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50.半年で大きく変わっていく

 この国に嫁いで、もう半年経つ。いろいろ心配していたのが嘘のように、すべてが順調だった。賠償の対象として嫁いだのに、その問題自体が解決して母国によい方向へ働いた。お陰で、両親もほっとしている。


 私はソベリ語の訛りを、二ヶ月前の夜会で披露してしまった。つい、いつもの癖でアーサー達と話したのよ。あっという間に驚きが広がり、失敗したと思ったら……なぜか好意的に受け取られた。というのも、もう話せる人が減ってきているらしい。元は方言が古語であり、原語だと教わった。


 職業がソベリ語の源流を調べる学者の伯爵が、すごい勢いで食いついてきたの。すぐにシリル様に撃退されたけれど、諦めないところがすごいわ。アーサーやダレルも話せると知ったら、感涙していた。辺境伯家は滅多に首都へ出てこないから、知らなかったんですって。


 この件については、クリスお義兄様やディーお義姉様も初耳で。皆で驚いて、顔を見合わせて笑った。国境近くの辺境伯領には、まだ話せる人が大勢いるそうよ。


 それにしても、意外な事実だったわ。訛りを笑われると身構えたのに、アーサー達と話す言語を学者達が書き取っていくんだもの。これを元に古語を復元するとか。いろいろ混じっているから、分解から始めるみたい。ふと気づいて、母国にいるソベリ語の教師、三人に帰ってきてくれるよう頼んだ。


 彼らの到着とほぼ同時期、公爵邸が完成した。シリル様は、すぐにでも王宮から引っ越したいと言う。絨毯や壁紙などの内装は、職人のお任せで揃えてもらった。この辺は、たくさんお屋敷を建ててきた親方さんの腕と感性を優先よ。私の選んだ組み合わせが、この国ではおかしくても、誰も指摘してくれないだろうし。


 家具や調度品は、公爵邸の執事に任せた。新しく任命されたのは、なんと! アーサーの次男よ。家を継ぐ必要もないし、気楽だからと遊んでいたところを、アーサーに捕獲された。腕も立つから、問題ないと推薦されて決まる。元辺境伯閣下の推薦で、国王陛下と王弟殿下が許可すれば、誰も反対できないわ。


 住む家は、どんどん仕上がっていく。なぜか、このタイミングで荷物が増え始めた。


「シリル様、贈り物はとても嬉しいのですが……新しいお屋敷に引っ越してからにしませんか?」


「嫌だ。この量の荷物を運び出したら、貴族の間で変な噂になる」


 お金持ちの国ならでは、の理由だった。妻を愛しているなら毎日のように贈り物をする。使わなくても妻は大切に保管するから、引っ越し荷物は膨大なのが普通。もし私が手ぶらに近い状態で引っ越せば、シリル様は政略結婚で妻を愛しておらず、蔑ろにしていると噂になるそうよ。


 貴族社会の噂は怖いから、大人しく頂いておくわ。

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