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【完結】年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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48.すごく心配されていたわ

 買ったパンを届けに行くつもりだったのに、ディーお義姉様が待っていた。もしかして、シリル様の視察に何か? 特別に頼んだこととかあったのかも。そう思っていたら、抱きつかれた。


「無事でよかったわ、マリー」


「僕が一緒です。それにアーサーとダレルも同行しました」


「しっかり者のラーラも一緒だから、とても楽しく過ごしましたわ」


 さらりと褒めながら付け加える。先に連絡があったのかしら? 変な賊に絡まれた、と衛兵が教えちゃったのかも。不安だった様子のディーお義姉様と、明日のお茶会を約束した。パンは夕食で出してくれるみたい。


 王宮の侍女に渡して任せる。着替えに向かった私は、ラピスラズリの髪飾りを手に取って眺めた。すごく神秘的な宝石だわ。高価でない理由がわからなくて、首を傾げる。ラーラも初めて見たようで、一緒に眺めた。宝石箱にしまおうと開けたら、まさかの事態に!


 見覚えのある髪飾りが、宝石箱で光っている。これ、さっきのお店で奥に運ばれたサファイアじゃない? 触れるのも怖いわ。大粒で透明度が高くて、周囲にダイアモンドが(ちりば)められている。宝石箱をそっと閉じた。小心者だから、ドキドキしちゃう。


 あれは幻想、気の迷い。自分に言い聞かせて開いたら、やっぱりサファイアだった。


「っ、買っちゃったのね」


「そのようです」


 購入したから奥へ運ばれ、丁寧に梱包されて王宮に届いた。そうよね、買わなかった宝石は店頭に戻されるもの。なぜ気づかなかったのか。いえ、はっきり「要らない」と言うべきだった?


「夫から妻への贈り物です。裕福なソールズベリー王国の金銭感覚に、アンネマリー様が慣れたほうが早いかと……」


 現実を告げられ、そうよねと肩を落とした。慣れる日が来るのかしら。一生無理な気がするわ。いろいろ葛藤したものの、お礼を言わないわけにいかない。


「この髪飾りに合わせて、ドレスを選んでくれる?」


 夕食は晩餐会形式で、クリスお義兄様達と一緒に頂く。家族四人での食事だけれど、ある程度着飾って、この髪飾りが似合う形を整えないと!


「承知いたしました! すぐに準備いたします」


 トルソーにかかったドレスの林へ入っていくラーラを見送り、私は宝石箱を眺めた。こんなに大粒の宝石、いくらするの? シリル様がぽんと買ったこともだけれど、あの店は貴族だけでなく平民も来る。そこへ高価な大粒宝石を置いて……売れる、のよね?


 ヴァイセンブルク王国で貧しいと感じた覚えはない。毎日の食事や衣服に困らなかったし、裕福だと思っていた。隣国との格差に驚くより、祖国を豊かにする方法を考えましょう。

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