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第35話 リーグルド隊 2 マリーの告白

 リーグルド隊を結成して数週間経ったある日のこと。

 マリーがいきなり「ナナホシ商会の温室が襲撃された」と報告してきた。


「本当? マリー」

「本当よ」


 マリーの言葉に緊張が走る。

 冗談で言っている風ではないね。


「被害は? 」

「特に出なかったわ」


 皆を連れて館に向かう。

 マリーに状況を聞きながら整理をしていく。

 被害が出ていない。

 これはマリーが構築したあの凶悪な防衛システムと迎撃システムが発動したからだろうね。


「わかった。じゃぁ準備をして相手から情報を拾いに行こう。生きているかは不明だけど」

「その必要はないわ」


 足を止めてマリーを見て首を傾げる。

 必要ない、と?


「もう情報を手に入れているわ」


 マリーが得意げに言う。

 流石マリーだ。仕事が早い。


「なら襲撃者の拠点を潰しに……」

「その必要もないわ。もう潰しているから」


 ……やけに仕事が早すぎる気がする。

 だけど失敗を(さと)り逃げられる前に対処できたと考えると彼女の行動は最善だったのかもしれない。


「あの……ね。アルちゃん」

「なに? 」

「襲撃者の拠点の事なのだけど……、その……怒らないで聞いてほしんだけど、ね」


 マリーがそう言った瞬間嫌な予感がしてきた。

 そう。聞いたら後悔するような……そんな予感だ。

 しかし聞かないわけにはいかない。

 意を決してマリーに聞く。


「町ごと消し飛んじゃった」


 マリーは最後に笑みを作って報告する。

 その笑みに一発拳を入れたくなるけど、ここは我慢。

 説教は後にしてどういう経緯が事情を聞く必要がある。

 だけど……やっぱり聞かなかった方が良かったかな。


 頭が痛くなる思いで館に戻る。

 マリーのしでかしたことの規模の大きさにリーグルド隊の面々が固まっていたけど、これから彼らもマリーの理不尽に付き合うことがあるだろう。

 ということで父上や母上も集合させて事の次第を聞いた。


「町グルみの犯罪組織、か」


 父上が頭に手をやりながら話を纏める。

 思ったよりもまともな理由だった。

 しかしやるなら一声あってもよかったと思う。


「お、怒らない? 」

「まぁ全員が犯罪者ならな。因みにリーグルド。マリーが言ってた町について何か知ってるか? 」

「あ、あぁ。知ってるぜ。マリーさんの言う通り町全体が犯罪組織みたいなもんだ」

「治安が悪いのは当然で入ったら最後。まともな状態で帰ってこれないとも言われていましたね。過去形になりますけど」


 リーグルドに続いていヒョウカも教えてくれる。

 本当に町が犯罪組織のようなものだったみたいだ。

 跡形もなく滅ぼすのはどうかと思うけど、もう今更。

 それに考えてみればその犯罪組織がナナホシ商会の温室を狙ったんだ。

 いつ自分達に危害が加わってもおかしくなかったと考えると、怒るに怒れない。


「……アルフレッドは町が一つ無くなったってのにさっぱりしてるんだな」


 リーグルドがため息交じりに聞いてくる。

 まぁ思わない所がないと言えば嘘になる。

 けれど僕は皆を完璧に守れるほど能力は高くないんだ。


「僕は自分が守れる範囲を過大評価しないからね。今回の一件は僕達に危害を加える相手を先んじて倒すことができたと考えているよ」


 領民は領主の子として守るべき存在だ。

 けど僕が守りたいのは見ず知らずの領民ではなく家族である。

 前世の影響か時々情にほだされて手を差し伸べることはある。


「非情に思えるかもしれないけど、自分が本当に守りたいものを見失ってはダメだとも思っているよ」


 リーグルド達に自分の考えを伝える。

 やっぱり周りの人からすれば非情に見えるかな?

 でもここで取り(つくろ)うのは無しだ。

 取り繕ってあとでお互いに食い違いが起こったらいけない。

 最悪編成したリーグルド隊が解体されるかも。


「お考え、わかりました」

「確かに自分が守りたいものを見失ってはダメですね」

「アルフレッド様の言う通りだ」

「十五にしてその境地(きょうち)。見習いたい所です」


 リーグルドが声を上げると皆が続く。

 彼らの言葉にホッとする。

 次の話に移ろうかと考えているとリーグルドが動き出す。

 何をするのだろうとみていると、片膝をついて宣言した。

 

「我らリーグルド隊。アルフレッド閣下に忠誠を」

「「「忠誠を」」」


 いきなりの事でビックリだ!

 どうしたらいいのかわからず慌てているとリーグルドが茶化してくる。


「養ってくださいね。大将」

「はは。頑張るよ」


 まだ始まったばかりのリーグルド隊だけど、これからも良好な関係を結べそうだ。

 そう感じた一幕だった。


 ★


 なくなった町についての話し合いは終わった。

 町については後から調査団という形でリーグルド達を率いて向かうことになった。

 放置したいけどそう言うわけにはいかない。

 忽然(こつぜん)と町がなくなったことはすぐに知れ渡るだろう。

 その時領主側でなにも調査をしてなかったとなると後々面倒だからね。

 

「実はね、アルちゃん。あと話しておきたいことがあるんだけど」

「……まだやらかしたことがあるの? 」

「やらかしじゃないわよ」


 マリーにジト目を送りながらため息をつく。

 マリーは今回かなりの問題事を起こしたと思うんだけどまだあるか。


「温室を襲った襲撃者なんだけどね。アリスちゃんの力を使って相手の情報を得ることができたのよ」

「相手の情報? 」

「そうよ。襲撃してきた相手はあの町でもかなり高い地位にいたみたいで拠点以外にも色んな事をしっていたわ」


 それは嬉しい報告だ。


「そこで、彼らを雇った相手なんだけどね。結論からいうとホエミの町の医師デベルトと同じ町のナインという聖職者だったわ」

「医師と聖職者……」


 ホエミの町というのは名前は知っている。

 けれどもこのデベルトやナインという人達は知らない。

 しかしこの二人が黒幕か。

 となると――。


「火竜草、いやモンスター病の治療薬が目的か」


 この二人は恐らく悪徳医師と悪徳聖職者。

 今までモンスター病の治療薬であくどい事をして今回痛い目を見たのだろう。

 そして逆恨みのように温室を襲撃したと。


 いつか来るとは思っていた。

 しかしこんなに早く来るとは、正直驚きだ。


「今すぐ調査に向かおう。皆」

「「「はい! 」」」

「今からホエミの町に向かう。準備をしてくれ」

「「「了解しました」」」


 リーグルド隊に準備をするように伝える。

 僕も準備をしてホエミの町に向かった。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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