表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/108

25.新婚ですもの

 赤い顔の理由を根掘り葉掘り聞かれて、汗びっしょりで朝から入浴した話も加わり、ディーお義姉様も赤くなった。金髪のディーお義姉様は水色のドレスで、色は被らなかったわ。ほっとする。


「いやだぁ、新婚だものね」


 新婚だと汗だくで目覚めるの? ああ、なるほど。抱き合って眠るから、この暑い季節は大変という意味ね。


「新婚ですもの」


 ほほほ、と笑って話を合わせた。そこで思い出す。昨夜、シリル様から聞いたばかりの案件よ。きっちり問い詰めないと!


「ディーお義姉様、私のソベリ語についてですが……なぜ、方言を指摘してくれなかったのですか。あれでは私がうっかり話して、恥をかいてしまいます」


「だって、可愛いんですもの」


 にっこり笑って返すディーお義姉様に、悪気はないのでしょう。でもヴァイセンブルク王国の王女である以上、きちんと話せないと教えてくれたほうがいい。そう伝えたら、申し訳なさそうに謝ってくれました。本当に悪気はなかったのね。


「方言が可愛いのですか?」


「えっと……どちらかといえば、マリーが口にするから可愛いのよ」


 ディーお義姉様の話を纏めると、完璧な淑女の姿と声でおっさん言葉が出てくるのが、なんとも萌えると。萌えとは何かしら。我が国にはなかった概念だわ。


「昨夜はアルと仲良く話せた?」


「はい、いたって穏やかに。私を好きと言ってくださいました」


 自分からも言ったけれど、そこは教えなくていいわよね。せっかくなので、クリスお義兄様のことも聞いてしまいましょう。


「クリスお義兄様とは、どうですの? 恋愛だったのですか」


「……実はね、私が一方的に好きだと思っていたの。クリスも同じで、自分だけが私を好きなつもりでいて。お互いの気持ちを知るのは、結婚から一年も過ぎた頃だったわ」


 素敵! こういう恋愛のお話をしたかったの。聞いてもお姉様は照れて話してくれないし、お母様は真っ赤になって黙ってしまう。お父様なんて、聞こえないフリをなさったのよ? お兄様が多少教えてくれたけれど、全然熱量が足りなくて。


「そのドレス、私の色ね。すごく似合っているわ。黄色に緑の瞳、どちらも取り入れてくれて嬉しい」


「シリル様が選んでくださいました」


 言葉にされて、緑はディーお義姉様の色だったと思い至る。そんな気はなかった、と言わない方がいいわよね。喜んでくださっているんですもの。


「義妹ができて、本当に嬉しいわ。アルを見捨てないであげて。でも……どうしても無理なら、私に教えて頂戴。なんとかするわ」


「ご心配ありがとうございます」


 まだ大丈夫とも、無理とも言えない段階よ。でも言わない気がするの。私だけを見て、私だけを愛してくれる人がいる。顔は可愛くて綺麗だし、背はこれから伸びるわ。逞しくなって私を抱き上げる日が楽しみなの。


 素敵な政略結婚になって感謝……あら? 政略結婚の原因だった侯爵家のご子息、どうして生きていたのかしら。いえ、生きていてご家族は喜んだでしょうけれど、何があったのか気になる。


 聞いてもいいのか、迷う。その日は何も聞けず、お茶会は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
丸くおさまって?良かった マリーちゃんが受け入れられるなら、オッケー! 大人になったシリルが楽しみです(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ