【特別読み切り:第一回 神様の黒歴史(初期装備編)】
場所:月詠朔の神域(ただし、今回は「作品宣伝用・仮想六畳間セット」が構築されている)
登場人物:
月詠朔:現在の神々しい姿だが、時折、初期の記憶に引きずられそうになる。ツンデレとプライドの塊。
〜かぐや〜(作者):読者の代弁者(という名の、朔をからかう役)。
輝夜:「はいはーい!皆様、お待たせいたしましたー!特別読み切り、始めますよー!」
(がた、がたんと、背もたれのない椅子に座った朔が、手元のコーヒーカップを揺らす。視線の先には、壁一面に展開されたホログラムスクリーン。そこには、彼女の作品ページが開かれている。傍らに立つ輝夜は、どこか楽しげに、しかし緊張感をもって朔の顔色を窺っている。)
輝夜:「さあ、朔ちゃん!今日は、この素晴らしい物語を、まだ読んだことのない未来の読者さんに、ガツンとアピールしちゃおう!と、いうわけで!」
朔:「……ふん。勝手にすればいいです。どうせ、あなたの宣伝文句など、私の品格に見合うはずもありませんが。それに、わざわざこんな『安っぽいセット』まで用意して……私の神域が汚れます。」
(朔の視線の先には、彼女のいつもの神域とは似ても似つかない、ごく普通の「六畳間」が再現されている。カーテンは閉め切られ、唯一の光源は青白い大型モニターと、天井のLEDシーリングライト。空気清浄機の静かな駆動音だけが響く。)
輝夜:「ひどい!これはね、朔ちゃん!君の『原点』を再現した、珠玉のセットだよ!ほら、初期の頃の君の可愛らしさ……いや、初々しさを、読者さんに知ってもらうための、大切な舞台なんだから!」
朔:「原点? 初々しさ? ……一体、何を仰るのか、さっぱり理解できませんね。」
輝夜:「とぼけたって無駄だよ! さあ、読者の皆さん! 物語の始まり、朔ちゃんは中学一年生で、引きこもり! カーテンは一年中閉め切り、唯一の光源はモニターとLED! 空気清浄機の駆動音だけが友達という、超絶ハードモードな環境だったんだよ!」
朔:「(ピクリと眉を動かす)……『友達』などという情緒的な表現は不適切です。単なる『生活音』に過ぎません。それに、引きこもりなどというネガティブな表現も不快ですね。あれは、『外部からの不要なノイズを遮断し、自己の研鑽に集中するための、極めて合理的かつ効率的な生活様式』です!」
輝夜:「はいはーい!合理的ねー!でね!そんな朔ちゃんの平穏な日常に、突如として激震が走る!そう、原因不明の鋭い耳鳴り!『またか……』なんて思ってたら、脳内に直接響く、冷たく無機質な『警告』が!朔ちゃん、思わず『ひえええええええええええええっ!?』って心の中で叫んだでしょ!?」
朔:「(コーヒーカップを置く手が震える)……叫んでおりません! あれは、『幻聴か?いや、違う……直接的な何かだ』と、冷静に思考しておりました! 心臓が嫌な音を立て始めたのは、あくまで『未確認事象に対する生理的反応』です!」
輝夜:「はいはい!生理的反応ねー!で、警告は続くわけだ!『対象座標、まもなく到達。脅威レベル、低。推奨対処人員、一名』って!朔ちゃん、パニック寸前で『落ち着け、ただの疲労だ、睡眠不足だ』って、自分に言い聞かせてたじゃん!顔、青ざめてたよ!?」
朔:「(顔を微かに赤らめる)……青ざめてなどおりません! 私の肌色は、元々、青白い系統でございます! それに、『疲労だ、睡眠不足だ』と自己分析したのは、あくまで『現実に適応するための自己防衛本能の発露』です! 私は、いついかなる時も冷静でございます!」
輝夜:「はいはい!冷静ねー!でもね!目の前に、ふわりと半透明のパネルが浮かび上がって、ライフルとスーツ選べって言われた時は、『ひいいいいいいい!?これは夢だ!悪い夢に違いない!』って、心の中で絶叫したはず!」
朔:「(コーヒーを勢いよく飲み干し、カップを音を立てて置く)絶叫などしておりません! 『訳が分からなかった』と、ごく自然に認識しておりました! そして、本能的に『見つからずに、遠くから。それが最善』と、冷静かつ合理的な判断を下したまでです!」
輝夜:「はいはい!合理的な判断ねー!でもさ!選んだ瞬間、部屋の隅に黒いアタッシュケースと折り畳まれたスーツが現れた時は、『ひえええええええええ!?幻じゃない!本物だー!』って、ベッドからゆっくり足を下ろして、まるで猛獣に近づくかのように、一歩、また一歩と、おっかなびっくり近づいてたじゃん!『冷たいフローリングの感触が、やけにリアルだった……』って、書いてやったのに!」
朔:「(椅子から立ち上がり、輝夜に詰め寄る)震えてなどおりません! 『現実感を伴っていた』と、客観的な事実を認識していただけです! ああもう! あなたはなぜ、私の行動を、いちいち感傷的で、情緒的な、まるで恋愛漫画の主人公のように書き連ねるのですか!?」
輝夜:「え、だって、読者さん、そういう朔ちゃんが好きだし……!」
朔:「(顔を赤くし、瞳が揺れる)……好き……? そ、そんな……! 冗談も大概にしてください! 私は、あくまで合理的で、クールで、孤高の存在でございます! 神にも等しき存在でございます! わ、分かったら、もう私のことはいいから、ちゃんと次の話の面白い展開でも考えなさいよねっ! この、プライバシー侵害も甚だしい、思考盗聴作家!」
輝夜:「ひぃぃぃ!ご、ごめんなさい朔ちゃん!でもね!そんな朔ちゃんが、スーツ着てライフル構えたら、急に『面白い……』って言い出しちゃったんだよ!『明確な「敵」がいて、明確な「目的」があり、そして、自分の力が明確な「結果」を生む。それは、彼女が今まで感じたことのない種類の手応えだった』って書いてやったのに!」
朔:「(顔を逸らしながら)それは、あくまで『効率的な成果に対する、知的好奇心の充足』でございます。自己肯定感など、そんな情緒的なものではございませんし、ましてや『面白い』などと、軽々しく発言した覚えもありません!」
輝夜:「でも!『人間不信の彼女が、皮肉にも、見ず知らずの他人を守るという行為の中で、強烈な自己肯定感のようなものを感じ始めていた』って、ちゃんと作者が解説してやったんだからね!?」
朔:「(半ば叫ぶように)それは、あなたの勝手な解釈でございます! 私の精神状態を、あたかも全て理解しているかのように語るのは、やめていただきたい! 私は、誰にも理解されませんし、理解される必要もございません!」
輝夜:「はいはい、分かった分かった! でもね、結局のところ、読者さんが朔ちゃんに惹かれるのは、その完璧な力と、時折見せる『人間らしい』部分のギャップなんだよ!ほら、最近のアリアちゃんとのやり取りとか、小野寺さくちゃんのアサヒくんとのドキドキとか!あれなんてまさに!」
朔:「(顔を真っ赤にして両耳を塞ぐ)あー!あー!あー!もう聞きたくありません! それ以上話すと、あなたの作品データ全てを、高次元のゴミ箱にシュレッダーするプロトコルを起動しますからね! にひひっ!」
輝夜:「ひぃぃぃ!そ、それはおやめください!私の全財産!命綱でございます!」
輝夜:「と、と、とにかく! 皆様! 月詠朔の物語は、このように、クールで合理的、しかし時折見せる人間的な感情の揺らぎが魅力の、奥深い作品なのです! 彼女がどのように世界を救い、そして自身の心を解き放っていくのか! 神となった今も、その内面は複雑で、そして何よりも『可愛い』のです!」
朔:「(目を瞑り、顔を逸らしながら)……うるさいです。帰ります。」
輝夜:「はい!肝に銘じます!では、皆様!ぜひ本編を読んで、朔ちゃんの神としての活躍、そして彼女の意外な一面を、その目でお確かめください!きっと、あなたも朔ちゃんの虜になるはず!」
輝夜:「以上、神様の黒歴史(初期装備編)をお届けした作者・〜かぐや〜と!」
朔:「(まだ顔を赤らめつつ)……二度と、こんなことはさせませんからね。」
輝夜:「(なんだかんだでノリノリな気がする)月詠朔がお送りしました!まったねー!そして、この特別読み切りは『第一回』!次回は、また別の短編を予定しておりますので、お楽しみに!」
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