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42.歌が裁く古代の真実

夜が明け、冷たい朝露が草木を濡らす中、セリアとカイルはついに古代遺跡の入り口にたどり着いた。

山の中腹にぽっかりと開いた洞窟のような入り口には、古びた石碑が立っている。

石碑には風化した文字が刻まれており、その一部がかすかに読めた。

「……歌の……力……解放……」

セリアは指でそっと文字をなぞった。

「やっぱり、攻撃の歌はここに関係しているのかな……」

カイルが地図を確認しながら言った。

「間違いない。この遺跡には、古代の歌術の記録が眠っているらしい。俺たちが探している“解放の力”の手がかりがあるはずだ」

セリアは少し不安そうに言った。

「でも、こんなところに攻撃の歌の真実が……」

「信仰の連中が管理できない場所だからこそ、ここに真実が残っている可能性が高い。行くぞ」



洞窟の中は薄暗く、冷たい空気が漂っていた。

カイルが灯火を掲げ、慎重に歩みを進める。

壁には古代文字が刻まれているが、すでに朽ち果てて読めない部分が多い。

「何かに書き換えられた痕跡があるな……」

カイルが指でこすり、古い文字を探る。

「歌の力……信仰……解放……」

「何か分かる?」

「どうやら、攻撃の歌が禁忌とされた経緯が書かれているようだ」

セリアは息を飲んだ。

「なぜ、攻撃の歌は禁忌に……?」

「まだ全部は読めないが、解放の力が災厄をもたらしたとある」

「災厄……?」

「何かが起きた結果、攻撃の歌が禁じられた。詳細はさらに奥にあるかもしれない」



遺跡の中央にたどり着くと、広間には古代文明の象徴である巨大な石像が立っていた。

その像の足元には台座があり、そこには歌詞のような詩が刻まれている。

「――歌が響けば、力が生まれる。共鳴し、破壊と守りが同時に成り立つ」

セリアは呟きながら、その言葉の意味を考えた。

「破壊と守りが同時に……?」

カイルが鋭く言った。

「やはり、攻撃と防御は表裏一体ということか」

「どういうこと?」

「歌の力が音波を共鳴させる性質を持っているとすれば、その波長を制御することで、攻撃にも防御にも変化する可能性がある」

「つまり、私が攻撃の歌を使えたのは、共鳴を誤って操作したから……?」

「その可能性が高い。お前が恐れを抱いたことで、攻撃の共鳴が強まったのかもしれない」

セリアは胸に手を当て、考え込んだ。

(私の気持ち次第で、歌の力が変わってしまう……そんなことがありえるの?)



突然、遺跡全体が揺れ始めた。

「地震か?」

「違う、何かが目覚めた……!」

広間の奥から、巨大な魔物が姿を現した。

その体は石像の一部が剥がれ落ち、内部から黒い煙を放つ異形の姿をしている。

「古代の守護者か……厄介だな」

カイルが槍を構え、すぐに歌を紡ぎ始めた。

「――風よ、刃となりて敵を切り裂け!」

風の刃が放たれるが、魔物の硬い体にはかすり傷程度しか与えられない。

「くそっ、硬すぎる……!」

セリアも震えながら歌唱杖を構えた。

「――炎よ、我が力となりて敵を貫け!」

炎の刃が放たれるが、魔物の体に吸収されてしまう。

「効かない……!」

カイルが叫んだ。

「どうやら、ただの力ではなく、共鳴そのものを制御しているようだ。弱点を探れ!」


セリアは焦りながらも、遺跡の詩を思い出した。

(共鳴……破壊と守りが同時に成り立つ? もしかして、相反する力を同時に使えば……)

セリアは歌唱杖を両手で握りしめた。

「――風よ、炎と共に響き、力を交差せよ!」

歌が響き、風と炎が同時に発生し、交差するように魔物を包み込む。

「ぐおおおおおおおっ!」

その瞬間、魔物の体が共鳴を起こし、自壊するように崩れ落ちた。



カイルが驚いた顔でセリアを見つめた。

「お前、今の歌……どうやって?」

「歌詞を変えて、風と炎を同時に重ねたの……破壊と守りが同時に存在するって、そういうことかなって……」

カイルは感心したように笑った。

「なるほど、力を重ねることで共鳴を制御する……面白い理論だ」

セリアは息を整えながら、少し微笑んだ。

「まだ怖いけど、歌の力をちゃんと理解すれば、もっと制御できるかもしれない」

「その発想を忘れるな。俺たちは真実を探し続ける異端者だ」

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