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009.ダンスではない踊りを楽しむ

 公爵領の領都は、発展し始めたばかり。まだまだお店の数は足りないし、質も高くない。けれど、周辺諸国の商人がこぞって出店してくれた。というのも、お父様やお母様の尽力が大きいの。


 引退してから各国を回って歩いているけれど、当然、古い血筋は歓迎される。王族との会合、各地の有力な貴族との食事会、と忙しくしていた。先日、執事の持つ日程表を確認したけれど、引退する前より忙しいくらいよ。


 街道を移動する間も、各地の貴族と顔合わせが詰め込まれているんだもの。そんなお父様とお母様が、ただ回っているだけのはずはなくて。ソールズベリー王国やガイスト王国の宣伝をしていた。他国の商人が挨拶に来た時に聞くまで、知らなかったの。


 てっきり観光がてら外遊していると思っていたわ。動ける間に、とにかく注目を集めるつもりみたいね。とても有難かった。次に遊びに来たときは、ユーディットやギルベルトと遊ぶ時間を増やしましょう。一緒に寝てもらうのも、親孝行になるかしらね。


「義父上達のお陰で、出店が増えたね」


「ええ、お祭りも賑やかでよかったわ」


 街がまだ発展しきっていないから、素朴な感じがする。賑やかで盛り上がっているけれど、押されて歩けないほどじゃないわ。逆にこのくらいのほうが助かるのよ。今はあまりお腹を圧迫したくないし、もし転んだら事件だもの。


 妊婦は転ぶな、走るな、絶対に腹を打つな。これは何度も言い聞かされてきたわ。転んだ時の受け身の練習が必要かと思ったほどよ? アーサーに相談したら、支えるからご心配なくと返されたので練習はやめた。シリルにも「何のために僕がいるのさ」と呆れられたわ。


 人々は出し物に盛り上がり、手を叩いて踊る。一緒にくるくると回った。舞踏会のような難しいステップじゃなくて、右足、左足と前に出しては戻すだけの踊りよ。手はお互いに組み合って、中には手を繋いで並ぶ子供の踊りもあった。


 いつの間にか輪になって、隣の知らない人と手を繋ぐ。大きな輪が広場に出来上がり、ユーディットやギルベルトも乳母と手を繋いで楽しそうだった。私は許可されなくて、シリルと向かい合ってくるくると踊る。よく見たら、アーサーが乳母と一緒に並んでいた。


 大きな輪に加わる人もいれば、恋人や夫婦で小さな輪になる人もいる。すごく楽しいわ。音楽を奏でるのは、ガイスト王国から来た演奏家集団だった。国を移動しながら定期的に演奏していると聞いて、収穫祭に招待した。


 新しい楽しみができたけれど、その頃はお腹が大きくなりそう。踊るのは無理でも、見たり聞いたりは出来る。踊り疲れたところで、演奏はゆったりした曲に変わった。双子の体力も限界でしょう。屋台で購入した料理を運んで、用意してもらったテーブルで頂く。


 ふふっ、そんなに頬張ったら詰まるわよ? 注意しようとしたら、ギルベルトが咳き込んで……慌てる前に乳母がすぽんと抜いた。指で? すごいわね。今後も頼むわ。

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