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第55話 緊急御前会議

 王城の会議室にて。

 ウィリアムズは重苦しい雰囲気の中ガイアと同じ側面に立っていた。

 彼らの前には王冠を被った男性「デイビット」が、その隣には第一王子「エルリオン」と第二王子「エニー」が座っている。


 この国の国王「デイビット・フォレ」は高めの身長をもつ短い金髪と茶色い瞳をした男性だ。

 体つきはガタイが良いというわけでもなく、細いというわけでもない。

 どの部分をとっても「平均的」という印象を受ける。


 第一王子「エルリオン」は明るいショートの茶色い髪と瞳を持った男性で、隣に座る弟エニーよりも身長は高い。

 隣のエニーを不満げに見て足を組んだり崩したりしている。


 アルフレッド達も知る第二王子「エニー」は兄とは異なり短い金髪と緑色の瞳をしている。

 王都を元気よく歩いていた時とは異なり物静かな印象を受ける。


 一段高い所に座っている王族から見て貴族達の列は二つに分かれている。

 列に関して特に決まりがある訳ではない。

 しかし王位継承権争いが本格化する中で、第一王子についている者はエルリオン側へ、第二王子についている者はエニー側に列を陣取るようになった。

 ウィリアムズはガイアと同じくエニーの席の正面に立っている。

 最近まで派閥に入ることが出来なかったウィリアムズだが、ガイアの勧めもありガイアと同じ派閥に属している。


 時間が経つにつれて貴族が入って来る。

 入って来る貴族達が左右に分かれるのを見ながらも、定時になったことを確認し、宰相(さいしょう)が口を開いた。


「定時になりました。これより御前(ごぜん)会議を始めます」


 そして長い会議が幕を開ける。


 ★


「まずは情報の共有を」


 宰相が纏められた情報を各貴族家に説明する。

 それに「けしからん」と(まゆ)(ひそ)める者、無表情の者等々様々な様子を(てい)していた。


「殿下を殺害しようとしていた者は大会に出場していた現近衛騎士「ケイト・ブラウン」により阻止されました」


 暗殺が失敗したことで第二王子派閥の貴族達はほっと息を吐いている。

 目の前にエニーがいるため失敗なのは確かである。

 しかし危機一髪だったのも確かで、自分達の未来がかかっている分、彼らが安堵の息をするのも理解できる。


 この国は一つだが貴族達が派閥に分かれているのには幾つか理由がある。

 ウィリアムズ達が所属する第二王子派閥は、所謂(いわゆる)「急進派」と呼ばれる者達。

 この者達は停滞している現状を打破するために新しい方針を王にとってもらおうとしている者達である。

 逆に第一王子派閥は「保守派」と呼ばれ、今までの体制を維持しようとしている者達である。

 貴族達が自分達の政治信条に合わせた王をたてようとするのは当然の動きだろう。


 生き残っていた。

 ウィリアムズ達第二王子派閥はこのことに殺意のような視線を受けながらも宰相の言葉を聞く。


「また殿下が政務で出席していた武闘会を襲撃した魔物に関してですが、こちらは最近になり各地で出現か報告されている悪魔獣(ビースト)と呼ばれるものであることが判明しております」


 それを聞き周りがどよめく。

 そのような中ウィリアムズは自分の領地外でも悪魔獣(ビースト)が出現していることに、少し驚く。


悪魔獣(ビースト)が出現したのは確かウィザース男爵領だったはず。ウィザース男爵が犯人ではないか? 」


 貴族としての発言にしては無責任な言葉にウィリアムズはムッとする。


「暴論で証拠のない話だな。そう言えば、貴殿の領地では多くの悪魔獣(ビースト)が発生しているみたいだが? 」

「……数ではない。どこが発生源かが問題だ、ウェルドライン」

「ノーゼ。それならばこの国内全域が対象になる。いやもしかしたら国外も……」

「それこそ暴論だ!!! 」


 ノーゼ公爵は宰相と国王に(にら)まれていることに気付く。


「……失礼しました」


 ノーゼ公爵が正面を向き頭を下げる。

 だがその声に敬意が籠っているようには思えない。

 形だけの謝罪である。

 だが二人は気にせず会議を進めた。


「今回の騒動に乗じるかのように誘拐の発生が確認されております」

「被害は? 」

「現在調査中でございます。陛下」


 宰相の言葉に深めに息を吐くデイビット。

 今日起こり報告としてここまで上がって来たというだけでも十分だと彼は判断する。


「早急に実態を明らかにするように」

御心(みこころ)のままに」


 宰相が深くお辞儀をする。僅かに遅れて全員が頭を下げる。


 悪魔獣(ビースト)の襲撃から始まった一連の事件は、第二王子暗殺未遂や王都民誘拐事件にも発展した。

 早急な対処が求められる中、王命の元調査団が組まれることになる。

 しかしそれは別の話。


 ★

 

「上手く取り込んだようだな」


 夕食の為一旦会議が休憩になる。

 エニーが会議室を離れて食事に向かおうと足を進めていると、聞きなれた声が彼に届く。


 ――第一王子エルリオン・フォレだ。

 

「取り込んだ、とはどういう意味でしょう? 兄上」

「言葉のままだ。聞くと、武闘会で友好を広げ、()のウェルドライン公爵家の娘を(かこ)ったそうじゃないか」

「そのようなことはありませんよ」

「大人しいお前にしてはやけに行動的だ。()れたのか? 」


 エニーが否定するも言葉を続ける。

 彼は兄の言動に怒りを覚えぎろりと睨む。

 弟の見たことのないような表情に眉を顰めるエルリオン。


「彼女とはそのような関係ではありませんよ」

「ならなんだ? 父上の点数稼ぎか? 」

「そう感じるのは兄上に余裕がないからでは? 」


 いつもならここまでは言わない。

 エニーはつい出た言葉に若干後悔しながらも兄を見る。


「……ちっ。粋がるなよ」


 そう言葉を残してエルリオンはその場を去った。

 エニーはその背中を見ながら寂しい表情を浮かべていた。

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