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【完結】年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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52.お兄様とシリル様の初対面

 王太子であるクリストフお兄様は、我が王家で一番豪華な馬車でやってきた。馬が六頭で引くタイプよ。他国の手前、お父様から借りたのね。


「お久しぶりです。お兄様」


「マリー、元気そうでよかった。あなたがソールズベリー王国の王弟殿下ですか? 初めてお目にかかります。アンネマリーの兄、クリストフ・ヴァイセンブルクです」


 穏やかな話し方は、いつものお兄様だった。旅の疲れはあまりなさそう。中で執務をしていたのか、側近のシリングス卿が書類を運び出している。旅に持ってくるのだから、雑務に追われているのね。


「義兄上なのですから、気楽になさってください。マリーの夫アリスターです。どうぞ、気軽にアルとお呼びください」


「では、アル殿と呼ばせていただきます。私のことはクリスと」


 固い握手をしているけれど、力を入れすぎではないかしら? 真っ赤になっているわ。近づいてシリル様と腕を絡める。得意げな顔をするシリル様の機嫌が直った。お兄様は苦笑いして、解いた手をさすっている。


「一緒にお茶にしましょう。まずはお部屋に案内しますね」


 同行したラーラとシリングス卿が、何やら会話を始めた。お兄様は私の斜め後ろに立って、髪飾りを眺めている。


「珍しい宝石だな」


「こちらから輸出しようと思っているのが、これよ。先日連絡したでしょう?」


「ああ、ラピスラズリだったか。これがそうなんだね」


 この国では大量に産出しても、祖国には入ってこない。その理由が需要があると思わなかったから。ソールズベリー王国にしたら、高価でないうえ希少価値もない。磨いて輸出しても、採算がとれないと考えた。


 でも、ヴァイセンブルク王国から見れば、見たことのない宝石よ。最初のうちは、高価で希少価値が高い。大量に入って貴族が買わなくなったら、民の装飾品として需要があった。実は青色は祖国で人気が高いの。海の色として珍重されてきた。


 我が国を護る神様も、海や風に所縁のある方々ばかりよ。青はその意味でも大切にされる。きっと人気が出るわ。


 そんな雑談をしながら客間を案内し、一時間後にお茶の時間を設定した。王宮の侍従達が、お兄様の荷物を運び込む。シリングス卿もすぐ隣の部屋を割り当てられた。宰相様のご子息なのよ。


「お兄様、またあとで」


「わかった。楽しみにしているよ」


 旅装を解いて寛ぐには短いけれど、お兄様は微笑んで頷いた。シリル様が無言になっているわね。どうしたのかしら?


「マリー、帰らないよね?」


「……シリル様の隣が帰る場所ですわ」


 きょとんとして首を傾げる。すぐに気づいて、望む答えを口にした。お兄様と仲良く話していたから、不安になったのかも。執着が強いって、こういう部分で発揮されるみたい。


「何度でも言います、私はシリル様の妻ですもの」


「うん、ありがとう」


 ふふっ、意外な一面を知ってしまったわ。なんだか嬉しい。

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