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10.寝室での会話は秘密がいっぱい

 私の想像通り、寝室の反対側はシリル様の部屋が広がっていた。執務室を兼ねた書斎やクローゼットも揃っている。お風呂などの隣にあった小部屋について尋ねたら、侍女の控え室だと教えてもらった。


 女主人が部屋で過ごす間、控えている場所らしい。棚には本のほか、茶葉やティーカップを揃える人もいるのだとか。なるほどと納得した。だから扉は作らなかったのね。それに、一人分のスペースしかなかった。


 ラーラに使ってもらおう。自国では、侍女は壁際に立って待つ。でも座って待ってもいいなら、楽だと思うの。ラーラに後で話しておこう。


「それで、なんだけど」


 巨大なベッドの端と端に腰掛け、私達は目を合わさず会話をしていた。向き合ったら照れてしまうわ。言いづらいこともあるし……。


「はい」


「このベッドで一緒に寝ることになる、のは……平気?」


「何も問題ございません」


 もしかして、初夜に寝ちゃったことを気に病んでいるのかしら。だったら、気にしなくていいと伝えるべき? 触れないのが正解かも。迷いながら振り返れば、シリル様と視線が合った。


「その……神殿での夜のことは、なぜか僕達がうまくいったと伝わっていて……そのままにしてもらえると助かる」


「承知しました。微笑んで受け流すように致しますね」


 男児だもの、初夜に花嫁に手を出さなかったなんて。噂になったら面目が立たない。私だって、年下夫に見向きもされないおばさん扱いされたくなかった。お互いに利益しかないわ。


「私もそのほうが良いと思います」


「うん、ではそうしてくれ」


 王族らしい話し方だけれど、やっぱり子供ね。柔らかく聞こえるし、内容が愛らしいわ。


「今日のことなのですが……その……衣装合わせの際に、ディーお義姉様にソベリ語で応対してしまいまして」


「はっ?! え! 何か言ってた?」


 すごい勢いでベッドに乗り上げるから、離れているのにのけぞってしまった。恐る恐る、ディーお義姉様の提案を口にする。ソベリ語を話せないし、聞こえないフリで情報を引き出すんですって。


「ああ、うん。なるほど……その言い訳……言い回しは思いつかなかったな」


 言い訳、と言いませんでした? 他に何か理由があるのかしら。こてりと首を傾げた私が「言い訳?」と繰り返したら、困ったように眉尻が下がった。


 歳の差があるシリル様は恋愛相手ではないけれど、やっぱり顔がいい。王族って見た目がすごく重要なのよね。私も悪くないと思うけれど、兄や姉には劣るわ。シリル様はクリスお義兄様にそっくりだし、将来はあんな感じに成長なさるのよね。


 そうなったら好きになっちゃうかも。でも……その頃の私はおばさんよね。がくりと肩を落としたら、心配されてしまった。


「義姉上が何かきついことを?」


「いいえ、そうではありませんわ」


 楽しかった話をして、夜遅くならないようベッドに横になる。明日は宝飾品を合わせるらしい。商人も呼んだと聞いているので、ディーお義姉様が購入なさるのね。


「君は……うん、そのままでいいよ。マリー」


「? はい」


 よくわからないわ。今のシリル様は大人びて、まるで私のほうが子供みたい。色々な雑談をして眠りについたので、先ほどの「言い訳」の意味を聞き忘れてしまった。

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