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14.だって、お高いんでしょう?

「ディーお義姉様、その……さっきのガーネット、お高いんでしょう? もっと小さくても……」


 王妃様が「我が国の宝石を身につけて頂戴」と仰せなら、従います。ただ、お値段が怖い。最初の大粒は値札があったけれど、後で出てきたやや小粒は品質が良くて値札がなかったの。時価というやつかしら。相手や状況によって、お値段が変わると聞いたわ。


 商人がいなくなってから、恐る恐る進言してみる。シンプルながらも可愛い枠を選んだ。仕上げる前に、宝石の質をもう一度考慮してもらえないだろうか。私の不安を理解しないディーお義姉様は、こてりと首を傾げた。


「なぜ? 光る宝石は嫌いだったかしら。それとも緑が嫌? マリーの夕焼け色の髪や黄金の瞳に似合うと思ったのだけれど」


「いえ、その……光栄なのですが」


「我が国の特産品である緑のガーネットを、王弟の妻となった隣国の元王女が身につける。ほら、貴族が好印象を持ってくれるでしょう? それに、あまり見窄らしい物を贈ったら、クリスの面目もあるし」


「おく、る?」


 それって、頂き物。お祝いの品かしら。え? でも高額な宝石よ? 自国で産出すると言っても、お値段が激安ではないと思うし。


「次は家具選びだったわね。屋敷をまだ見ていないから、選びづらいと思うけれど」


 時間を確認したディーお義姉様に促され、部屋を移動する。家具なので、商談室へ運び込めないと聞いた。王宮の外にある倉庫へ数日かけて運ばれ、選んだら残りを持ち帰ってもらう。なんとも豪快なお買い物方法だわ。


 宝石の件は、後でシリル様に確認しましょう。頭がいっぱいで破裂しそうなの。考えを一時保留というか、問題の棚上げね。侍女を引き連れ、ぞろぞろと行列を作って進んだ。離宮の方角とは逆になる一角に、倉庫があった。


 普段から、使わない家具や道具をしまう場所なのね。中へ入ると、たくさんの家具や調度品、絵画が整理されていた。風通しの良い建物で、カビ臭さや澱んだ感じはない。


「この辺なの。好きなデザインはある?」


 猫脚の長椅子、高価そうな絨毯、機能的な白木のチェスト。目移りしてしまう。


「マリー、これはどうかな」


 シリル様に声をかけられ、奥にクリスお義兄様もいることに気づいた。国王陛下への挨拶として、正式な礼をしようとしたら止められた。


「やめてくれ、家族だからね」


 公式な場以外は、家族として接してほしい。クリスお義兄様がそれでいいなら、私に異論はありません。微笑んで了承したところ、シリル様が抱きついてきました。年齢差もですが、身長差もあるので……その、胸の辺りに顔が。


「アル、人前では避けるように」


「っ、はい」


 真っ赤な顔で照れる夫に、私も一緒に照れてしまった。可愛いわ、それに初々しくて。


「僕も一緒に選ぶよ。マリーはどれが好きかな。こっちの薔薇の彫刻が施された鏡台はどう?」


 照れを隠すように、シリル様に手を引かれ、家具の前に立つ。この彫刻、すごく繊細で美しいわ。でも普段使いにすると、気を使いそうね。

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