表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌が裁くこの世界で  作者: みずきち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/97

23.歌が裁く新たな風

神詠騎士団の訓練場には、朝日が差し込み、清々しい空気が漂っている。

セリアは歌唱杖を握りしめ、呼吸を整えた。

(前世の記憶……音波や共鳴の考え方が、歌の制御に使えるなんて……)

黒狼獣との戦いで、自分が無意識のうちに音響工学の知識を活かしていたことに、少しだけ驚きと戸惑いがあった。


「セリア、準備はできているか?」

レオン副団長が声をかける。

「はい、副団長。よろしくお願いします」

「今日も実戦形式で制御訓練を行う。動きながらの制御が課題だ」

「了解しました!」



模擬戦が始まり、レオンが剣を構え、光の斬撃を放ってくる。

「――守護の風よ、光を包み、力を和らげよ!」

セリアの歌がバリアを張り、光の斬撃を受け止めた。

「いいぞ、そのまま維持しろ」

レオンがさらに踏み込み、強化した斬撃を繰り出す。

(今の光の振動数を合わせて……)

セリアは歌のトーンを少し下げ、バリアを強化しつつ、衝撃を吸収するように調整した。

「成功……!」

「力が安定してきているな。即座に対応できるようになってきた」


訓練を見守っていたアイリスも納得した表情を見せる。

「以前のような暴走がほとんど見られなくなった。制御の感覚が身についたようね」

「はい。歌の響き方を意識すると、安定させやすいみたいです」

(音波を重ねる感覚を持てば、干渉や共鳴が抑えられる……これが私のやり方かもしれない)



訓練を終え、休憩を取っていると、リクが駆け寄ってきた。

「セリア、今日も絶好調じゃん!」

「ありがとう、リク。だいぶ安定してきたみたい」

「さっき見てたけど、レオン副団長の斬撃をあそこまで抑え込むなんて、さすがだよ」

「でも、まだ完璧じゃないから、もっと練習しないと」

リクが笑いながら肩を叩く。

「お前なら大丈夫さ。俺ももっと鍛えて、お前を守れるように頑張る!」



昼食後、訓練場から戻る途中、騎士団本部前がざわついているのを見つけた。

「何かあったのかな……?」

「セリア、リク、こっちだ」

アイリスが手招きして呼ぶ。

「どうしたんですか?」

「新たな異端者が捕まったらしいわ。街で騒ぎを起こしていたらしい」

「また異端者……?」

セリアは胸騒ぎを感じた。


広場には拘束された若い男が立たされていた。

「俺たちは真実を求めているだけだ! アリアの加護なんて偽りだ!」

男の叫びに、周囲の隊員たちが怒りを露わにする。

「黙れ! 神の教えを否定する異端者が!」

「異端思想を広めるな!」


セリアはその男の声にどこか既視感を覚えた。

(この人、前にも会ったことがある……?)

その時、男がセリアを見つけて叫んだ。

「あんた……あの光の歌詠士か? もしかして、解放を手に入れたのか?」

「解放……?」

男の問いに、周囲がざわつく。


レオンが前に出て厳しく問い詰める。

「解放とは何だ?」

「知らないのか? 歌の力を枷から解き放ち、本来の力を発現させる方法さ」

「そんなものがあるはずがない」

「いや、俺は見たんだ。あの女の歌が暴走しながらも黒狼獣を吹き飛ばした瞬間をな!」

男の言葉に、隊員たちがセリアを警戒する目で見る。



その後、男は地下牢へ連行され、セリアたちは本部に戻った。

団長が険しい表情で問いかける。

「セリア、黒狼獣との戦闘中に何か異常はなかったか?」

「いえ……ただ、力を抑えようと工夫しただけです」

アイリスがフォローに入る。

「私も見ていましたが、確かに暴走ではなく、制御された力でした」

団長はしばらく考え込んだが、やがてため息をついた。

「解放という言葉が気になる。異端者たちがそれを唱えることで、騎士団内部に不安が広がりかねない」

「確かに……もしそれがセリアの力と関連していると誤解されれば、再び問題が起きるかもしれません」

レオンが深刻そうに言うと、セリアは不安げに口を開いた。

「私……また異端者として見られるのでしょうか?」

団長はきっぱりと否定した。

「違う。君は騎士団の一員だ。力が異常であろうと、制御するために努力している。それが事実だ」

その言葉に、セリアは少しだけ胸を撫で下ろした。



その夜、セリアはリクと共に中庭で夜空を眺めていた。

「異端者の話、ちょっと怖かったな」

「うん……でも、私の歌が異端だと言われても、私は信じたい」

リクが笑顔で頷く。

「そうだよな。お前の歌があったから、みんな助かったんだ」

「ありがとう、リク。私、もっと頑張る」

「その意気だ! 俺もお前の歌を支えられるように強くなる!」


(私は、前世の記憶があるからこそ、この力を使いこなせるかもしれない。音羽静としての知識をもっと活かして、私の歌を確立させたい)

セリアは新たな決意を胸に、夜空を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ