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陰陽・校園のうわさ  作者: 弥六合
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呪いの解除

 出てきたヒナタは、外の眩しい赤い光に照らされ、思わず手で光源を塞いだ。しばらくして、ようやく目が慣れてきた。空には、この世にはありえない大きな月が輝き、赤黒い月光が校内を照らし、血染めのようだった。気が付くと、ヒナタはグランドに立っていた。先ほど通ってきたはずのドアはどこにも見当らなかった。

 しかし、考え時間もなく、ミズキは顔を蒼白にし、斜め右、ホノカは息を呑んで斜め左から駆け寄ってきた。二人の後方から、赤黒い月に染められ、血染めの白い煙が、ゆっくりと迫ってきた。


「たす…たす…、はや…はや…早く…」


 ミズキは慌ててふためいて叫んだが、言葉が続かない。


「お化け、お化け…」


 息を切らしてホノカが駆け寄ってきた。


「お前たち、どうしたの?」


 二人はヒナタの手を掴み、先の言葉を繰り返していた。


「落ち着いてってば…、あれ?ここはグランド?お化け屋敷…」


 ヒナタは後ろを振り向き、教室どころか、赤みがかった白い煙しか見えなかった。しかし、ミズキとホノカはヒナタの手を引っ張ってそれぞれ自分の後ろを指していた。


「だから、落ち着いて!」


 すると、突然、血染めの白い煙の中から大きな五寸釘が空から地面に突き刺さった。五寸釘の上半部には、大きな藁が繋がっていて、まるで煙の中から這い出てきたようだった。次の瞬間、五寸釘が轟音を立てて空へ舞い上がり、その先に現れたのは、想像を絶する巨体の藁人形だった。

 近づいてきた藁人形は、高く上げた五寸釘を持ったまま、三人が居た場所めがけて突き刺さってきた。三人は恐怖に震え、ただ叫びながら抱きしめ合うしかなかった。すると、どこからともなく現れた人物が苦無を投げつけ、地面に五芒星の形の札が散らばった。恐怖に目がくらみ、三人はただ叫び声を上げるしかなかった。

 五寸釘が刺さってきたが、事前に張られた結界がそれを防ぎ、大きな爆音が辺りに響き渡った。三人は耳をふさぎ、しゃがんで身をかがめた。結界によって藁人形は後方に吹き飛ばされ、空からある影が舞い降りてきた。


 安倍カスミは小さい頃、家族が安倍晴明の隠されていた血筋であることを知った。高校時代に、家族が神社から持ち帰っていた安倍晴明の陰陽術の書物を発見し、修得した。安倍晴明が残ったメッセージに従い、カスミは家族さえも誰にも安倍晴明のメッセージの存在を知らせなかった。ある日、安倍晴明の結界に異変が起こり、カスミはそれを解決するために陰陽術と結界の事を隠した。

 ある日、神社に来た女性が、娘が呪われていると助けを求めてきた。様々の事情により、カスミも宮司と一緒に女性の住所に訪れた。そこで、呪いを打ち破るため、カスミは女性の娘の夢の中に現れた。


 ポニーテールに巫女服のカスミ空から舞い降り、三人の前に立ちはだかった。右手が神楽鈴を高く掲げ、左手が白扇を水平に広げる。清らかで澄んだ神楽鈴の音が、三人の心を優しく包み込んで響いた。鈴の音を聞いた三人は、顔を上げて巫女の後姿を見ている。

 藁人形は立ち上がり、すぐにも五寸釘を持ち上げて四人を突き刺さってきた。しかし、結界が働いていたため、五寸釘が空中に止まったままだった。カスミは影響を受けることなく、ただ舞い上がっていた。すると、赤黒い月が萬花鏡のように砕け散り、空から降り注ぎ、強い光が多数、血染めの夜空を突き抜けて照らしてきた。藁人形も煙も、すべてが消えて真っ白な何もない世界になった。


「みんな無事か?」


 カスミは振り向き、三人の顔を見つめた。


「はい…」


 見知らぬ他人とは言え、助けてもらった事実が、三人は少し警戒している。


「ミズキの親から頼んで助けに来ました、みんなが無事で何よりです」


 カスミは右手を胸口に置いて辞儀をした。


「本当ですか」

「みんなはここから離れることができないよ…」


 三人が喜びの時に、謎の女性声が響いた。


「誰ですか?」


 カスミは警戒しながら、周囲を見渡した。夢でも危険な場所には変わらない。


「伊藤と西宮です」


 二人の女子高生がカスミの前に現れた、体育館の被害者だった。ヒナタとミズキとホノカ三人は驚いて寄せていた。


「どういうことですか?」

「呪いはまた解除していない」

「呪い、その呪いはどこにあるか?」

「ここにはない。呪いを解除するにはこの夢を出ないと」

「そうか、なら仕方がない」


 二人の説明でカスミは肩をすくめ、振り向いて三人を見た。三人は泣きそうな顔をした。


「どころで、二人はなぜ体育館で亡くになったのか?」

「それも呪いのせいだ、誰かやるか、何のためにかも分からない。今回は貴方様が阻止しなかったら、今頃私たちはすでに人を殺したところだった」

「そうか、最近のうわさを利用した誰かやったに違いないか…」


「うわさで、あの呪い方ですか?」


 カスミが少し考えている時に、ミズキが話してくれた。


「そう言えば、呪いに興味を持っている人がいた」

「いたいた」


 ヒナタとホノカは相槌を打った。


「まあ…、宮司様に任せるわ。今は…」


 カスミは左斜めの方向へ睨みつけ、苦無を投げつけた。苦無は何かを刺し貫き、空中で静止したまま、中心に渦巻きが発生し、黒い煙となって空高く昇り上がり、消え去った。


「呪いの本体を壊さない限り、あれは絶えず生成され、こちらへと迫ってくる」

「三人とも、結界から決して離れるな!」

「はい!」


 伊藤と西宮は、ただひたすらカスミたちの前の空中に浮遊し、カスミは警戒を怠らず、時折苦無を放ち、呪いの産物かを消し去った。

 数十分後、真っ白なこの空間がひび割れ始め、それが徐々に広がり、まるでガラスが割れるように大きく砕け散った。


「呪いが解けたようだ、お別れの時間だ」


 伊藤と西宮の話が終わった瞬間、眩しいほどの光が空間を満たし、足元が崩れ、四人は深淵へと落下していった。



 嵐山竹林、道から外れて、竹林の奥へと進んでいく男がいた。何かを探し求めるように、竹を掻き分けながら進むと、両手合わせたくらいの大きな石が目に入った。整然とした竹林の中で、この石だけが異質な存在感を放っていた。男は石をどけると、その下か年代物の藁人形が現れた。男は頭を掻き、藁人形をじっと見つめるが、どうすることもできない。途方に暮れた男は、右手を開き、藁人形をその上に置いた。すると、藁人形は炎を上げ始めた。

 突然、四人が現れ、三人の女子高生が悲鳴を上げて尻もちをつき、一人は巫女姿の女性。男は驚き、あと一歩で転びそうになった。


「ここは?嵐山?」

「そうです」


 巫女の問いに、男は答えた。


「嵐山?!ってことは、私たちが出られたよね」


 ミズキが嬉しそうに言うと、ホノカとヒナタも大きく頷いた。


「もしかして…ホノカではないか?君の母親からの依頼、やっと見つけ出した」

「はい、お母さんが!」

「無事で何よりだ」


 ホノカの姿を見て、ヒナタは少し表情を曇らせた。ミズキの親から依頼されたカスミとホノカ親から依頼された男。しかし、自分は…?そう思ったが、誰にも気付かないように、ヒナタはすぐに笑顔を取り戻した。


「とにかく、帰ろう。君達の親が心配して待っているから」


 こうして、みんなはそれぞれの家に帰り、依頼も無事に完了した。しかし、京都にはまだ、呪いのうわさが影を潜めていた。

 外伝のような、小さいな物語を完成させることができました。

 カスミの物語にご興味を持ちでしたら、「陰陽」の「安倍晴明の結界」をお読みいただけますと幸いです。また、男の物語にご興味をお持ちでしたら、「千年を越え思念」をお読みいただけますと幸いです。

 ただいま、「千年を越え思念」につきまして、表現の見直しを行っており、お読みいただくには、今しばらくお時間をいただくことになります。何卒ご容赦ください。

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