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第74話 王立魔法技術研究所 7 図書館での調べもの 2 武姫スキル

 歳が百以上も歳が上の人に説教をすることになるとは。

 しかし突然断りもなく僕達が泊っている研究室に入ってくるフォレスティナ所長が悪い。

 が収穫もあった。

 それはフォレスティナ所長がもってきた、図書館の一般閲覧制限区域へ入るための許可書だ。

 これを使うことでマリー達武姫の秘密に近付けるかもしれない。

 僕達はこの許可書をもって早速図書館へ行き、一般閲覧制限区域へ入った。


「……罠? 」

「あちこちに罠が仕掛けられているわね」


 一般閲覧制限区域に入ると、一気に研究者の数が減った。

 それ以外は特に変化はないだろうと(たか)をくくっていたけれど、少し歩くとあちこちに魔力の反応を感知。

 しかもかなり微弱な。


(はず)すです? 」

「いやそのまま引っ掛からないように行こう。この設備を解除したらどんなことを言われるかわからないからね」


 罠を解除したら「弁償しろ! 」なんて言われかねない。

 まぁフォレスティナ所長は「弁償」よりも「研究の手伝い」か。

 何にせよ、設置するのに高そうなものを解除するわけにはいかない。


「二手に分かれる? 」


 マリーが提案する。

 この外よりは少ないけど、それでも目の前に広がる本棚は一日二日で調べきれるものじゃない。

 マリーの言う通り二手に分かれた方が良さそうだ。

 彼女の提案を受け入れ頷き、そして僕達は分かれた。


 ★


 アルフレッドと別れたマリーとアリスは、二人本の森の中を歩いている。

 アルフレッドと同じく二人が入った区域は魔法生物の区域。

 けれどマリーはアリスを連れて宗教方面へ足を動かしていた。


「マリーは何で遠くに行っているのです? 」

「そうね。単純な魔法生物の区域には情報がないと思ったから、かな」


 アリスが不思議そうにマリーに聞く。

 マリーとアリスは魔法生物だ。

 けれどその本体は武器や道具。

 よってマリーは普通の、――例え研究所の図書館の一般閲覧制限区域の書物には自分達のルーツはないと考えたのだ。


「じゃぁアリスは何を探したらいいのです? 」

「探すのは魔法生物のままでいいわ。けど……そうね。魂に関して調べるのもいいかもしれないわ」

「魂です? 」

「ええ。魂の研究はエルちゃんの研究テーマだったもの」


 マリーは少し懐かしいものを思い出すかのような顔をしながら、アリスを連れて目的地に向かった。


 今回の調べものは一日で終わるものではない。

 それにマリーはナナホシ商会の運営という重要な役割も持つ。

 だから時々フレイナと交代しながら調べものを進めた。


「エルちゃんの論文は出てくるけど……ないわねぇ」

「持ってきたのです! 」

「ありがとう、アリスちゃん。そこにおいておいてね」

「はいなのです! 」


 アリスがどさっとマリーの机に紙の束を置き、もう一つ大きな山を作った。

 マリーが今調べているのは研究者エルドレッド・サウザーの基礎研究「魂について」。

 膨大な量の論文から目的のものを選別しているが見つかる気配がない。


「本? 」


 読んでいた論文を山の上に置くと、マリーはアリスがもってきた資料の中に本があることに気が付く。


「なにかしら? 」


 アリスが間違えて持ってきたのだろう。

 そう考えるも、少し興味を引かれてマリーはその本を手に取った。


 マリーが手に持つ本には「神と恩恵」と書かれている。

 タイトルからしてマリーが探している内容とは全く違う。

 けれど気分転換にでもと読むことにした。

 何が書かれているのか少しワクワクしながらマリーはページを捲る。


「……新人類、ねぇ」


 そこに書かれていたのは既存の宗教で語られている終末論と、それを回避するためには新人類の台頭(たいとう)が必要であると書かれている。

 それを読んで一気に興味を無くすマリー。

 そもそもこの手の終末論はマリー達が生まれた時からある。

 宗教の数だけ終末論があり、そして回避方法も宗教の数だけ掲げられていた。


「邪教認定されて経典が処分された、という所かしら」


 そしてこの本はそれを免れたのだろう、とマリーは考える。

 貴重な資料ではあるがマリーの興味を引くほどではなかった。

 彼女は完全に興味を無くしながらも、ぱらぱらっと全体を読む。

 そして本をゆっくりと閉じた。

 最後のページに「恩恵について」と書かれていたことに彼女は気づかなかった。


 ★


 図書館で調べものを初めて十日以上が経過した。

 けれどまだ手がかりが見つからない。

 すぐに見つかるとは思わなかったけど、ヒントの欠片さえも見つけることが出来ないとは。

 マリーは僕とは違うアプローチで探しているみたいだけど、彼女も結果は(かんば)しくないみたい。

 これは月単位で粘らないとダメかもしれないね。


「これとか面白そうだ」


 煮詰(につ)まってきた。

 気分転換に違う区画へ向かう。

 本棚にならぶ多くの本から今日選んだのは古代遺跡に関する本だ。


 古代遺跡……。

 なんてロマンあふれる言葉なんだろう。

 古代、と聞くだけでもドキドキワクワクするのは僕がまだ少年の心を忘れていない証拠だろう。

 因みにウィザース男爵領にも古代遺跡は複数ある。

 ただ調査をするほど人材が揃っていないから調べることができないでいる。

 悪魔獣(ビースト)関連が落ち着いたら一度は行ってみたいね。


 少しドキドキしながらも分厚い本をはらっと捲る。

 何が書かれているのだろうとワクワクしながら読んでいると、


「魂を宿した武器? 」


 付喪神(つくもがみ)? ……いやこれって武姫の事じゃ?!


 驚いてアワアワする。

 これってどこの遺跡?!

 いや待て。ここには武姫と書かれていない。

 書かれているのは「その昔に魂を宿した武器」が存在したということだ。

 ここは魔法が存在する世界。

 可能性の一つとして知性を持つ武器インテリジェンス・ウェポンもあるだろう。


 一旦考えを纏める。

 ドキドキしながらもっと武姫に繋がる話はないかページを捲ると、人の姿をとる武器の姿が描かれていた。


「! 」


 これは決定的である。


 けれど姿は僕が見たことのない。

 マリーでもアリスでもフレイナでもない。

 頭にヘルメットの様なものを被り敬礼している姿をしている。

 そしてその下に彼女の能力が書かれている。


 ――毎度思うけど、もしかしてこの世界何回か文明が滅んでない?


 一旦本を閉じて情報をまとめる。

 この本によると、当時は「スキル」なるものがあったようだ。

 これはマリー達が言っていた力の事だね。

 けれどこの本にはより詳しく書いてあった。


 スキルとは「魂に根付いた力」のこと。

 修錬によって身に着けることも出来るが、その殆どは循環する魂に付与されるものと書かれていた。


 ――ちょっと待って。何を言っているのかわからない。


 そもそも魂って循環するの?

 そう考えると僕の魂って完全にこの世界に飛び入り参加だよね?!

 今宗教の根幹を揺るがしかねない疑問に辿り着いた気がする。

 ま、まぁ僕は専門家じゃないからわからないし……。

 詳しい議論は宗教家や神学者に任せるとしようか。


「通常の魔法や剣技とは異なる別の力、か」


 アリスの力を例に出すとよくわかる。

 アリスは様々なものを、概念を、時空間を「開いたり閉じたり」することができる。

 これを「魔法」の枠組みに入れるのは無理がある。

 魔法とは全く違う力、「武姫スキル」と考えれば、多少は整理がつく。


「それにこの力……」


 この本には聞いたことのないような力が書かれていた。

 この力の事をマリー達は知っているのだろうか。

 本を持ちマリーとアリスの所へ行く。

 二人の所へ行くとマリーは紙に埋もれ、アリスが紙を重ねていた。


「これは武姫装備というスキルね」

「武姫装備? 」

「エルちゃんがよく使っていた技よ。アリスちゃんとの複合技になるけど……使ってみる? 」


 そう言われて使わない訳がない。

 僕達は図書館を出て研究所に戻る。

 そして研究所の訓練闘技場で、武姫装備の練習を始めた。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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