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第33話 リーグルド隊 1 リーグルド隊結成!

 訓練を終えて父上の執務室に向かう。

 ウィザース男爵家直下の部隊か。

 必要と思いつつも先延ばしになっていた件だ。


「少し心躍りますね」

「それはフレイナだからだよ」

「わたしもアルちゃんに同意見だわ」


 僕とマリーが笑みをこぼしているフレイナに言うと、驚いたような表情をする。

 (つるぎ)の武姫として作られたフレイナは訓練や部隊とかに心躍るかもしれないけど、普通はそんなこと無い。

 僕としてはやっと部隊を編成できるだけの資金が揃ったことに感動を覚える。


「長かったわね」

「これはマリーのおかげかな」

「いいえ。商品のアイディアを出してくれるアルちゃんのおかげよ。わたしは作っているだけだもの」


 そんなことは無いはずである。

 確かに商品を作っているのはマリーだ。しかしそれだけではない。

 商品を量産するための工場を建てたり資金運営をしたり、貴族と交渉をしたりマリーの活躍は幅広い。

 やはりマリー様様である。


 さて。どんな形になるのかなと想像を膨らませながら父上の執務室に向かった。


 父上の執務室に入るとすぐソファーに座るように促された。

 資料を机の上に運んできているのだけれど、少し顔色が悪い。

 最近疲れているのかなと少し心配だ。

 少し気遣いながらも父上に話を聞く。

 父上は資料をこちらに渡しながら説明を始めた。


「今私が考えているのは派遣型の部隊だ」

「派遣型? 」


 領地を治める貴族には領地の治安を守るための部隊の編成(へんせい)が可能だ。

 派遣型となると騎士団になるのだろうか。


「騎士団……。そうだね。騎士団という形がしっくりくるけど、今の所騎士爵を与える予定はない」

「小規模な領軍のようなものでしょうか? 」


 父上が大きく頷く。


「もう少し資金に余裕があれば隊長クラスに爵位を与えてもいいんだけどね」

「まだ余裕がない、と」

「心苦しい限りだけどね。けど今僕とアネモネがちょっと資金調達に出ているから、少し待ってほしいかな」

「資金調達ですか? 」

「あぁ。まぁ貴族らしい貴族の仕事ということだよ」


 国家運営にかかわる会議にでも出ているのだろうか。

 多分ガイア様のコネクションだろう。

 最近疲れているのはこのせいか。

 けど体は壊してほしくない。無理はして欲しくないものだね。


「ともかく小規模な部隊から始めようと考えている。それこそ数人とかね。そこから徐々に増やしていく予定だよ」


 何事もやってみる、という所からのようだ。

 けれどちょっと強引すぎるような気がする。

 いつもの父上なら、部隊創設のような重要なことは資金が揃い慎重に行うはずだ。

 これはもしかして……。


悪魔獣(ビースト)のことでしょうか? 」


 言うと父上は両手を上げ降参のポーズをして苦笑いする。


「やっぱりアルフレッドには敵わないな。その通りだよ」


 ひとしきり笑うと真面目な表情をする。


「今までは冒険者ギルドに魔物対策を任せていた。私はこの方法について資金の少ないウィザース男爵家のやり方として間違っていないと今でも考えている」


 今までウィザース男爵家は超が幾つつくかわからない程の貧乏貴族だった。

 それこそ下手な商人よりも貧乏だっただろう。

 領地経営にお金を回していたことが原因なのだけれど、その結果領軍を編成することができないでいた。

 その代わり対策本部をウィザース男爵家に置く形で、魔物対策は冒険者ギルドに、各町や村の治安はその地の衛兵に任せている。


「しかし新たな脅威が現れた。今までのやり方では対処しきれないのは目に見えている。故の部隊編成だ」


 僕は父上の言葉に頷き同意する。


「アルフレッドに来てもらったのは他でもない。アルフレッドに部隊の人材を見つけてほしいんだ」

「僕が、ですか? 」

「ああそうだ。頼むよ。もちろん私の方でも探してみる。それとは別にアルフレッドの目線で人材を見つけてほしい」

「構いませんが……。何故でしょうか? 」

「アルフレッドの方が私よりも人を見る目がありそうだからね」


 父上が笑顔で言うけれど、これは責任重大だ。

 僕は執務室を出て考える。

 思いつかないのでフレイナを連れて町に出ることにした。


 ★


 僕は特定の人とコネがあるわけではない。

 しかも必要とされる人材は悪魔獣(ビースト)と戦っても打ち負けないような人。

 そんな人いるのか? と疑問に思いながらも日課である大森林の魔物肉を採ってエズの町に入った。


「リリアナ殿は誘わないのですか? 」

「実力に申し分ないだろうけど、公爵家の娘を引っ張ってくるのは無理があるね」

「……一応誘っておいた方が良いと思いますが」

「リリーは怒るだろうけど、あとで連絡を入れておくよ。今回はリリーのお叱りを甘んじて受け入れよう」


 自分の領地の部隊に他領の領主の娘を入れるなんてどんな怖いもの知らず?

 そんな貴族がいるのなら是非見てみたいね。


 誰か優秀な人でもいないか考えながら魔物肉を精肉店に卸す。

 人材と言えば冒険者ギルド。

 安直(あんちょく)だけど人材を手に入れる方法としては一番手堅い場所でもある。


 いつもの煉瓦(レンガ)状の建物の中に入る。

 騒がしい声が耳に届くけど、気にならない。

 それだけ頻繁に冒険者ギルドに来ているということになるね。

 と心の中で苦笑し周りを見ると七(さい)の剣と氷炎の二グループが重たい雰囲気を出している。

 これは面倒事かな?

 よし。すぐに離れよう。


「アルフレッドじゃないか」


 ……逃げることが出来なかった。

 仕方なく振り向いてリーグルドに手を振りながら挨拶すると他の面々とも挨拶を。

 けれど空気が変わる訳でもなかった。

 どちらかというと「話を聞いてほしい」という雰囲気を出している。

 逃げたい。だけれど、これは逃げれないな。


「……なにかあったの? 」

「それが……さ」


 聞くとリーグルドとヒョウカが真っ白になりながら説明を始める。


「実はメンバーの一人が結婚して、さ」

「氷炎も、です」

「というよりも七彩の剣(俺ら)氷炎(こいつら)のメンバーが結婚して、さ」

「「はぁ……」」


 二人一緒に大きなため息を吐く。

 この二人が結婚したんじゃなくて他のメンバーか。


「嫉妬? 」

「いやアルフレッド、それは違う」

「確かにメンバーが減るのは冒険者として活動する上で痛い出来事ではありますが、結婚は喜ばしい事です」

「だが違う問題が出てきてよ。ほら……パーティーを組むにあたっての人数とか、さ」

「……現在氷炎は二人。これからメンバーを募集する気もおきませんしどうしようかと悩んでいたのです」


 二人は再び大きなため息をつく。

 メンバーが少なくなってこれからの活動をどうしたらいいのかわからない、といった所か。

 このままいくと解散しそうだね。

 彼らはCランク冒険者パーティーだけどその実力はBランク上位に迫るほど。

 実力者をそのまま引退させるのは冒険者ギルドにとっても、この領地にとっても損失だ。

 そうだ!


「それなら、さ。一つ案があるんだけど? 」

「案? 」

「誰か冒険者でも紹介してくれるのでしょうか? 」


 そうじゃないよと軽く手を振り咳払い。

 僕は七彩の剣と氷炎に向けて提案する。


「ウィザース男爵家で働かない? 」


 ★


 七彩の剣と氷炎にウィザース男爵家直下の派遣型部隊に入らないかとスカウトした。

 拒否されることも頭に入れていたけど、すんなりと了解を得ることができた。

 七彩の剣と氷炎が父上と本契約を結んだ後、僕達は再度顔合わせをしている。


「改めてよろしく……、いやよろしくお願いします! 」

「「「よろしくお願いします! 」」」

「こちらこそよろしく」


 この部隊を取りまとめる役割はリーグルドに任せた。

 よってこの部隊の名前は「リーグルド隊」である。

 どんな人達かというと、こんな感じ。


 リーグルドは短い茶髪と黒い瞳を持つ男性剣士。

 同じ七彩の剣からはマルクという二メートルを超えるムキムキマッチョ剣士も部隊に入ることになった。

 氷炎からはヒョウカとリンカ。

 ヒョウカは青髪ロングの赤い目をした、氷と火のニ属性魔法の使い手で、リンカはロングの薄く青い髪を持つ黒い瞳の女性だ。

 なんとリンカも氷と火を使うことが出来るみたいだけど、火属性魔法の方が得意との事。

 魔法使いの地位が高いこのフォレ王国で、何でこの二人が冒険者をしているのかとても気になる所だけど、詮索(せんさく)はもっと関係を深めてからだね。


 リーグルド隊の人達にマリー達を紹介する。

 流れでリリーの事も紹介したけど、その時リーグルドがうっかり「剣鬼」とこぼしてしまって吹き飛ばされたのは、仕方のない事だと思うよ。


 ともあれリーグルド隊を結成してから数週間が経った。

 訓練の日々が続いたけど、ある日マリーが真剣な表情をしてやってきた。


「ナナホシ商会所有の温室が襲撃されたわ」

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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