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第65話 領主代行のお仕事 3 王立魔法技術研究所とは

「王立魔法技術研究所? 」

「おやご存じない? 」


 ライルが意外とばかりにきょとんとする。

 初めて聞く名前だ。

 有名な研究所なのかな?

 いや王立とあるから有名なんだろうけれど……、よくわからずリーグルド達の方を見る。

 ライルの言葉に驚いたのか口をあんぐりと開けていた。


「お、王立魔法技術研究所?! 」

「エリート中のエリートじゃないですか」

「……なんで冒険者を」


 ライル達に詰め寄り聞くリーグルド達。

 や、やっぱり有名な研究所のようだ。


「お、落ち着いてください」

「皆さん勘違いされているかもしれませんが、王立魔法技術研究所に所属する者でも冒険者として活動している研究者は数多くいますよ? 」

「「「え?! 」」」

「王立魔法技術研究所は研究組織。ただ黙々と研究対象と向き合っているだけでなく、フィールドワークも積極的に行います」

「研究所の外の環境を考慮しなかった結果、いざ運用となった場合失敗する可能性を少しでも減らすためです」

「まぁ我々の目的はそれ以外にもありますが…… (ボソ)」


 リーグルド達の質問にライル達が答える。

 説明にはいると多弁になる。

 全員が全員そうであるとは思わないけど、僕が想像する研究者そのものだね。


「アルフレッド殿は王立魔法技術研究所についてご存じないとの事なので、少しばかし説明を」


 とライルが説明を始めてくれた。

 王立魔法技術研究所は歴史ある研究所でこの国の魔法技術産業を支えている組織とのこと。

 その高い技術力と組織力が故にちょっとした治外法権のような形になっているらしい。

 それゆえ犯罪の取り締まりはフォレ王国の法律よりも厳しいらしく、その頂点に存在する所長とやらは王様のような存在だとこと。


「厳しくも優しいお方ですが……」


 とライルが苦笑い。

 少なくとも嫌われているわけではなさそうだ。


「研究所の所長か。いつか会ってみたいね」

「会えると思いますよ? 」


 そうすぐに肯定されると逆に恐怖しかないのだけれど。


「所長の事です。すでにアルフレッド殿の情報は仕入れていると思います」

「仕事に忙殺されている方ではありますが、それを押しのけてでも会いに来る可能性があります」

「いいですかアルフレッド殿。あの人の前で研究の話を持ち掛けてはいけません」

「話が長いのはもちろんの事研究に巻き込まれる可能性も十分にありますので」

「なにそれ怖い……」


 まだ見ぬ王立魔法技術研究所所長に恐怖しながらもライル達と別れる。

 一先ず領地の騒動を抑えてあとは宿泊施設の完成待ちとなるのであった。


 ★


 各町で宿泊施設も完成し領内は一旦落ち着いた。

 ホテル「ナナホシ」が運営する宿泊施設は主に廃館を使った観光客の案内。

 また廃館が無い町や村では余っている家を使ったり、増改築したりして対処を行った。

 建物の方はどうにかなったのだけれど、リピーターを増やすための仕組みはまだである。

 早めに宿の問題をどうにかしないといけないからね。

 今後に期待だ。


「各地で悪魔獣(ビースト)が増えている? 」

「そうなのよ。この前他の領地の貴族夫人がお茶会で言っていたわ」


 王都の館でマリーが手を頬に当てて教えてくれた。

 悪魔獣(ビースト)の被害はウィザース男爵領周辺だけではないようだ。

 聞くと全体的な数からするとウィザース男爵領は少ない方らしい。

 冒険者ギルドで定期的に情報を仕入れているけれど、まとめた情報を聞いたことはなかったね。


悪魔獣(ビースト)の方も本格的にどうにかしたいけれど領地の事もあるし……」

「領地の事は大丈夫だよ」

「父上? 」


 マリーと話していると父上と母上がノックをして部屋に入ってきた。

 大丈夫ということは……。


「やっと長かった会議が終わった。明日にでも帰れるだろう」


 父上がつかれた顔で笑みを浮かべる。

 お疲れさまです、と(ねぎら)い座れるように椅子を用意する。


「で、悪魔獣(ビースト)の件をどうにかしたいということだけど、実際どうするつもりだい? 一筋縄ではいかないと思うんだが」

「王立魔法技術研究所を訪ねてみようと思います」


 この前迷宮の地図から聞いて知った王立魔法技術研究所。

 聞いた感じだと定期的に外の情報を入れているみたい。

 まず王立魔法技術研究所が悪魔獣(ビースト)を知らないということはないだろう。


「先日Cランク冒険者パーティー「迷宮の地図」から王立魔法技術研究所の事を聞き、何かしら情報を得ることが出来ないかと考えました」


 それに王立魔法技術研究所には興味を持った。

 この研究所は歴史ある研究所とのこと。

 ならば武姫の事がより詳しく知れるかもしれない。


 彼女達は昔の事をあまり話さない。

 無理に聞くことはしないけれど、未だに彼女達の事は謎に包まれたままである。

 少しでも知りたいと思うのは自然なことだと思う訳で。

 それに本当に「膨大な魔力」だけが彼女達を起動させる鍵だったのかとても気になっている。

 今後の戦いを考えるのならば、もしそうなら彼女達の主権を奪われないように対策を練る必要が出て来るんだよね。


「それに何かしら強くなる方法があればと思いまして」

「まだ強くなるつもりかい? 」

「僕は()強ではないので。未知の悪魔獣(ビースト)にも、後れを取りたくないのです」


 呆れる父上にきっぱりと言う。


「それに迷宮の地図の話によると王立魔法技術研究所の所長は僕を捕捉しているようです。突然領地に来て混乱をまき散らされる前に研究所を訪れる方が良いかと」


 僕の言葉に父上が「それは確かにあるな」と苦笑いを浮かべる。

 これなら王立魔法技術研究所に向かうことは決定かな。

 

「うろ覚えだが……、確か施設に入るのに許可が必要だったような……」

「許可? 」

「考えれば不自然な事ではない。国家機密を扱うような所だからね」


 迷宮の地図が自由に冒険者をしていたから考えが及ばなかったけど、言われてみれば確かにそうだ。

 むしろ許可なく入れる方がおかしい。

 推薦のようなものが必要なのだろうか。

 むむ……。これは困ったぞ。


「ならあの子にお願いすればいいんじゃない? 」

「あの子? 」

「エニーちゃんよ」


 ★


 マリーがトンデモ提案をした後、それ以上の案が出ず結局王城を訪ねることにした。

 一度父上経由で手紙を出しアポイントを取ろうと思ったのだけれど、マリーに却下された。


 ――『その方法だとエニーちゃんの所に届くか怪しいわ』


 とのこと。

 加えて、もし届いたとしても年単位で遅れる可能性が高いみたい。

 よって不安しかないまま僕達は王城へ向かった。


「大丈夫よ。エニーちゃんが短剣を渡してくれたじゃない」


 僕は通行許可書代わりに渡された短剣を見る。

 確かにエニファーはこれを門番に見せると、彼の元へ直通で行けると言って、渡してくれた。

 そんな激ヤバなものなんて使わないと思っていたのだけれど、早速使うことになるとは。

 いや、というよりも結局これ何?!

 普通の貴族証のようなものではないのは確かなのだけれど。

 

「さ。着いたわよ」


 考えながら歩いていると王城の前に立っていた。

 目の前には騎士のような門番が二人。


「何者だ! 」


 武器に手をやる門番に、隣から僅かに殺気が漏れるのを感じる。

 これはまずい。

 すぐに自己紹介をして目的を告げて、渡された短剣を見せた。


「っ……これは! 」

「本物か? 」

「確かに殿下から話は聞いているが……」


 僕と短剣を見て考える二人の門番。

 よかった。

 僕がこれをもってやってくると話は通してくれているみたいだ。

 この際彼らの驚きようは気にしないようにしよう。


「失礼しました。エニー殿下の元へ案内致します」


 門番が僕に短剣を返す。

 二人並んだかと思うと背筋を伸ばし、僕に敬礼をしてそう言った。


 だから何これ!

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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