表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/108

42.迷子は動かないのが鉄則

 困ったわね。街の中心にある噴水のそばで座り込んだ。逸れてしまったわ。


 街を歩く人達をぼんやりと眺める。以前に聞いた話だけれど、迷子になったら動かないのが鉄則らしい。私の場合、この広場ね。ここでお迎えを待つのが得策だわ。人目があるから、いきなり裏に引き摺り込まれる心配がないもの。


 お金はラーラが持っているから、飲み物も買えないし。次から少しだけでもポケットに入れたいとお願いしてみよう。いえ、そもそも……こんな騒動を起こしたら、次はないのかも。一人で街並みを眺めていると、悪い考えばかりが浮かんできた。


 シリル様、怒ってないかしら。視察の仕事で街に出たのに、私を探して時間が過ぎてしまうわ。本当に申し訳ない。


「お嬢さん」


 声をかけられ、顔を上げた私は首を傾げた。見るからに貴族っぽい服装だわ。平民の格好をした私に話しかけるなんて、ろくな奴じゃない。もしかして平民を手籠にするという、変態? 以前にラーラから聞いた、夜の雑談を思い出す。


 確か貞操を奪って、ポイ捨てするのよ。侍女達の間で噂になっていると聞いた。子爵や男爵の子で、家を継げない子は王宮に勤めることが多いの。侍女だったり侍従や執事だったり、騎士なんかもそうね。文官で身を立てる人もいるわ。


 彼らの噂は、市井の写し鏡よ。実際に起きた出来事が元になっているから、お兄様も治世や取り締まりの参考にしていた。


 嫌な感じがする。逃げ場を探すも、この男性の連れなのか。三人ほどの貴族らしき男性が、半円になって私を囲む。貴族が相手となれば、平民に助けを求めるのはダメね。彼らが罰せられる可能性もあった。


 じりじりと噴水のほうへ下がる私に、警戒されていると気付いたのかも。手を伸ばされる。跳ね除けようとしたその時、シリル様の声が聞こえた。


「マリー、よかった! ここにいてくれたんだね」


 駆け寄るシリル様は、ラーラや護衛と一緒ではないの? 一人じゃない! 慌てて彼の手を掴み、私の後ろへ隠した。年上が、年下を庇うのは義務よ。お兄様やお姉様がしてくださったように、私がシリル様を守らなくちゃ。


「お姫さん、お前が一緒に来るなら……その子は見逃そう」


 平民にしか見えない、見事なシリル様の変装はバレていない。ここで王弟殿下だと知られたら、大騒ぎになっちゃう。でもついて行く気はないし……アーサー達はどこなの?


 苛立っているのか、男達の一人が距離を詰めた。その瞬間、すり抜けたシリル様が、男に足を引っ掛ける。派手に転んだ男の様子に、仲間が色めきたった。


「っ、てめぇ」


 振り上げた拳が、シリル様へ向かう。男から庇おうと、私がシリル様に覆い被さった。


「……もういいよ」


 ぼそっと呟いたシリル様の声に、「出番だ」「ヒヤヒヤしました」と聞き慣れた声が返る。噴水の水を蹴散らし、アーサーとダレルが間に滑り込んだ。どこに隠れていたの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ