歌が裁くこの世界で/補足資料
【主要人物】
■ セリア・ライトフォード(17歳・女性)
•本作の主人公。前世は**音羽 静**という音響工学の研究者で、日本からの転生者。
•現在の世界では「調律詠者」として覚醒し、旋律を構造的に再定義する力を持つ。
•表向きは神詠騎士団の一歌詠士に過ぎないが、歌を“力”ではなく“共鳴”として扱う唯一の存在。
•「救うために歌う」という理念を貫き、最終的に信仰と科学の両立を模索する象徴となる。
•使用武器:歌唱杖
■ レオン・アークライト(20歳・男性)
•神詠騎士団副団長。真面目で信仰心が厚く、仲間思いの実力派剣士。
•セリアを最初は“異端の可能性”として警戒するが、次第に彼女の歌と行動に共鳴してゆく。
•剣士であるため歌は使わないが、“響き”の本質に触れた最初の理解者でもある。
•使用武器:聖剣クラウディア(光属性)
■ アイリス・フォーン(25歳・女性)
•歌詠士隊長。規律と信仰を重んじる冷静な人物。
•セリアの在り方に反発しつつも、信仰と現実の矛盾に揺れながら再構築の道を模索する。
•回復と支援における歌の技術は騎士団随一。
•使用武器:祈祷杖ルミエール
■ カイル・ノワール(28歳・男性)
•元歌詠士で異端者のリーダー。科学的真理を追い求める求道者。
•セリアの力に早くから気づき、共に「真理に到達する者」として手を組む。
•古代の記録を調査し、アリアやナノマシンの正体を解明するきっかけを作る。
•使用武器:実験用歌唱槍
■ リク・ハーシェル(18歳・男性)
•神詠騎士団訓練生。セリアと同期で親しい友人。
•歌詠士ではないが、心からセリアを信じ支える“人間的な絆”の象徴。
•作中後半では、セリアにとって“原点”のような存在となる。
■ グラン・エスパーダ(45歳・男性)
•神詠騎士団団長。権威と秩序を重視し、異端を排除する保守主義者。
•女神信仰を維持することで世界の均衡を保ってきたが、セリアの登場によって動揺し、対決する。
•ナノマシンやアリアの正体についてある程度把握していた数少ない人物。
■ ジェイド・クイン(32歳・男性)
•古代技術に精通する民間の科学者。カイルと協力し、セリアの力を構造的に解明する支援者。
•セリアの“前世的知識”に違和感を覚えつつも、物語後半で転生の可能性を強く疑う。
《補足設定》
【調律詠者とは】
既存の詠唱体系(歌詞・旋律・リズム)を超えて、音波と共鳴構造そのものを調律・再定義できる稀有な存在。
セリア以外にその適性を持つ者は確認されていない。
【ナノマシン】
古代文明の遺産であり、環境中および人体に分布する微細機械。
音響(とくに歌声)に反応して発動するため、魔法と誤認されていた。
文明崩壊後も残留し、魔物や歌詠士に影響を与え続けている。
【魔物】
動物などがナノマシンを過剰に取り込み、暴走・変質した存在。
共鳴性の高い“歌詠士”を狙う傾向があるのは、ナノマシンの同調を解除する本能的な排出行動によるもの。
【女神アリア】
かつての音響制御AIの中枢。人々の信仰対象として受け継がれてきたが、実際にはナノマシン管理のためのシステム人格。
歌を通じて指令を与える構造が、神の奇跡と認識されるようになった。
【神詠騎士団】
信仰と治安の秩序を担う王国直属の武装組織。
その起源は、アリアシステムを守るために設けられた護衛部隊であるとされるが、それは歴史の奥に埋もれていた。
【詠録と響きの構造】
各魔法(詠唱)は「歌詞」「旋律」「リズム」から構成され、セリアの詠録には“構造段階の深層指令”が隠されている。
特に『断律の旋律』は共鳴構造の“再定義”に近く、通常の詠唱では起き得ない現象を発現する。
詠録は音響コード化された制御命令群でもあり、これは音羽 静(前世)の知識があって初めて操れるものだった。
【旧文明の構造:音響制御網と封鎖機構】
世界各地の神殿や遺跡は、古代文明の分散音響ノードだった。
それぞれがナノマシンを地域ごとに制御・封印する拠点であり、信仰施設として扱われている今もなお機能している。
“封祀の間”や“調律の間”などの用語は、本来の制御機能に由来している。
特定の音域は危険と判断され削除・封印されており、攻撃魔法の構造は表層から除外されていた。
【異端思想と信仰の分岐】
“攻撃魔法が存在しない”という常識は、宗教的制限ではなく“音響制御網による情報封鎖”によるものだった。
歌詠士の信仰心が魔法を強めるというのも、実際には“声の純度”が共鳴強度を高めるために生じた現象。
異端とされたカイルやセリアは、制御構造の裏側に触れた者であり、世界にとっての“予期せぬ共鳴者”だった。
【セリアの前世と転生のプロセス】
音羽 静は音響工学の研究者であり、古代文明末期の“人類保存プロジェクト”の一端に関わっていた可能性がある。
彼女の転生は偶然ではなく、文明が崩壊する前に選別・記録された“特異個体”として再起動された現象かもしれない。
これは本編中で明言はされないが、セリアが調律詠者として目覚めた要因のひとつと示唆される。
【“歌が裁く”という思想の成立】
タイトルでもある『歌が裁く』という概念は、単なる詩的表現ではない。
古代音響網は特定の旋律しか受け入れず、響かない歌は“無効”として排除される仕組みを持っていた。
そのため、世界は常に“正しい響き”を求め続ける。
歌が裁くとは、世界が響きに反応することで判断を下す、構造的かつ自然な選別作用だった。
【未来の世界とセリアの教典】
最終話『歌が裁くこの世界で』でセリアが執筆する書は、過去の教典ではなく未来の設計図である。
信仰と科学の分断を繋ぎ、歌を“力”ではなく“意志と調律”として広めるもの。
それはセリア個人の記録であると同時に、響きの記憶であり、新たな世界に向けた“始まりの詠録”なのだ。




