表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/108

74.激しいキスで悶絶

 寝室で、シリル様の上に馬乗りになる。逃がさないと強い意志を込めて両手で囲ったら、嬉しそうな笑顔が返ってきた。うっ、眩しい。じゃなくて、一般的には怒る場面じゃないかしら?


「顔に出ているよ、マリー。ここは怒る場面ではなく、喜ぶ場面だ」


「どうして?」


「惚れた妻がベッドで、僕の上に跨っている。捲れたスカートから覗く足も綺麗だし……」


 にっこり笑うシリル様は、顔の両側に手をついた私の足を撫でた。ぞくっとしちゃう。びっくりした! 


「毛を逆立てる猫みたいだね」


 可愛いと笑うシリル様の余裕に、ちょっと腹が立つわ。でもはしたない姿なのは事実で、下りようかと思ったら、腰に腕を回して阻止された。


「それで、何を聞きたいの?」


 シリル様って、本当は人生三回目くらいなの? いつも私の考えを読むし、大人っぽい所作もそう。年上な私より、ずっと物知りで人の機微を読むの。全然敵わないわ。


「捕まった人達はどうなったのかしら、と思って」


「そうだな、首を刎ねる案も出たんだけど……あちらに口実を与えるのも癪だから、()()ことにしたよ」


 いま、「帰す」ではなく「返す」を使った。者として扱わず、物と認識しているの? 失礼な気もするけれど、そもそも向こうの振る舞いが無礼すぎた。これでいいのかも。帰れば、シリル様にちょっかいも出せないし、もう国を出られないはずよ。


 あれだけの失態をして、友好を結びに来た国に嫌われたんだもの。国王陛下がまともなら、二度と王女を外へ出さない。


「納得した?」


「ええ。二度と会わない人だもの」


 シリル様の上からどこうとして、突っ張った腕を緩める。横へ転がろうとした私は、自分の裾を踏んでいたみたい。膝を中心に引っ張られ、がくりと体勢が崩れた。


「え?」


「あっ!」


 危ないと思ったタイミングで、シリル様の顔が近づく。転びそうになった私を支えるシリル様と、裾を踏んで躓いた私……唇が触れた。甘いキスではなく、その直後に二人で叫ぶ。


「いたっ」


「うっ!!」


 歯ががちん、と言ったわよ? すごい音と痛みに口を押えて転がる。勢いあまって、ベッドから転がり落ちた。その音に、扉の前を守る騎士がノックする。


「ぶ、じだ……もんだい、ない」


 返事がなければ踏み込むのが騎士の仕事よ。なんとか返事をしたシリル様だけど、手は口元を押さえていた。それは私も同じで……ある程度痛みが治まった頃、おかしくなって笑う。互いの傷を互いに確認して、歯が折れていないことに安心した。


「数日は痛いと思うよ」


「仕方ないわ。ごめんなさいね、シリル様」


「僕のほうこそ、支え損ねた。ごめんね、マリー」


 謝りあって、ベッドで並ぶ。今日は顔が痛いから上を向いた。お休みの挨拶をして目を閉じる。顔の傷って意外と痛いわ。口の中が切れたから、血の味がするし……。痛いのに、思い出すと笑いそう。手を繋いだシリル様も時々肩を震わせるから、同じ気持ちみたいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ