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ハズレ枠の転生貧乏貴族、武姫を継承し最強へ至る  作者: 蒼田
第1章: あったか家族と転生者の少年
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第3話 武姫、そしてこれからのこと

 父上に武姫達の事を話した。

 驚きすぎて言葉が出ないとは(まさ)にこのことで、父上と母上は終始無言だった。

 彼女達の話によると彼女達を作ったのが僕達のご先祖様らしい。

 で扉を開ける事が出来たのは僕が鍵の武姫「アリス」を起こすことができたからのようだ。


「……そうか。それで私の時は鍵が開かなかったのか」

「ええ。あの扉を開けるには適合者の膨大な魔力が必要になるので」


 マリーが言うには適合者とは膨大な魔力をもつ者の事。

 そんな人山ほどいるんじゃないのかと思ったけど、アリスが起きる程の魔力量を持つ人はそう多くないらしい。


「アルちゃんの魔力は(けた)外れね」

「そうなの? 」

「うむ。私達が活動していた時代でもこれほど魔力を持った者はいなかった」


 僕の魔力は思った以上に桁外れのようだ。

 もしかしたら転生者というのが関係しているのかもしれない。

 調べようはないけど。


「アルちゃんはどんな魔法を使うの? 」

「僕は……」

「アルフレッドには魔法を教えていないんだ。マリー殿」

「わたしのことは「マリー」でかまいませんよ。しかしどうして? 」


 マリーが聞くと父上と母上の表情が少し(くも)る。

 不思議な顔をするマリーに事情を説明する。


「僕が魔法を使わないのは無属性魔法しか使えないからなんだ」

「どうして? 」


 マリーがまた首を傾げる。

 他の武姫をみても「わからない」という表情をしている。

 もしかしたら彼女達が動いていた時代と今の時代の常識が違うのかもしれない。

 だから彼女達に現代の無属性魔法の事情について教えた。

 

 無属性魔法は一般的に不遇扱い。

 属性魔法は(はな)があるし強力だ。

 だが華が無いという理由だけで不遇扱いされているのではない。


 まず無属性魔法は習得難易度が高い。

 これは覚えるのが難しいとというわけでは無く、無属性魔法しか使えない人が少なく教材や書物が少ないということだ。

 無属性魔法の他になにか属性魔法の適性があれば皆属性魔法を重点的に覚えるみたい。

 目立つしね。

 つまるところ覚える人が少ないから文献も少なく、そして本の値段が異常に高いということ。

 ぶっちゃけウィザース男爵家のお金では買えないレベル。


「今はそんなことになってるのね」


 マリーがそう言い腕を組む。

 少し考えると父上と僕を見て口を開いた。


「わたしが魔法を教えましょうか? 」

「良いの?! 」

「もちろんよぉ。でも許可を貰ってからかなぁ」


 すぐに僕は父上を見る。

 父上は驚いたような表情からすぐに笑顔になり口を開いた。


「構わないよ。マリー、迷惑をかけるかもしれないけどよろしく頼む」

「迷惑なんてとんでもないですよ。わたし達はアルちゃんの武姫ですもの」


 マリーが「ふふ」と笑いながら当然のように言う。

 少し恥ずかしくなりマリーから視線を逸らすとフレイナとアリスも「うんうん」と頷いていた。


「マリーが魔法を教えるのなら、私は剣術だな」

「え……? 」

「それは良いわね」

「確かに家に(こも)ってばかりでは体に悪い。頼めるかね? 」

「もちろんだ」


 フレイナが目を輝かせて頷いている。

 まて。彼女達は戦闘用に作られた存在だよね?

 僕がフレイナに剣術を学ぶとして……、僕生きて帰れるか?


「アリスの力は教えることができるような力じゃないです。寂しいですが、お兄ちゃんの応援をするのです! 」

「お、お兄ちゃん?! 」

「はいなのです! アリスのお兄ちゃんなのです! 」


 いつの間に僕に妹が。

 いやこの中で一番妹っぽいのはアリスだけど、転生してずっと一人っ子だったから違和感が。

 それにそんなこと父上が許すのか?


「アルフレッドには妹がいない。本当の妹ではないけれどいいと思うよ」

「ありがとうなのです! 」

「あらあら娘が出来たようでうれしいわ」


 ふふふ、と母上が笑い話は続いて行く。

 本から女の子が出て来るというとんでも現象が起こった僕の誕生日だけれど、今までにない一日になったのは確か。

 父上に貰った鍵のおかげで新しい家族が出来、更に魔法や剣術を教えてもらうことになったのだけれど、今後が少し不安でもある。


 まぁこれからこの館が騒がしくなるのは確実だろうね。


 ★


「で、なんで僕の部屋に皆いるの? 」


 僕が部屋に戻ると彼女達がついてきた。


「それはアルちゃんがわたし達の(あるじ)ちゃんだからよぉ」

「いや部屋、割り振られたよね! 」

「あ、主殿。ここにいてはダメだろうか? 」

「……一緒の部屋はだめでしょ? 」

「アリスも一緒に寝たいです」

「ちょっとまって。それは誤解を招く言い方だ」


 皆理由になっていない。

 この館には空き部屋が多くある。

 だから気を聞かせた父上が皆に部屋を割り振ったのだけれど現状意味をなしていない。


「頼むから自分の部屋に戻ってくれ」


 彼女達に必死に頼み込む。

 必死さが伝わったのか何とか別々の部屋で寝る事を了解してもらった。


「ねぇアルちゃん。一つだけいいかな? 」

「……この部屋で寝る事以外なら」

「アルちゃんの魔力をわたし達に、分けて♪ 」

「魔力を分ける? 」

「そうよ。わたし達は魔法生物。つまり魔力で動くの」

「魔力切れを起こしたら動けない? 」

「その通りよ。流石アルちゃんね。理解が早いわ」


 魔力を分けることで僕が夜ぐっすりと眠れるのなら安いもの。


「魔力を分けるのは良いけど夜も活動するの? 」

「ええ。わたしは眠っている間に増えた本を読みたいわぁ」

「わ、私は遠慮しておこう。明日の朝魔力を流してもらえるとそれで」

「アリスはこの体でぐっすりと寝るのです! 」


 活動したりしなかったりか。

 フレイナに至っては剣のままでいいという。


「だめよフレイナちゃん。ちゃんとアルちゃんの護衛をしないと」

「ううう……。だが」

「フレイナちゃん。暗い所が苦手なのは知ってるけど、きちんとアルちゃんは守らないと」

「に、苦手ではないっ! 」


 フレイナの慌てる様子を見る限り彼女は暗い所が苦手なのだろう。

 だから魔力の補充は構わないといったのか。

 魔法生物として起きていないと暗いも明るいもないからね。


「あ、主殿。私は暗い所が苦手ということは、マ、マリーの冗談だからな」

「……その割にはかなり動揺しているみたいだけど? 」

「ど、動揺していない」

「ならフレイナちゃんは暗い所でもきちんとアルちゃんを守れるわよね? 」

「も、もちろんだ! 」


 フレイナが言うとマリーがにやりと笑った。

 フレイナは「しまった」という表情をして汗のような物を大量にかいているのがわかる。

 これは可哀想だ。助け舟でも出そうかな。


「……そもそも護衛はいらないけど? 」


 言うとフレイナが絶望したような表情をする。

 ……どっちなんだよ!!!


「だめよアルちゃん。いつどこにどんな危険があるかわからないもの。きちんと護衛をつけないと」


 マリーが(たしな)めるように言ってくる。

 確かにマリーの言う通りだ。

 けれど今までそんな危険にあったことは無いし。

 もっと高位の貴族なら夜寝ている時に襲撃されたりするのかもしれないけど我が家は男爵家。

 狙われることは無いと思うけど……、マリーを見ると引きそうにない。


「わかったよ。護衛をつけるよ」

「うんうん。アルちゃんは良い子ね」


 ため息交じりに言うとマリーが機嫌よく頷く。

 そしてマリーが魔導書を渡してくる。


「これに魔力を注いでね」

「魔導書に? 」

「そう。わたし達武姫の本体は元となっているアイテムだから」


 ずっしりと重い魔導書を受け取りしっかりと持つ。

 ベッドに腰掛け固定し片手をかざして思いっきり魔力を流した。


「んんん~~~~!! 」

「?! 」


 食いしばるような声がし顔を上げるとマリーが床に突いていた。

 何か不味い事でもしたのかと慌てると、「はぁ……はぁ……」と荒っぽい息をたてながら赤い顔をこちらに向ける。


「さ、流石アルちゃんね。いきなりだったから吃驚(びっくり)しちゃった」

「だ、大丈夫? 」

「大丈夫よ。さ、次はフレイナちゃんね」

「わ、私?! いややっぱり……」

「ここまで来て引き戻さない。さ、アルちゃん。やっちゃって♪ 」


 マリーがフレイナの長剣(ロングソード)を奪い僕の所へ持ってくる。

 フレイナは可哀想なくらいに涙目になっている。

 そんな彼女をみて、心の中で「ごめんね」と謝って魔力を流した。


「ふみゃぁぁぁぁぁ~~~~!!! 」


 魔力を流すとマリーの時と同じようにフレイナが床に横たわった。

 少し体がビクンビクンと跳ねているけど本当に大丈夫だろうか。


 しかしなんだろう。

 魔力を流しているだけなのにイケナイ事をしている気分になる。

 少し顔に熱を感じながらフレイナの様子を見ていると服を引っ張る感触がする。

 引っ張られる方向に顔を向けるとアリスが鍵をこちらに渡していた。


「よ、よろしく、なの、です! 」


 どこか決意に満ちた瞳で見上げるアリスに顔を引き()らせながら鍵を受け取る。


 今日はこの世界にきて初めて「煩悩(ぼんのう)退散」を心の中で復唱した日でもあった。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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