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【完結】年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
本編

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39.どう呼ぶか迷うわ

 着任の挨拶をいただいて、呼び方を決めようと思ったの。だって、辺境伯の地位を息子さんや娘さんに譲ったと聞いたから。


『アーサーじぃじでどうじゃ』


『抜け駆けしよって! おらはダレルと呼び捨てがええど』


 二人して癖が強いわね。少し前まで、国境を守る一族の頂点に立っていたのでしょう? こんなに軽くていいのかしら。


『アーサーどん、ダレルどんは?』


「……普通に共通語で話せばいいだろ」


 隣で聞いていたシリル様が溜め息を吐いた。それから注意事項を伝える。


「ソベリ語は私室内のみ。外で誰かに聞かれるとまずい。マリーは、ソベリ語が話せない設定だからね」


「もうバレているのではありませんか?」


「いや、あのタイミングで音楽が流れていたから、ほとんどの人は聞こえていないよ」


 侍従や侍女からの聞き取りも踏まえた上で、やっぱり話せないことにするみたい。以前に仰っていた、諜報活動をするのかしら。


「諜報活動は任せて!」


「何の話ですかな?」


 首を傾げるアーサーに、事情を説明した。共通語なら、護衛は呼び捨てが一般的なの。あとで確認しておかないといけないわね。


「実はね……ソベリ語が話せないフリで、誰かが良からぬ相談をするかもしれないでしょう? その場合に聞いて知らせるのよ」


「王弟妃殿下には無理ですな」


「かなり厳しいと言わざるを得ません」


 二人がかりで否定された。ちゃんと聞かなかったフリができるわよ? そう伝えたら、素直すぎると返された。褒められているわけじゃなさそう。


「姫様はご本人が思っておられる以上に、顔に出ております」


「全部語っておられる」


 ぷっと噴き出したのは、シリル様だ。お腹を抱えて笑うのは、ちょっと失礼じゃないかしら?


「怒らないで。でも……そうだね、義姉上の話は一回忘れようか」


「それでいいなら構いませんわ!」


 ぷんと横を向いて腕を組んだ。しばらく許してあげません。態度で示すと、シリル様が眉尻を下げる。機嫌を取る言動が続き、アーサーやダレルも含めて三人が泣きついてきた。どうしようかしら。


「もういいです。怒っていませんわ」


 シリル様が俯いて、あまりに悲しそうなので折れた。澄まし顔のラーラが、後ろでお茶を淹れている。


「皆様、お茶をどうぞ」


 王侯貴族はお茶を好む。この部分は両国共通で良かったわ。ソールズベリー王国の方は、お茶に砂糖やジャムを足さないのね。そっとジャムを沈めたら、不思議そうな顔をしたあと……シリル様が真似をする。迷ってから、二人も続いた。


「……甘いね」


「ああ、甘いな」


「これは……甘い」


 おかしくなって笑ってしまった。二人とも、これからよろしくお願いしますね。

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