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第69話 王立魔法技術研究所 3 フォレスティナの依頼 2 vs メタルゴーレム

 ミスリナタイトという鉱石は高い魔力伝導率を誇ることで知られている。

 その性質から主に魔法使いが使う魔杖に組み込まれたりすると聞く。

 昔図鑑で見たことがあるが、ミスリナタイトを含んだゴーレムというのも存在するらしい。

 がその討伐難易度はあまり高くない。

 その理由はミスリナタイトが他の金属と混ざると全体的に耐久度を落とすというのが理由なのだが、


「かったっ! 」

「ははは。金属の組み合わせ(可能性)は無限大。このわたしが単純明快な弱点をそのまま放置していると思うかね」


 言っている事はなんとなくわかる。

 けどそれを克服することがどれだけ難しいのか、今まで成し遂げることができていないことからよくわかる。

 この素材だけで産業革命が起きてもおかしくない代物(しろもの)だ。


 ――ズドン!!!


 拳を突き出した後直ぐにカウンターパンチが向かって来る。

 距離をとって回避する。

 僕がいた所には穴が開いていた。


「いいねいいね! この速度に反応するか! 」


 すぐに態勢を整える。

 足を止めずゴーレムから距離をとる。

 魔法を使い吹き飛ばそうと考えるも、


「ゴーレムの速度じゃないだろ!? 」


 この重量にしてこの移動速度。

 反則だろう!

 ゴーレム系統の魔物は速度が遅いはずなのに。

 これはゴーレムの内部に何か魔法を仕込んでるね。


「わたしが作ったメタルゴーレムをその辺の魔物と勘違いしていたのならばそれは間違いだ。いうなれば魔導機兵。その力をとくと見よ! 」


 幾つか地面に穴が開く。

 ゴーレムの攻撃を回避する。

 止まったかと思うと奴の背中に鉄の翼が生えて、――飛んだ。


「はぁぁぁぁ?! 」

「ははははは! これぞ自由! わたしの魔導機兵は自由の象徴だぁぁぁ!!! 」

「……魔硬連弾(マルチプルショット)


 無言のまま魔弾を放つ。

 飛んでいるが停止しているそれは良い的だ。

 卑怯だなんて言わせない。

 魔弾が魔導機兵に「ドドド」と言う音を立てながら着弾する。

 が――。


「ははははは! 分かりやすい弱点を残すほどわたしは馬鹿じゃないぞ! これは魔力霧散型魔法無効化能力、「「「あ……」」」……」


 ズドン!!!


 落ちた。


 やるせない空気が漂う中、僕はマジックソードの硬度を最大限にして、隙が出来たゴーレムを一刀両断した。


 ★


飛行(フライ)の魔法無効化能力による無効化……。完全に見落としていたよ」


 フォレスティナ所長が二つに分かれたゴーレムを回収しつつ呟いた。

 見落としというレベルじゃないような気がする。

 いや外に出回る前に気付いてよかったと思うべきかな?


「加えて君レベルの魔法使いの魔力を、――いや正確には魔力密度か――拡散させることは困難であるということも分かった。しかし現状これ以上霧散能力を強力にすると他の機能が損なわれるか……」


 所長が壊れたゴーレムを見ながら一人ブツブツと喋り始めた。

 こ、これはこれで怖いな。


「アルちゃん大分様子を見ていたでしょ? 」

「ま、まぁ。どんな性能なのか僕も気になるし? 」

「それで怪我をしたら元も子もないわ。未知の相手に様子見をしたい気持ちはわかるけど、程々にね? 」

「……反省します」


 僕が本気を出さなかったのはロボみたいで壊すのを躊躇(ためら)ったから、なんて言えないね。


「――魔法完全無効化を使えれば……、いやこれはこれで問題が――」

「魔法完全無効化? 」

「む? 聞いていたのか。乙女の話を立ち聞きするとは君もデリカシーのない人間だね。けれどわたしの研究に興味を持つのは好ポイントだ。わたしと一緒に研究をしないかい(愛し合わないかい)? 」

「遠慮しておきます」

「そう言わずに、さぁ」


 と言いながらフォレスティナ所長は説明を始める。

 魔法完全無効化とはその名の通り「魔法」を「完全」に「無効化する」魔法や技術の事らしい。

 だがそのメカニズムは霧散型や吸収型と全く違い、まだ解明されていないようだ。

 そんな能力の持ち主に出会いたくないね。


「ともあれ君はこのメタルゴーレムを倒した。さぁわたしに何を聞きたい? 」


 フォレスティナ所長が立ち上がり、僕に向く。

 今まで多くの疑問をぶつけようと考えていたけど、すぐに聞きたいことを一つに絞れた。

 若干手に汗握る。

 睨みつけるように彼女を見て、そして僕は聞いた。


「単刀直入に聞きます。フォレスティナ所長。貴方は……、いえこの研究所は悪魔獣(ビースト)発生に関わっていませんか? 」


 一瞬にして空気がピリつく。

 明らかに機嫌を悪くしたな。

 けれど僕は後悔していない。これは聞かなければならない事だ。

 怒気(どき)(はら)んだ声で、しかしゆっくりと僕に言う。


悪魔獣(ビースト)の報告は聞いている。もちろん君がそれに対処したことも。けれどあの美しさの欠片もない研究に関与したと思われるのは、心外だね」

「やっていないと? 」

「この王立魔法技術研究所は超高度な管理の元で研究を行っている。このわたしがすべてを把握できるくらいに。故に、「関与していない」と断言できる。何ならわたしの所長の座をかけても良いが……」


 ギロリと僕を見るが、「構いませんよ」と返事をする。

 少し会話しただけだけど彼女は非常に好奇心に真っすぐで、素直だ。

 もし彼女が関与していれば自分から「やっている」と言い、「ここは治外法権だ」と開き直るだろうね。

 緩んだ空気の中で所長は僕に言う。


「しかし心辺りが全く無いわけではない」

「どういうことで? 」

「この研究所は超高度な管理の元で研究を行っている。だが時には研究犯罪者として処分する者もあらわれる」

「研究犯罪者? 」

下衆(ゲス)で最低最悪で意地の汚い研究をした奴らの事だよ。でその中で、外の貴族と繋がっていたのか、脱走する者がいる。その者が起こした可能性は否定できない」


 研究犯罪者、か。

 これはまた追うのが難しそうな人達だね。

 それに貴族と繋がっているのなら余計に手出しがしにくくなる。

 情報が確定したわけじゃないけれど、覚えていても良い情報だと思う。


「研究犯罪者については、総合研究棟隣にあるギルドに行くと情報が見ることができる。大々的に手配しているからね」

「ギルド? 」

「この研究所裏にあるダンジョンや山を探索するための探索ギルドさ」


 この研究所には冒険者ギルドのかわりに探索ギルドなるものがあるようだ。


「さてさて他に聞きたいことはないかい? あと一つくらいなら今答えてもいいと考えているが」


 あと一つか。

 色々と聞きたいことはあるから困ったな。

 けど言い方からしてまた教えてくれそう。

 なら前から気になっていたことを聞こうか。


「……僕の事を同族って言っていたけど、僕はエルフ族なのか? 」

「むしろなんだと思っていたんだい? 」

「ちょっと耳が(とが)っているだけの人族。というよりもエルフ族なる人種がいるということを今日知った」

「それは僥倖(ぎょうこう)。知らない事を知るというのは良き学びだ。そして君の質問に答えるのならば「イエス」だ」


 長く尖った耳をピクリと動かし断言する。

 エルフ族の彼女がそう言うんだ。間違いないだろう。

 けれどここで疑問が残る。


「僕の両親は人族のはずだ。何で僕はエルフ族に……」

「なにを言っている? 彼もエルフ族だろ? 」

「ん? 」

「ウィザース男爵家だけじゃない。王族に連なるものは、――血がかなり薄まっているけれど、全員エルフ族の血が混じっている。なにせ建国したのはエルフ族だからね」

「そんな感じは受けないけど……」

「確かに身体的な特徴は無いに等しい。だがエルフ族の末裔(まつえい)であることは間違いないよ」


 さり気にウィザース男爵家が王族に連なるものと言った。

 つまり彼女は僕達のご先祖様がサウザー公爵家だということを知っているのだろう。

 会った時から思っていたけど僕達よりもウィザース男爵家のことを知ってない?

 

「が、その中でも君は特別だ」

「……どういうことですか? 」

「非常に稀な事だが古き血、――つまりフォレ王国の王族の血が覚醒しているとみる」

「覚醒……」

「その通り。その身体的特徴と持っている膨大な魔力量が何よりの証拠だ」


 この魔力量は転生者であることが関係していると考えていたけど違ったみたいだ。


「そして覚醒者である君が政治に与える影響力は計り知れない。何せ血が薄まり過ぎて今では王族すら覚醒できない状況で覚醒しているんだ。流石に君が王様になることはできないだろう。だが君を、いやウィザース男爵家を囲おうとする貴族は多いだろうね」


 迷惑極まりない話だ。

 今までウィザース男爵家に援助も何もしてこなかった貴族達に寄って来られるのは少々気持ち悪い。

 けれど無難にわたっていくためには自分の立ち位置と特徴を上手く利用する必要もある、か。


「ともあれこれで一旦質疑応答は終了だ。次は君の研究室に案内しよう」

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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