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陰陽・校園のうわさ  作者: 弥六合
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恐ろしい出来事

 夜、この世のものとは思えないほど大きな月が空に掛かっている。妖異な赤い光が放たれ、空と雲を赤く染めている。この景色の中で、白い壁の学校も赤くなった。

 墨染ミズキは、生徒服を着て蝋燭を手に学校の廊下を怯えながらきょろきょろと歩いている。外からの赤い光が唯一の光源で、廊下を赤く照らしている。ただし、ミズキが手にしている蝋燭が照らしている場所以外は、暗くて何も見えない。時々、廊下の先から風が吹いてくるせいで、蝋燭の火が揺れて消えそうなので、ミズキは蝋燭の火を守りながら気を付けて歩いている。


『ズザッ、ズザッ、ズザッ』


 突然、後ろからほうきが地面に突っ込んだような音が聞こえてきた。ミズキはゆっくりと左に回り、横を向いて後ろを見たが、相変わらず暗くて何も見えなかった。しかし、その音はまるで誰かが歩いて接近してくるかのように聞こえた。

 異様な環境か、恐怖の心理かどちらにせよ、ミズキは思考が停止し、蝋燭の火を守りながら立ち尽くして、暗闇の中に何かが出るのを見ている。

 音とともに、最初に出てきたのは五寸釘だった。しかし、よく見ると、その五寸釘は長さが一メートルもあり、先端部には黒い錆がくっついていた。そして、五寸釘を持ってきたのは巨大な藁人形だ。その巨体は天井までの高さで、完全に廊下を塞ぎながら、一歩一歩と接近してきた。

 ミズキは依然として動かず、ずっと藁人形を見つめている。ミズキの前に来た巨大な藁人形が五寸釘を高く上げ、ミズキを狙って刺してきた。驚きすぎたミズキは、ようやく我に返って逃げようとしたが、足が聞かず尻もちをついてしまった。その時、刺してきた巨大な五寸釘がミズキの両足の間に床に突き刺さった。

 巨大な藁人形は五寸釘を持ち上げようとしたが、抜けないままずっと試し続けていた。ミズキは四肢を使って床に座ったまま後ろへ移動した。すると、ミズキは立ち上がり、すたすたと走って逃げて行った。


 丹波橋ホノカは、生徒服を着て、教室の中で多分自分の座席に座っている。外の異様な景色を気にせず、ただひたすら宿題を書いている。そろそろ終わるところで、ホノカは先まで書いたもののを確認したが、空白で何も書いていなかった。信じられなくて、ホノカはもう一度ボールペンで書き直したが、何も書けなかった。


「もう、何なんだ!」


 ホノカはボールペンを力強く前に投げた。


「もう、帰ろうか」


 ホノカは立ち上がって教室を出ようと時に、ある影が人にとって不可能の素早いで窓の後ろを通っていった。『また誰かがいるのか?』と考えながら、ホノカは教室を出た。そして、影が消えた方向を見てみると、女子生徒のスカートが角に消えていくのが見えた。

 異様な環境を気にせず、あるいはイライラしていても何も感じなかったのか分からないが、ホノカは追いかけた。角に来て、二階のはずだったこの階には、一階へ降りる階段がなく、三階へ上がる階段だけがあった。三階へ行ったはずだと誰もそう思ったのと同じく、ホノカも三階へ上がった。

 三階に来たホノカは、女子生徒のスカートの一部が二番目の教室に入るのを見て、同じ教室に入った。入った途端、後ろのドアが大きな音を立てて閉じた。『ポン』という音に驚いたホノカは振り向いてドアを見たが、何もなかった。我に返ってドアを開けようとしたが、鍵がかかっていて開けられなかった。

 すると、窓に夜空が映し、教室内の照明が消えて、暗い緑の色の空間になった。異変を気付いたホノカは、ドアに背をしてくっつき、怖がりながらも両手で必死にドアを開けようと試みていた。そして、近くの床に黒い渦が現れた。その中から左手が伸び出して床を支えると、右手も続いて床を支えた。両手が床を支えると、黒い渦の中から黒い頭のような不気味な影がゆっくりと現れた。

 何か来ると分かったホノカは逃げようとしたが、足が聞かず、手も必死にドアを開けようとしただけ。すると、ホノカの上から長い黒い髪が垂れ下がり、ゆっくりと真っ白な顔が目の前に現れた。真っ白な顔には目と鼻と口に血が流れた跡があり、目は閉じたままだった。これを見てホノカは驚きのあまり声も出せずに立ちすくみ、ドアに寄りかかりながらゆっくりと地面に座り込んだ。

 しかし、ホノカの視線は真っ白な顔を逸らさずに怯えながら見つめていた。ほんの少し、別のことを感じた。黒い渦の中から、頭のない女子生徒の服を着た体が這い寄ってきた。両方から攻めてきた恐怖のおかげで、ホノカは教室のもう一つの出口を思い出し、その方向へ体を倒して這って逃げた。そして、立ち上がり、慌てて走ってもう一つの出口のドアを開けて外に出た。


 外に出たホノカは右に曲がって逃げていったが、足が床にめり込んでバランスを崩して前に倒れた。慌てて立ち上がろうとすると、足がまためり込んだので、また崩して後ろに倒れた。ホノカは座ったまま体を起こし、自分の体をチェックして、無事であることにほっとした。床にめり込んだ足を抜こうと試みたら、簡単に抜けた。ホノカはすぐに立ち上がり、振り向いて後ろの道に向かってさっさと走って行ってしまった。

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