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EVOLVE〜エヴォルブ〜Season11 ― 戻れる場所 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season11 ― 戻れる場所 ―
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第14章 ぽかぽかの帰る場所

事件が終わってから、

リアライズのオフィスは、少しずつ元の空気を取り戻していた。


噂は、消えるのも早い。

それ以上に、

仕事が進めば、人は前を向く。


涼平りょうへいはというと――

相変わらず、だった。


「おはようございます!

 今日、天気いいっすね〜」


誰にでも声をかけ、

誰にでも同じ調子で笑う。


一度失った信用は、

時間がかかる。


けれど、

涼平の人柄は、

それを補って余りあるものだった。


「中里さん、次の案件なんですけど……

 お、いいっすね!一緒に考えましょう!」


自然と、人が集まる。


(……ほんと、変わらないな)


そう思いながら、

涼平自身も、少しだけ肩の力を抜いていた。



◇◇◇



その夜。


ぽかぽか邸のリビングには、

いつものメンバーが揃っていた。


テーブルの上には、

しゅうが作った料理。


「今日は軽めでいいだろ」

そう言いながらも、品数はしっかりある。


「軽めとは……?」

なぎが首をかしげる。


「柊先輩基準、ズレてますよね」


「うるさい」


たまきは、並べられた料理を見て、

にこっと笑った。


「おいしそうです。

 今日のごはん、ぽかぽかです」


「……ぽかぽかか……ははは……環らしいな……」

と柊。


「ぽかぽか……?」

首をかしげる涼平を見て、

すかさず凪が言う。


「最高評価です。環さん語で言うと、最上級」


「そうなのか……?」

首をかしげる涼平。


「そうだな……」

柊はそう言いながら環の頭を撫でる。


「あーはいはい!はじまりましたよ〜2人のイチャイチャ〜」


「柊、おまえ、人前で、そういうことするんだな~意外〜」


「ずっと環さんに話しかけられなかったヤツだとは思えないな!ははは……」

涼平が言いながら大笑いし、つられて凪も笑う。


「柊先輩、家でも職場でもイチャイチャしてますよ〜」


「……なんだよ……2人とも……いいだろ?」


「いやさ」

涼平は、グラスを手にしながら続ける。

「仕事では完璧なのに、こういうとこあるんだな……」


「ですね〜、柊先輩、環さんのことになると最強になりますから……」


「おまえらに言われたくない」


「それ〜!」

凪が笑いながら乗っかる。

「柊先輩、詰められると弱いですし」


「詰められてない」


「顔、赤いですよ?」


柊は、片手で顔を覆った。


「……もういいだろ」


その様子を見て、

環がくすっと笑う。


「柊、かわいいですね」


「環まで言うな」


「事実ですから」


涼平は、

そのやり取りを眺めながら、

静かに言った。


「……ありがとな」


3人の視線が、涼平に向く。


「俺さ、

 今回、正直、怖かった」


少しだけ、声が低くなる。


「疑われて、

 味方がいなくなるかもしれなくて」


「でも――」


涼平は、環を見る。


「ちゃんと見てくれる人がいた。

 それだけで、救われた」


環は、少し驚いたように目を瞬かせてから、

ゆっくり頷いた。


「信じる、というより……見て、感じて、考えただけです」


「それが、すげーんだって」


涼平は、照れたように笑う。


凪が、グラスを持ち上げた。


「じゃあ。

 事件解決と、名誉回復と」


少し間を置いて、


「ぽかぽかの勝利に」


「なんだそれ……」

柊が言いながらも、グラスを上げる。


「でも、悪くない」


グラスが、軽く触れ合う。


高い音ではない。

でも、あたたかい音。



◇◇◇



帰り際。


玄関で靴を履きながら、

涼平がふと振り返った。


「……また、来てもいいか?」


「当たり前だろ」

柊が答える。


「泊まってく?」

凪が冗談めかして言う。


「いや、それは遠慮しとく」


涼平は笑って、

最後に環を見た。


「環さん。

 ありがとうな」


環は、少し照れながら答える。


「こちらこそ。

 無事に終わって、よかったです」


ドアが閉まる。


静かになったリビングで、

柊がぽつりと言った。


「……終わったな」


「終わりましたね」

凪が伸びをする。


環は、窓の外を見ながら、

小さく微笑んだ。


「でも、ちゃんと戻ってこれました、みんな」


柊は、その言葉を聞いて、

環の頭にそっと手を置く。


「……ああ」


事件は終わった。


けれど、

ここは、終わりじゃない。


間違えても、

傷ついても、

戻ってこられる場所。


ぽかぽか邸は、

今日も、静かに灯っている。


それぞれの“正しさ”を、

そっと受け止めながら。

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