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復讐と銃口   作者: ヒーズ
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第1話:狼と少女

「旦那が直接くるたぁ~・・・いや、アッシが深入りしていいことじゃあ、なさそうですね」


ハイエナは頭がいい、いや、ずる賢いと言うべきか。

故に、私の逆鱗に触れることも、タブーに触れることもない。


人間が生物界の頂点に立ってから、その覇権が揺らぐことは一度もなかった。

だが、ボタン戦争、所謂核戦争で人間の多くが死滅した。

放射能は他の生物の命も多く奪ったが、生き残った動物達に進化をもたらすことにもなる。

我々の『始祖』は、当時人間だけの特権であった『高い知能』と『人の容』を手に入れた。

結果、動物と人間が生物界の覇権を争うことになり、第一次人動覇権戦争が勃発。

その後も、第二次、第三次と続き、第五次人動覇権戦争にて、数で勝る我々が人類に勝利し、

動物と人間の立場は逆転した。

人間は家畜へと堕ち、我々が飼い主へと昇華された。

が、次なる問題が我々を襲う。

食料だ。

人間社会の歴史を借りるならば、キューバ危機と同等の大問題であった。

我々動物の存続と覇権に関わる重大な問題。

それを解決するために・・・愛玩人間と言う概念は消え、家畜人間と言う概念が普及する。

つまり、人間は愛玩のための存在ではなく、食料となったのだ。

が、人間がそうであった様に、高い知能を手に入れた我々にも“それら”は現れた。

人間愛護団体や人間性愛、珍しい人間を愛玩目的で飼いたがるクズ共。

そう、私が今いる場所はそう言った者らの集う場所、人間市だ。

酷く汚く、動物と人間の匂いが混ざった悪臭の立ち込める場所だが、

この辺で最大の人間市と言えば、ここしかない。

男、女、子供、大人、老人、全てが揃っているのがここだ。


「旦那ぁ~、旦那の要望ぉを叶えてるやつぁ~・・・こいつくらいですかねぇ~」


ハイエナがそう言いながら、目の前の檻の中に入っている男を指さした。

それと同時に、この人間の正確な資料を手渡してきた。

『18歳、男、身長190、体重64、健康状態:痩せ気味、知能:平均、性経験なし』

中々良い状態の人間の様だが・・・却下だな。

私が望んでいるのは若い年齢の者、18歳は少々大人すぎる。

私は資料をハイエナに返し、首を左右に振った。

ハイエナは溜息をつきながら、次なる人間の下へと私を案内し始めた。

が、次の檻の前を通った時、幼い少女の声が聞こえて来た。


「オ゙・・・お・・ヵ・・ミ・・あ・・・う?」


その声を聞いたハイエナは、その檻の中にいる少女を躾ようとするが、私はそれを制止する。

檻の中を覗くと、綺麗な赤色の瞳を持った少女がいるのが見える。

私はハイエナに彼女に対する資料を請求した。

ハイエナは渋っていたが、客の要求に答えぬと言うわけにもいかないのだろう、

彼女の資料を素直に渡してくれた。

『8歳、女、身長110、体重22、健康状態:聴覚障害、知能:平均、性経験なし』

なるほど、言葉が聞き取りずらかったのは、耳が聞こえないからか。


「この女、文字は読めるのか」


私の問いかけにハイエナは「ええ、簡単なものなら」と答えた。

私は胸ポケットからメモ帳とペンを取り出して、彼女との対話を試みる。

『なぜ、わたしのことがおおかみだとわかった?』

私はそう書くと、彼女にペンとメモ帳を渡す。

何をすべきかを理解した彼女は、覚束ない手つきでメモ帳に文字を書き始める。

通常よりも時間はかかったが、彼女はしっかりと読める文字で返答してきた。

「むかし、かいだ、におい、した」

ふむ、嗅覚が優れているのか。

人間は五感の中で最も視覚に頼る生物だと思っていたが・・・耳が聞こえない代わりに、

他の五感が発達したのかもしれないな。

キツイ悪臭の立ち込めるこの場所で、フードで顔を隠していた私のことを狼と見抜くとは、

そこらの犬よりも鼻が利く様だ。

私ですら、こんな人間と獣の濃い匂いが入り混じった場所では、嗅覚が機能しない。

ふっ、年齢、能力、知能、全てが私の求めたそれをクリアしている。


「よろしい、この人間を買おう」


私がそう言うと、ハイエナは驚いていたが、何を言うでもなく、購入の手続きは無事に完了した。

続けて、人間が逃げないための対策である『隷属化装置』を取り付ける段階だが・・・

私は、彼女に隷属化装置を取り付けることを拒否した。

そして、私はメモ帳にこう書いて彼女に見せる。

『にげたいとおもうならにげればいい。このせかいで、ひとりでいきていけるとおもうなら』と。

彼女は表情一つ変えずに頷き、私の隣に立った。

ふっ、知能が平均だと判断したこいつの目は節穴だったな。

この少女、8歳にしては物事の理解が早い。

簡単な文字しか書けないのも、恐らく教育環境が劣悪だからだろう。

この少女、しっかりと育てれば化けるかもしれないな。

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