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29.歌が裁く響きの共振 

朝日が昇る中、神詠騎士団の訓練場には再び活気が戻っていた。

セリアは早朝から歌の練習を続け、新たに編み出した「共鳴支援歌」の精度を高めようとしていた。

(共鳴の力を使って、仲間の動きを調和させる……うまくできるかな)


「――響きの風よ、音を重ね、共に進め!」

セリアが歌うと、心地よい旋律が訓練場に広がる。

その瞬間、周囲にいた剣士たちが驚いた顔をした。

「なんだか、体が軽くなった気がする!」

「動きやすい……これってセリアの歌か?」

セリアは歌唱を続けながら、仲間たちの様子を観察した。

(うまく共鳴が働いてる……みんなの動きが自然に合わさっている)


訓練を見守っていたレオンが感心したように頷いた。

「素晴らしい歌だ。仲間の動きを支える支援として、十分に機能している」

アイリスも満足そうに微笑む。

「力の方向性を一つにまとめて、無駄な動きを抑えているのね。共鳴を支援に使う発想は斬新だわ」

「ありがとうございます。まだ調整が必要ですが、少しずつ掴めてきた気がします」

セリアの胸には、仲間たちを支えたいという強い意志が宿っていた。



訓練が一段落し、セリアが水分補給をしていると、リクが駆け寄ってきた。

「おーい、セリア! さっきの歌、すげえじゃん!」

「ありがとう、リク。共鳴の力を支援に使えないかと思って試してみたの」

「おかげで動きやすくなったし、剣が軽く感じたぞ!」

「それなら良かった……もっと安定させれば、実戦でも使えそう」

リクが親指を立てて笑う。

「やっぱりお前はすげえよ! もっと自信持てって!」

「うん、ありがとう」



その日の昼、団長室から緊急招集の指示が出た。

レオン、アイリス、セリアが呼ばれ、団長が厳しい表情で話し始めた。

「先ほど報告があった。昨日の異端者が牢から逃げ出した」

「逃げた……ですか?」

「どうやら内部の者が手引きをした可能性がある」

レオンが険しい顔で言う。

「内部に協力者がいるということか……」

「その可能性が高い。しかも、異端者たちは再び王都内で活動を活発化させている」

アイリスが眉をひそめた。

「異端者が再度集結すれば、王都が危険にさらされます」

団長は重々しくうなずき、レオンに指示を出した。

「レオン、騎士団の中から不審な動きがないか、徹底的に洗い出せ。セリア、アイリスも協力してくれ」

「承知しました」

「はい」



その後、レオンは隊員たちを集め、状況確認を行った。

「昨日の異端者が逃げ出した。内部に協力者がいる可能性があるため、不審な行動や情報があればすぐに報告しろ」

隊員たちは緊張感を持ってうなずいたが、ざわつきが広がっていた。

「内部に裏切り者がいるってことか?」

「まさか、仲間が異端者側に……」

「いや、そんなはずないだろ」


リクがセリアに小声で話しかけた。

「おい、これってちょっとヤバくないか?」

「うん……もし内部からの協力があるなら、騎士団自体が危険かもしれない」

「でも、誰がそんなことを……」

セリアも頭を抱えたが、心のどこかで引っかかるものを感じていた。

(異端者たちが言っていた“解放”……それに共感する者がいるということ?)



その夜、セリアは自室で一人考え込んでいた。

(私の歌が異端の力だと疑われているけど、私は守るために使いたいだけ……)

不安が胸を締め付けるが、リクの言葉を思い出し、顔を上げた。

(私が迷っていたら、力が暴走する。私は仲間を守りたい、その気持ちを信じよう)


ふと、窓を開けて外の空気を吸い込み、静かに歌を口ずさむ。

「――響きの風よ、共に進め、心を重ねて強くなれ……」

穏やかな旋律が夜の空気に溶け込んでいく。

(共鳴を使って、仲間の力を支えられるように……私の歌が誰かを守るためにあるなら)


その時、ドアがノックされ、アイリスが入ってきた。

「セリア、少しいいかしら?」

「はい、どうぞ」

「実は、隊員の中で“解放”を研究している者がいるという噂があるの」

「えっ?」

「どうやら、異端者の考えに共鳴した者がいるらしいわ。レオンが調査を進めているけど、まだ確証はない」

「内部に異端者の協力者が……?」

「もしそれが本当なら、私たちも警戒が必要ね」

セリアは不安を押し隠しながら、強くうなずいた。

「はい、私も気をつけます」



翌朝、訓練場にはいつものように隊員たちが集まっていたが、どこかぎこちない空気が流れていた。

(誰が裏切り者なのか……仲間の中にいるというのが信じられない)

セリアは共鳴支援歌をもう一度確認し、強く決意した。

(私はこの歌で仲間を支える。それが私の信念だから)

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