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第31話 大森林奥地での調査 1 剣鬼「リリアナ・ウェルドライン」

 エズの町の冒険者ギルドでの話し合いは終了した。

 僕達の調査にリリーが同行することになった。

 拒否したい気持ちでいっぱいだったけど断る事は出来ない。

 結局調査に入る日程を決めて、あの場は一度解散となり僕達は家に帰った。


悪魔獣(ビースト)。普通の魔物だけで手はいっぱいなのだけれど」


 父上が家族の皆に今日話し合ったことを説明する。

 父上は深く溜息をついて「どうしたものか」と考えだした。


「最悪悪魔獣(ビースト)がこの館を襲撃することも考えないといけませんね」

「……この館を襲撃するなんて奇特(きとく)悪魔獣(ビースト)がいるなんて思いたくないけど」

「何事も最悪は考えておくべきです」

「アルフレッドの言う通りだな」


 もし悪魔獣(ビースト)を作っている組織が領内にいるのなら、僕が悪魔獣(ビースト)を倒したことに気が付いているかもしれない。

 自分達の活動を邪魔されたくないと組織が考えたら、この館を狙ってくることは十分にあり得る話だ。


「マリー。この館に結界のようなものを張ることは出来る? 」

「出来るわよぉ。あとで魔法陣を描いておくわ。迎撃システム、いる? 」

「頼もうか」

「わかったわ。あ、けどアルちゃん」

「なに? 」

「魔法陣を動かすための魔石が必要だから後で頂戴ね」

「わかったよ」


 館を守る力は幾らあっても足りないくらいだ。

 ここはマリーの力を頼らせてもらおう。


「しかしガイア様は何を考えているんだろう」

「リリアナ様の事かい? 」


 父上に頷く。


 ガイア様の言葉はこうだ。

 本来は何人か連れて行ってもらいたかった。しかし僕の足手纏いになるかもしれない。

 なら少数精鋭ということでリリーを、ということらしい。


「リリアナ様はアリスの力を知っているからじゃないかい? 」

「それはあり得ますが、あの娘ラブなガイア様がわざわざ危険な所へ送り出すとは思えず……」


 リリーにはアリスの力を時空間魔法の一つとして説明している。

 だからいざという時は転移で脱出できるから、それをあてにしているのではという父上の予想は分かる。

 しかし転移する間もなくやられる可能性は幾らでもある。

 単純にスピードで上回られるとか……。


「まぁアルフレッドの力をそれだけ信じているということだろうね」


 父上がどこか優しげな表情でいう。

 それは嬉しい事なのだけれど、やはり疑問は残る訳で。

 しかしここで議論していても答えはでない。

 少し悶々(もんもん)としながら当日を迎えた。


 ★


「今日はよろしくお願いしますね。アル」

「よろしく」

「リリアナ殿。今日は私とアリスもついておりますので」

「よろしくなのです! 」

「よろしくお願いしますね。フレイナさん、アリスさん」


 エズの町の入り口付近。

 僕はフレイナとアリスを連れてリリーと合流した。

 リリーはいつもの白い生地(きじ)に金の装飾をした黒髪が良く映えるスタイルしている。

 どこかの高位の騎士みたいな格好だけど、見ようによっては王子様にも見える。

 派手過ぎるようなきもするけど、いつもこの格好で戦闘訓練をしていて動きなれているからだろうから、この服がベストだろうね。


 今日も、いつものように武姫達を連れてきている。

 けれどアリスはリリーの前で転移以外の力を使うわけにはいかない。

 よって火力担当としてフレイナを連れてきている。


「今日一日で最奥まで? 」

「うん。その予定だよ」

「……奥地に入るだけでも困難と言われる場所なのに。やはりアルは非常識ですね」


 大森林の浅い所で軽くウォーミングアップをして一息つくと、リリーが今日の予定を聞いてきた。

 リリーに軽くディスられた気がする。

 まぁいいか。


「流石にこの辺じゃリリーの相手にはならないか」

「もちろんです。これでもアルに追いつくため、ウェルドライン公爵領側の大森林で鍛えてますので」

「それは頼もしい」


 大森林で鍛えているとは知らなかった。

 少しは安心だけど、鍛えているといっても奥地までは行ったことはないと思う。

 正直奥地とその手前では出て来る魔物のレベルが違う。

 出来るのなら今からでも引き返してもらいたいけど……、いや違うね。


 ――これはリリーに失礼だ。


 リリーは覚悟をもってここにきている。

 そんなリリーに「今から帰れ」というのは違うだろう。

 リリーは守るべき相手ではなく、一緒に戦う仲間だ。


「どうしたのですか? アル」

「いや何でも。先に進む? 」

「進みましょう」


 腰を上げて前を向く。

 不思議そうに見てくるリリーに少し誤魔化しの入った笑みで返して僕達は先に進んだ。


 いつからかわからないが、リリーは「剣鬼」と呼ばれるようになった。

 彼女はそう呼ばれているのを嫌っているけど、確かに彼女が怒った様子は正に「鬼」そのもの。

 以前「納得の二つ名だ」と(こぼ)した時、烈火(れっか)(ごと)く怒られたのをよく覚えている。

 またリリーは別の二つ名でも呼ばれている。


 ――疾風迅雷(しっぷうじんらい)


 目にも留まらぬ速さで敵を仕留めて行くことから、そう名付けられたらしい。


「以前に見た時よりも格段に速くなっていますね」

「一撃一撃も鋭くなってる」

「おっきな木ごと、ざばーーんって切れたのです! 」


 現在奥地手前。リリーは魔物相手に無双していた。


 リリーは木を切った後、倒れている木を足場にしてジャンプする。


「キキ?! 」

「はぁぁ! 」


 風を纏い鋭利さが増した剣で、木々を器用に移動していた魔物を、――斬る。

 しかし彼女はそこで終わらない。

 今度は空中で回転し、逆さまに足場を作り地面に突撃。


「ギギ?! 」

「ギョ! 」


 そして数十の大型魔物を斬り裂いていった。


 リリーは赤い目を光らせ次から次へと魔物を捕捉し斬っている。

 途中から参戦するタイミングを見計らっていたのだけど、必要なかったみたいだね。

 この様子を見たら「剣鬼」も「疾風迅雷」も納得だ。

 ま、まぁ少なくとも淑女(しゅくじょ)が見せる戦闘ではないかな。

 けど僕はお高く留まった戦い方よりもこっちの方が好きだね。


「僕達も」


 広げていた魔力感知に魔物が引っ掛かる。

 方向はリリーが戦闘をしている向こう側から。

 もうすぐ戦闘は終わりそうだけど休憩を挟んだ方が良いだろう。

 マジックソードを構えてリリーに声をかけようとする。

 しかし戦闘を終えたリリーが僕の方を向いて、剣に着いた血を払った。


「アル。大森林の奥地から向かってくる魔物は私が倒します」


 ギロリと赤く輝く瞳で訴えてくる。

 戦闘で高揚しているのか、瞳だけでなく顔も赤い。

 手出し無用、か。


「わかったよリリー。けど不味(まず)そうだったら入るからね」

「その時は華麗に助けてくださいね」


 彼女が微笑む。

 魔物が荒い息をしながら姿を現した。


「ホーンタイガー……」

「サイズは大きめですね」

「いや縦の大きさがリリーの三倍くらいはあるんだけど」


 大森林で育った影響なのだろう。通常種の四倍以上は大きなホーンタイガーが現れた。

 ホーンタイガーは猫のように柔軟な体をもつ器用な魔物だ。

 このホーンタイガーもその性質をもっているのなら少し厄介かも。


「一瞬で終わらせます」


 リリーがポツリと言うと、彼女の体がバチバチっと音を鳴らし始める。

 剣を構えたかと思うと――、


「グル? 」


 瞬き程の時間でホーンタイガーとは反対側に移動していた。


 ズシャァァァァァァァ……ズドン……。


 ホーンタイガーが倒れ込む。

 奥地の魔物も一瞬かよ、と苦笑いを浮かべながらホーンタイガーを見ると、首が焼け焦げている。


「リリアナ殿も強くなられましたね」

「私はまだまだです。疾風迅雷と呼ばれていますが、速度でアルやフレイナさんに勝てた覚えがありません。疾風迅雷と呼ばれていますが」


 決して「剣鬼」ではない、と言う強い意思を感じる言葉だね。


「でもすごい一撃……ん? 」

「なにか来ましたね」


 妙な気配を感じすぐにマジックソードを構える。

 集中して敵襲に備えていると、ホーンタイガーがきた方向から現れたのは、甲羅(こうら)に幾つもの口をつけたソードタートルだった。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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