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32.歌が裁く繋がりの声

朝の光が差し込む中、神詠騎士団本部には少しずつ活気が戻っていた。

セリアの「信頼の旋律」によって、隊員たちの心が少しずつ落ち着きを取り戻し、内部の異端者騒動で揺らいでいた信頼も回復しつつあった。


レオンが訓練場で隊員たちを集めて声をかけた。

「昨日の騒動で動揺が広がったが、セリアの歌が皆を繋いでくれた。もう一度、我々の使命を思い出そう。仲間を守り、王都を守る――そのために力を合わせよう」

「はい!」

隊員たちの返事には、かすかだが自信が戻ってきている。

セリアはその様子を見て、少し安心した。

(私の歌が、少しでも仲間の助けになったなら……)



その日の昼過ぎ、突如として西門から警報が鳴り響いた。

「魔物だ! 西門に魔物が現れた!」

レオンがすぐに指示を出す。

「全隊員、西門に急行! 歌詠士は支援態勢を整えろ!」

セリア、アイリス、リクもすぐに準備を整え、現場に向かった。



西門に到着すると、巨大な魔物「暴嵐獣ぼうらんじゅう」が門を破壊しようとしていた。

「なんだあの大きさ……黒狼獣よりもずっとでかい!」

暴嵐獣は、風を操る力を持つ大型の魔物で、その咆哮が強風を巻き起こし、周囲の建物を吹き飛ばしている。

「くそっ、風が強すぎて近づけない!」

前線の剣士たちが押し戻されている。


レオンが剣を構え、風の中を突き進む。

「力を合わせて食い止めるぞ!」

アイリスが歌唱杖を振り上げ、歌を響かせる。

「――癒しの風よ、仲間を包み、痛みを和らげよ!」

傷ついた剣士たちの体が癒されていくが、暴嵐獣の突進で再び吹き飛ばされる。


セリアが焦りながらも、冷静に考えた。

(この強風……もし、風の流れを逆に利用すれば、力を打ち消せるかも)

(共鳴で風の流れを操作すれば――)

セリアは歌唱杖を握りしめ、意を決して歌い始めた。

「――響きの風よ、力を重ね、流れを制御せよ!」

優しい旋律が風を包み込み、暴嵐獣の咆哮が少しだけ和らいだ。

「成功した……でも、もっと強くしなきゃ」



リクがセリアに駆け寄ってきた。

「おい、セリア! さっきの歌、風が弱まってたぞ!」

「うん、共鳴で風の流れを整えたの。でも、まだ力が足りない」

「だったら、もっとみんなと合わせたらどうだ? お前一人じゃなく、他の歌詠士も一緒に!」

「そうか……共鳴を共有すれば、もっと力が増すかもしれない!」


セリアはアイリスに向かって叫んだ。

「アイリス隊長! 共鳴支援歌を合わせて歌ってください!」

アイリスが驚きながらも理解し、頷く。

「分かったわ! 私も共鳴に合わせる!」

二人は向かい合い、同時に歌い始めた。

「――響きの風よ、音を重ね、力を調和させよ!」

二人の歌が共鳴し合い、風の流れが徐々に和らいでいく。

その瞬間、レオンが叫んだ。

「今だ! 一斉攻撃をかけろ!」

剣士たちが突撃し、レオンが聖剣を振りかざす。

「光の剣閃!」

強烈な光の一撃が暴嵐獣の胸を貫き、巨大な体が崩れ落ちた。



戦闘が終わり、セリアとアイリスは息を整えながら微笑んだ。

「共鳴を合わせることで、力が倍増したわね」

「はい。みんなと力を合わせれば、もっと強くなれるんですね」

リクが駆け寄ってきた。

「お前たち、すげえじゃねえか! あんなでかい魔物を倒すなんてさ!」

「ありがとう、リク。リクがヒントをくれたおかげだよ」

「へへ、まあな!」


レオンが歩み寄り、セリアの肩を叩いた。

「よくやった、セリア。共鳴を活かして仲間と繋がった歌だ。素晴らしい発想だ」

「ありがとうございます。でも、まだもっと工夫できそうです」

「その向上心が、君の強さだ」



その夜、セリアは訓練場の片隅で一人歌を口ずさんでいた。

(共鳴を繋ぐ歌……もっと改良すれば、さらに力を引き出せるはず)

ふと、遠くからアイリスが声をかけた。

「セリア、もう夜よ。あまり無理しないで」

「すみません、つい考え込んでしまって……」

「あなたの歌がみんなを繋いでいる。それを忘れないで」

「はい、ありがとうございます」


セリアは微笑み、再び歌詞を書き留めた。

(仲間の心を繋ぐ歌……これからもこの歌で支えたい)

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