表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/104

003.痛くてもう無理ぃ!!

 弟妹がいなかった私には、妊婦の状況はわからない。人から話で聞いた程度なの。陣痛って、ものすごく痛くて大変だと聞いたけれど……思ったより平気そう。そんなことを考えていられたのは、休止期間が長かったから。


 徐々に痛みが強くなり、間隔も短くなり、痛くない時間が消えていく。必死で呼吸して、言われるまま「ひっひっふぅ」と声に出して、力んで……。隣で手を握るシリルに泣きつく。


「痛いっ、いたぁ! 無理、もうむりぃ」


「な、何とかならないのか」


「どうにもなりません!」


 先生は一刀両断、おろおろするシリルの願いも私の絶叫も切り捨てた。ばっさばっさと遠慮も容赦もない。痛みの休止期間が長いうちに、と屋敷に戻された。騎士が二人で運ぶ板に乗って移動よ。戦場で重傷者を回収するときに使うみたい。


 クッションを敷いても痛かったから、戦場で使う道具でも柔らかな敷物を用意したらどうか。なんて、のんびりしたことを考えた時もあったの。後でわかったのだけれど、血で汚れるから敷物はダメなのね。それに重さも重要だと思うし。


「うぎゃぁああ!」


「奥様、あと少し!」


 さっきもあと少しって言ったわ。でも全然出てこないじゃない!! 力んだら体が裂けるかと思うほど痛いし、でも力まないと生まれない。なんでこんな仕組みになってるの? 女性の出産は命がけとは、このことかしら?


 それ以前に、人体を造った神様の設計ミスだと思う。半端ない激痛を耐えないと生まれないのは、おかしいわ!! 心で絶叫しながら、口からも獣のような咆哮が出てくる。もうダメ、死ぬかも……。


 そう思った直後、つるんと何かが通り抜けた。それも続けて二つ! 頭と体かな? ほっとして体の力が抜けた。全身が痛いし、頭がぼんやりしてくる。


「マリー? マリー! 大丈夫か。返事をしてくれ」


「シリル……うっさい」


 ぼそっと本音が漏れた。すっごく眠いのよ、邪魔しないで。


「寝る前に抱いてあげて」


 先生が手渡した重さに、はっとする。胸元に乗せられたのは、白い布に包まれた赤ちゃんだった。え? 赤ちゃんでいいのよね? 布で手足が見えないうえ、かろうじて見える顔も赤くて皺くちゃで……。


「かわぃい」


 ぽつりと言葉が零れた。ええ、可愛いわ。私が生んだ、私とシリルの赤ちゃん。


「おめでとうございます。双子です」


 もう一人がずしっと反対側に乗せられた。え? 右も左も私達の子なの?!


「だからお腹がやたら大きかったのか」


 納得するシリルの声を聞きながら、逆らえない眠気に目を閉じた。起きたら確認するから、とりあえず休ませて頂戴。




 眠ったのは二時間ほど、目が覚めて驚いた。お産に丸一日近くかかったんですって。痛かった以外、ほどんど覚えていないわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
無事の出産に、読んでる側もニッコリです。(⌒‐⌒) 性別どっちかなー、とか、どちらに似てるかなー、とか。(⌒‐⌒) 100話目でとうとうお母さん!マリーさん、おめでとうございます!(⌒‐⌒)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ