007.私達の子守唄が響く
シリルは子煩悩になると思ったのに、まさかの嫉妬ばかり。結婚して七年目に入っても、シリルは子供みたいに我が儘を私に伝えてくれる。それが嬉しかった。だって、飽きられていない証拠でしょ?
子供を産んで、私は二十八歳になった。あと半年で二十九歳だわ。まだ十七歳のシリルから見たら、おばさんじゃないかしら? そんな心配も、この嫉妬で吹き飛んでしまう。不安から、つい口に出したこともあるの。そうしたら押し倒されて、三日間も監禁されたわ。
いま、お腹にいる子はその時にできたんだと思う。私が二十九歳になる頃、生まれてくる予定だ。お誕生日が近くなりそう。お腹を蹴るには早い我が子に、歌を聞かせる。ベッドに座る私の視線の先には、双子が並んでいた。
やっぱり男の子と女の子だと、似ていても違いが一目瞭然だわ。顔立ちというか、雰囲気? 全然違うんだもの。しっかり者のギルベルトと、お転婆で自由気ままなユーディット。お昼寝の時間ですぐに寝付いたのはギルベルトで、ユーディットは眠くないと駄々を捏ねた。
絵本を読むのも、何かを教えるのも、必ず二人一緒に行ってきた。差を付けたら可哀想でしょう? 跡取り息子だから、とか。お姫様だから、とか。そういった概念に囚われないで育ってほしいの。女の子が剣術を習ったら、女騎士でカッコいいじゃない。男の子が刺繍やお料理が上手なら、お嫁さんは助かるわ。
シリルとそんな話をしたのは、双子が歩く頃だったわね。シリルも同意してくれたので、ユーディットは木登りを楽しむお転婆姫になった。ギルベルトは勉強が好きで、書棚の本を片っ端から読んでいるらしい。と言っても、まだ文字はほとんど読めない。眺めるだけね。
「姫様、冷えますぞ」
「アーサー、もう! 奥様と呼んで頂戴。姫様の肩書きは、ユーディットに譲ったんだから」
「申し訳ない、つい」
祖父のように双子を可愛がるアーサーは、今も現役で護衛をしている。ダレルは一度領地に呼び戻された。サルセド王国と国境を接しているから、難民騒動で忙しいと聞くわ。まだ数年は戻れなさそうと聞いて、アーサーは「死ぬまでに戻ってこい」と笑い飛ばした。
同じ歌を二回繰り返し、違う子守唄に変える。ベッドが軋んで、シリルが後ろから腕を回した。腰に触れる手が温かい。寄り掛かったら、背中も温かくて気持ちいいわ。高く低く、音を丁寧に辿って歌い終えたら……ユーディットも眠っていた。
歌いながら、静かに立ち上がる。私を支えるシリルの腕に甘えながら、双子が眠る子供部屋を出た。扉を閉めて、歌を止める。
「僕にも歌ってよ」
「そうね、一緒にお昼寝しましょう」
この子がお腹に宿ってから、とにかく眠いのよ。抱き合って眠りたいわ。そんな我が儘を口にしたら、あなたは喜んでくれるかしら? シリル。