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【完結】年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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60.国によって異なる文化

 ディーお義姉様の扇は、合図だったの。アーサーがこっそり教えてくれた。まだ帰らなくていい、と。


「扇にそんな意味があったなんて」


「振り方で数種類を伝えますが、他国の方がいるときだけですな」


 それ以外の時は、直接口頭で伝えればいい。他国の人に気づかれぬよう、自国の貴族にだけ伝えるのね。この国に嫁いだのだし、私も覚えなくてはいけないわ。公爵夫人として、知らずに行動したらシリル様に恥をかかせてしまうもの。


「義姉上に教わるといいよ。丁寧に教えてくれると思うし」


 専門の教師もいるけれど、シリル様は嫌だと言った。他国の王女だった私相手に上から説明する姿は、不敬に当たるんですって。我が国では教育の際は、そういった不敬は適用されない。わりと新しいソールズベリー王国は、ルールもあれこれ違っていた。


 覚えた内容は、後で日記帳に記しておきましょう。一応持ってきたけれど、書いても数日で面倒になっちゃうの。だから白紙を入れてやり直す。また止まって、の繰り返しだった。最近は覚え書きとして使っているわ。


「落ち着いたかい? アンネマリー」


「はい、お兄様」


 公式では「アンネマリー」と呼称する。私的な場では「マリー」だけ。今はアーサーやダレルがいるから? お兄様と話していた他国の男性は、他の人と会話していた。どうやら一段落したみたい。


「お兄様、先ほどはありがとうございました」


「家族として当然だ。夫であるアル殿が、きちんと守ってくれるようで安心したよ」


 髪飾りを避けて、するりと髪に触れる。でもすぐに離れた。シリル様が睨んでいるわ。ふふっと笑って手を伸ばし、彼の指先を掴む。表情が柔らかくなって、機嫌が直ったみたい。


「それにしても……あれは酷かったな。外交や礼儀作法以前に、躾がされていない」


 お兄様の辛辣な言葉に、誰も反論しなかった。だって事実なんですもの。


 そこへ、静かな音楽が再開する。耳に優しい曲から始まり、人々のざわめきが戻ってきた。


「義姉上の扇を見てご覧。あの大きな振り方は、普段通りでいいと伝えている」


 先ほどの振り方と全然違う。さっきのは現状維持で、今度は今まで通りに戻ってよし……このくらいなら覚えられるわ。


「兄上達にご挨拶しよう」


「はい。お兄様はまたあとで」


 笑顔で見送るお兄様に一礼し、スカートの端を摘まむ。ディーお義姉様が、今回の騒動を詫びた。すぐ動けなかったことね? 皆、過保護なくらい守ってくれる。私がお礼を言うべきだと伝えた。


「ところで、皆を留めた理由は何ですか?」


「決まっているでしょう? マリーのお披露目ですもの。使節団なんておまけよ」


 え? サルセド王国の使節団の歓迎会だと思っていましたわ。

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