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33.さながら晩餐会のよう

 ソールズベリー王国の貴族は、陛下が臨席の場で騒動を起こさない。我がヴァイセンブルク王国も、好条件の同盟を結んだばかりで反発はなかった。夜会のために解放された大広間は、シャンデリアがとても美しい。明るくて煌びやかで、いい匂いがするわ。


「美味しそう……」


 一貴族夫人なら、そそくさと料理をもらって壁の花になればいい。でも今は無理だわ。主役の片割れだもの。


「マリー、何か食べたいのかい?」


「え、ええ。少し」


 本当はがっつり食べたい。着替えの時間が押して、軽食を食べる時間がなかったの。いつもなら夜会の前に、ある程度食べておくのだけれど。お腹が鳴らないよう、ぐっと力を込めて堪えた。


「侯爵、挨拶はまた後日。我が妃は逃げないから安心してくれ」


 微妙なセリフが入っていたけれど、ソールズベリーの侯爵は一礼して下がった。お名前がわからないので、あとで貴族名鑑を暗記しなくては。貴族名鑑は他国に輸出しないから、顔と名前が一致しないのよ。我が国ももちろん、他国に出していない。


 他国の貴賓は、夜会などで絵師が似顔絵を描いて、こっそり纏めるのが一般的だった。そのため普段表舞台に立たない貴族は、名前も家も顔も、まったく不明のまま。


 そういえば……処罰されるクラッシャー? に似た名前の侯爵家はどうなったのかしら。流石にまだ動いていないわよね。


「王弟殿下、少し宜しいですかな?」


「後にしてくれ。美しい妃に、我が国の料理を自慢したくてな」


 遠回しに「邪魔するな」と威嚇するシリル様に、声をかけた初老の男性は素直に引き下がる。ほぼまっすぐに広間を突っ切って、料理が並ぶ壁際の一角に到着した。


「一通り味をみるのはどうかな。好きなものがあれば教えてくれ」


「はい」


 微笑む間に、話を聞いた侍従が手際よく料理を皿に載せる。結構な量が用意され、さすがにテーブルが必要ですねと笑ったら、運ばれてきた。怖いくらい準備がいいわ。当然、椅子もついてきた。


 夜会で座ってがっつり食事する人って、見たことないわ。壁際に多少、椅子が用意されるくらいで……テーブルもないのが普通。私達が円卓を囲んでも、誰も何も言えなかった。王弟の地位と権力って凄い。


「ここにいたのね、私達の椅子も用意して頂戴」


 え? ディーお義姉様だけでなく、クリスお義兄様も?! だったら、晩餐会の形にすればよかったのでは。予想外の展開に驚くけれど、用意された椅子をスカートの中に押し込んだ。


 女性用は二つとも背もたれがないの、よく分かってて助かるわ。二人ともプリンセスラインのスカートだから。


「いっぱい食べ……うーん、食べにくそうだね。僕に任せて」


 皿とフォークを手に近付くシリル様。まさか、あーんとか……しないですよね!

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