表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/102

94.知らぬはマリーばかりなり ***SIDEシリル

 マリーには聞かせられない。サルセド王国に関する処罰を、義父上殿と話した。眉間に皺が寄り、少しばかり厳しい表情になる。


「もう民の反乱が起きたのですか」


「他国に出稼ぎに出た者から、今回の騒動が耳に入ったらしい。支援を求めるため、周辺国の親戚を頼った者達も援助を拒んだ。最低限の身内への支援しかできないと言われ、状況を知ったらしい」


 義父上殿の話に、ふんと鼻を鳴らした。行儀は悪いが、義父上殿は気にした様子なく口角を持ち上げる。この父親がいて、よくマリーがここまで純粋に育ったな。そういえば義兄上殿も、意外と腹黒いタイプだった。こっそり僕に釘を刺したのは、今回の主役である義姉上殿だ。


 一族の中でも、マリーだけが特別らしい。考え事をしながら着替え、少し待つが……なかなか現れない。気になって隣の部屋を覗いたら、腰を絞るコルセットを持ち込んで格闘中だった。


 本人は太ったと嘆くが、元が細すぎる。あれでは折れてしまうと常々心配していたから、これ以上無理をさせないためにドレスを変更した。義姉上の意見も聞いて、細く見えるよう仕上げる。これなら問題ないと思って渡したのに、まさか腰を絞っていたとは。


 通りで着替え時間が長いと思った。乱入して正解だな。マリーは「この服、すごく楽だわ」と喜んでいる。余計なことをしたと怒るタイプではないが、正直、反応が心配だった。くるりと鏡の前で回り、色がお揃いだと喜んでいる。


 ほっとしながら腕を差し出し、もう行こうと促した。侍女ラーラは心得た様子で、首飾りを僕に渡す。


「動かないで、マリー」


 大人しく止まったマリーは、なぜか目を閉じてしまう。付け入る隙がありすぎて、手が出しにくいな。身長が急に伸びて、今のように首飾りをつけることも出来るようになった。成長期というが、関節が痛いのは少しつらい。マリーと釣り合うためなら、この程度の痛みは我慢できるか。


「出来たよ」


 首飾りを留めて、ついでに頬にキスをする。それから声を掛けたら……真っ赤になっていた。かなり意識してくれている。そう気づいたら、僕まで赤くなった。惚れた女性が僕を好きで意識してくれたんだ、照れるのは仕方ない。僕の性癖込みで受け入れるマリーは、命以上に大切な存在となった。


「……シリル様、好きです」


「先を越されちゃったな、僕も大好きだよ」


 もう一度キスしたいけれど、宴に遅れるか。ノックの音がして、護衛のアーサー達に促される。早くしろ、か? 遅れるぞ、かもしれない。苦笑いして、マリーと廊下に出た。ガイスト王国の侍従が案内のために到着しており、彼の後ろを歩いて会場へ向かった。


 王族同士の結婚となれば、一番立派な広間で豪華な料理が並ぶ。美味しそうと呟き目で追うマリーへ「挨拶が終わったらね」と釘を刺した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ