉に迷い、どうしたものかと頭を悩ませていると。
「化け猫さんから、猫に変化できる異能を授けていただきました。これで、いつでも猫になれますわ!」
ころころ鈴でも転がしたように〝たま〟は笑ったものである。




