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ハズレ枠の転生貧乏貴族、武姫を継承し最強へ至る  作者: 蒼田
第1章: あったか家族と転生者の少年
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第4話 訓練、そして襲撃

「さて。魔法の練習を始めましょう」


 マリー達を迎え入れた翌日、僕達は館の外に集合していた。

 今日から魔法の勉強。

 正直なところ物凄いワクワクしている。

 実際に魔法を勉強するのは僕だけど、集まっているのは武姫達と母上の五人。父上も来たがっていたけど仕事があるらしく執務室に籠っている。


「アルちゃん。今までに体で魔力を感じる練習をしたことはある? 」

「……少しだけ」

「そっか。そうよね。昨日魔力を込めることができたもんね。けどまだ本格的に練習をしたことないといった感じかな? なら今日は魔力操作の練習をしましょう! 」


 こうして今日から魔法を使うにあたっての基礎となる魔力操作の勉強が始まった。

 

 それから数か月座学に実技に勉強の日々が続いた。

 マリー(いわ)く僕は飲み込みが早いらしく、魔力操作から始まり身体強化、障壁、魔力視を覚えることができた。

 また身体強化を覚えた時くらいに剣術の練習の一環としてランニングが始まった。

 楽々走るフレイナを(うら)めし気に見ながらもついて行き、やっとの思いで身体強化をかけた状態で動き、魔力操作で心肺機能を上げる事に成功した。

 そして望んでいない日がやって来る。


「さぁ(あるじ)殿! 剣術の訓練です! 」


 木剣を持つフレイナの顔はいつもに増して輝いているように見えるのは気のせいじゃないだろう。

 対して僕のテンションは高くない。

 護身術を身に着けるのは確かに必要なのだろうけれど、痛いことが好きなわけでもないからだ。


「主殿! いつでも打ち込んできてください! 」

「……型とかは? 」


 聞くと「忘れていました! 」と慌てて型を教えてくれる。

 いつもはキリッとしたフレイナがドジを踏んで空気が和らいだ。

 どれだけ楽しみにしていたんだよ、と少しほっこりしながら剣術の稽古が始まった。


 ……これは稽古と言って良いのだろうか。

 と思う程にフレイナにボコボコにされる日々が続いた。


 ある時は僕が僅かに動いた瞬間吹き飛んで、ある時は消えたかと思うと吹き飛んで。

 身体能力で敵わないことはわかっている。だけどここまで一方的にボコられるとやめたくなるのは仕方がないと思う。

 吹き飛び痣を作る日々が続いたある日の事。

 マリーに無属性魔法「硬化」と「視覚強化」、「魔力感知」を教わった。

 これで少しマシになるかと思ったのだけれど――。


「はぁ……はぁ……はぁ……。速すぎ」

「まだまだこれからですよ。主殿」


 大親友地面君に横たわっている僕をフレイナが覗き込む。

 いつもは綺麗だなと感じる赤い髪が僕にかかるけど、今は僕を燃やそうとしている業火に見える。


「……僅かに、……影のようなものが見えるようになったけど……はぁ……はぁ」

「素晴らしい成長です。ならば次はもう少しギアを上げましょう」

「え……」


 余計なことを言ってしまった。

 口角を上げるフレイナを見て後悔するも時すでに遅し、のようだ。


「さ。休憩は終わりです。始めましょう」


 今日もまた僕は吹き飛んだ。


 ★


 鬼の訓練が続くある日の事。

 皆で夕食を食べているといきなりフレイナが大声を上げた。


「主殿! 」

「あらあら~~~あら~」

「わわわ、何か向かってきているです」


 驚くのも一瞬、すぐに臨戦態勢に入ったマリー達をみて異常事態だということがわかる。


「アルちゃん。どうする? 」

「どうするって……何を? 」

「生け捕りにするか殲滅するか」


 マリーが冷たい声で言う。


「わたし達ならどちらもできるけど」


 そう言われてもわからない。

 父の方を見ると困ったような顔をした。


「……そうだね。この家を狙う奇特(きとく)な賊が誰の手の者によるか知りたい。出来れば生け捕りにして欲しいが……」

「生け捕りで頼むよ」

「わかったわぁ」


 僕が指示を出すと自信満々にマリーが頷く。

 けれど誰も食堂を動く気配がない。

 今夜襲を受けているんだよな?


「アリスの力でこの館の空間を閉じたのです。なので誰も入る事は出来ないのですよ」


 えっへんとアリスが胸を張る。

 く、空間を閉じた、か。

 アリスが力を使う所をあまり見たことがないけど彼女が規格外なのはよくわかった。


「……来たみたいね」

「空間を閉じているのによく見えるね」

「直接透視で見ていないから大丈夫よ。感覚的には空間を連結して視覚を飛ばすといった方がわかりやすいかも」


 マリーも大概だった。

 呆れているとマリーが悪い笑みを浮かべる。


「ふふ。慌ててる、慌ててる」

「なら後は私が行こう」

「頼んだわよフレイナちゃん」

「もちろんだ。こういう時の為に護衛の私がいるんだからな」

「暗い所怖いくせに」

「そ、そんなことは、……ない」


 フレイナに温かい目線を送る。

 目線に気が付いたのか気まずく目線を逸らされた。


「しかし……コホン。暗いと何があるかわからない。念のためだ。光鎧(こうがい)


 唱えた瞬間フレイナが光り輝き出した。


「ちょっ、(まぶ)し! 」

「相手に逃げられたら元も子もない。アリス! 」

「分かっているですよ。転移門開錠! 」


 ゆっくりと目を開けると一瞬黒い空間が見える。

 さっと赤い物が入っていったと思うと向こう側から声にならない悲鳴が聞こえたような気がする。


「玄関だけ開けたのです」

「では尋問と行きましょう。ふふふ」


 どうやらフレイナの戦闘は終わったようだ。

 その戦闘時間僅か数秒。

 恨むならこの館を襲撃した自分を恨んで欲しい。


 ★


 マリーとアリスを連れて僕達は玄関を出るとフレイナがこちらを向いた。

 彼女が僕に向かって一礼する。

 フレイナから目線を下にやるとそこにはローブを羽織った人が三人いた。


 僕達は止まる。しかしマリーは魔導書を開けたまま止まらず賊の方へ足を進めた。


「さて。この館を襲った理由はなに? 」


 威圧の籠った言葉に体がびくっと震える。

 僕に向けられていないというのにこの威圧。

 震えない方がおかしい。


 そっと体が寄せられる。

 上を見ると母上の青い瞳が優しく覗いている。


「……魔力素体を……確保……がッ」


 母上に少し寄りかかっていると賊が喋り出す。

 けどすぐに倒れた。


「マ、マリー? 」

「わたしじゃないですよぉ」

「で、でも……、死んで、る、……よね? 」

「死んでますねぇ。多分ですけど情報を外に出さないための自殺術式かな? 」


 いやそうじゃなくて、と言いかけるがぐっと飲みこむ。


 そうだ。ここは日本とは違う世界だ。

 価値観も違えば命の重さも異なる世界。

 暗殺者と言っても日本、いや地球のそれと全く違う。

 異世界と知っていても今までどこか地球の延長と思っていたようだ。


 額を流れる汗を気にせずぐっと拳を握る。

 今ならマリーやフレイナが一生懸命僕に魔法や剣術を教えていた理由がわかる。

 自分の身を、家族を守るためにはもっと実力をつけないと。


「母上」

「なに? アル」

「僕、もっと頑張ります」

「……無理だけはやり過ぎないようにね」


 その言葉に返事をせずマリーを見る。

 隣に父上がよるが首を横に振っている。


 今回何故襲われたのかわからなかったけど、脅威は身近にあるとわかった。

 まだ僕は考えが甘かったみたい。

 守るために頑張らないと、と再度気合いを入れ直して今日の騒動を終えた。


 ★


 襲撃から数か月たった。

 僕が気合いを入れ直したことで鬼教官(フレイナ)のやる気が異常にあがったけど、まだやめないでいられる。

 これも彼女の動きに少しずつ慣れることができているという実感があるからだと思う。


 カン!!!


 フレイナの木剣と僕の木剣がぶつかり合う。

 好戦的な黒い瞳と睨み合う。


「ぐっ! 」


 フレイナに押し負け木剣ごと後ろへ押し込まれる。

 けどまだ負けない!!!


「身体強化! 」


 体勢を戻してフレイナに押し込む。


「う、おぉぉぉぉぉ!!! 」

「見事です。が……」

「がっ! 」


 押し返したと思ったけど、それも一瞬。

 すぐに再度押し込まれて、――僕は大親友地面君とあいさつした。


「先ほどの身体強化は見事でした」

「嬉しい言葉だけど現実は厳しいよ」

「まだまだ負けませんよ」


 フレイナが伸ばす手を取り立ち上がる。

 服を叩いているとフレイナが僕の方を見て口を開いた。


「来週なのですが何か御用時はありませんか? 」

「ないけど? 」

「丁度良かったです。そろそろ実践と行きましょう」

「実践? 」

「はい。魔物の討伐です」

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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