第24話 エズの町を救え! 3 ダンジョン 3 vs シルバーウルフ、vs タイガーオークコマンダー
アリスが転移魔法陣を見つけた。
「次の階層への転移魔法陣? 」
「いいやそんな感じじゃないな。アルフレッド」
首を傾げて呟くとリーグルドが緊張した雰囲気で否定する。
なら何なのだろうか?
罠というわけでもなさそうだし。
「これはっ! 」
興味深そうにライルが近付き観察する。
驚き僕達の方を見上げるとヒョウカを呼ぶ。
「これなのですが……どう思いますか? 」
「……確かにそれはあり得るけど、いやまさか」
何やら解析のようなことをしているみたいだ。
魔法陣に触れないのは転移魔法が発動したらいけないからだろう。
でも何を慎重に話し合っているんだ?
首をかしげていると二人が僕の方を見た。
「正直信じがたいですが、これは、ここから外に繋がる転移魔法陣の様です」
「「「なっ!!! 」」」
ここから外に?!
「まさかここから直接外に出てたってことか! 」
「……道理で道中魔物が少ないはずです」
「もしかしたらゴブリンエンペラーが外に出てたかもしれないってこと?! 」
ヒョウカが震えながら呟くようにいう。
「……判断は正しかった、ということか」
「無謀だけどな」
「だがエンペラーを倒せる奴なんてアルフレッド以外にいるか? 」
「……確かに」
――危なかった。
これが正直な感想である。
エンペラーが外に出なくてよかったとしみじみ思う。
町に出ていたらウィザース男爵領だけでなく周りの領地もかなりの被害を受けていたと思う。もしかしたら家まで来ていたかも。そう思うと身震いがする。
しかし……この階層の外に向く転移魔法陣があるということは他の階層にもあるかもしれないということではないだろうか。
ならば他の階層も早急に落とさないといけないね。
「……アルフレッド殿」
ライルが悔しそうな顔をして僕を見る。
「私達はこの転移魔法陣を使って外に脱出しようと思います」
ライルが言うと他のパーティーも頷いた。
「もっと戦いを見てみたかったが、これ以上は邪魔になるかもしれないからな」
「今回は敵から見えない所だったからよかったけど、今度はどんなフィールドになるかわからないので。その時自分の身を守れるかどうか……」
「せめてアルフレッド殿の十分の一でも力があれば記録係としての役割を全うするのですが、……無念です」
「一応聞いておくが……アルフレッドは撤退する気はないんだろ? 」
「気遣いは嬉しいですけど、その通りです。僕はこのままこのダンジョンを踏破する。他の転移魔法陣が起動する前にね」
「分かった。あとは、よろしくな」
そう言いリーグルド達は素材を回収して魔法陣の上に立つ。
そして魔法陣が起動し、僕の前から姿を消した。
「さてと。アリス。あとどのくらい魔力は残ってる? 」
「ん~。もう大技は使えないです。けど何度か転移門を開けるくらいの魔力は残っているです! 」
「十分だ。アリス。マリーを呼んでくれないか? 」
「分かったのです! 」
いつものようにアリスが転移門を開ける。
黒い空間の向こうに行き、緑のローブを着たマリーとアリスが出てきた。
「忙しい所ごめんね、マリー」
「大丈夫よ。アルちゃん」
「仕事中だった? 」
「そうだけど……、他の子に仕事を振ってきたから大丈夫よ」
と魔導書を手に持ちいう。
マリーはいつも通り……、ではなくローブの下にスーツが見える。
やっぱり仕事中だったんだ。
悪いとは思うけど、今回は主として僕のわがままを聞いてもらおう。
「アリスちゃんから大体の状況は聞いてるけど大変なことになってるみたいね」
「まぁね。アリスも魔力をだいぶ使ったみたいだし、ここはマリーに助けてもらおとね」
「魔法を打つのは久々よ。腕がなるわぁ」
喋りながら次の階層を目指す。
「でもフレイナちゃんが嫉妬しそう」
「確かにそうだけどここはダンジョン。真っ暗になったら僕の身が危なくなるかもしれないからね」
「フレイナは暗くなるとパニックになって見境が無くなるのです」
「あれさえどうにかなればねぇ」
「後でちゃんとフォローしておくよ」
マリーが出て来るシルバーウルフを風弾で一掃する。
一撃一撃がバカでかい。
リーグルド達がいる状態でマリーを呼んだら彼らも巻き添えになるだろうね。
だからマリーは人がいる所では極力戦わせないようにしている。
「そろそろね」
マリーが言うと視界が開けてくる。
そして僕達は草原のような所に出た。
「青い空? 」
「戸惑うのもわかるけど……風弾! 」
空を見て止まっているとマリーが僕の隣に打ち込んだ。
うおっ!
一瞬のことで動けなかった。
が隣から「キャン」という声が聞こえてくる。
「もう戦いは始まってみたいよ。刃の竜巻」
気付き、すぐさま魔力感知を広げた。
それと同時にマリーが魔法を放たれて大きな竜巻が出現する。
物凄い風速だ。
辺り一帯を巻き込みながら白銀の刃を回転させる。
どんどんと魔力感知から魔物が消えている。
ん~。中々にグロい。
けど呑気に見てられない。
早く転移魔法陣対策を立てないと。
「アリス。相手の転移魔法陣を封じ込める? 」
「出来るのです! 」
頼むとアリスが力を発動させる。
「全ての転移を禁ずる! 」
アリスがやったようだ。
マリーの竜巻の効果が終わる。
多くのシルバーウルフが倒れている中僕は一番大きな魔力の元へ、走る。
「おら! 」
忌々しそうに僕を見る巨大なシルバーウルフを発見。
すぐに切りかかるけど横に回避された。
着地と同時に尻尾が迫る。
それをジャンプで回避してシルバーウルフに向けて魔弾を打つ。
「この巨体で避けるのか! 」
足の速いシルバーウルフだが、まさかこの巨体に避けられるとは思わなかった。
魔弾が尽きる。
マジックソードを振り上げる。
するとシルバーウルフは一気に距離を取る。
「Grurururu……」
けど――。
「射程範囲内だ」
マジックソードを伸ばしてシルバーウルフを切り裂いた。
★
「最初はゴブリンエンペラー、次がウルフキングの亜種ナイトキング、なら最後は何が来るのでしょう? 」
マリーが敵を倒しながらリズミカルに言う。
流石にわからない。
ダンジョンの外に出ていた魔物の上位種と言うくらいしか情報が無いからね。
「オークの系統だとは思うけど」
「答えはこの先ねぇ」
マリーとアリスと共に開けた場所に出る。
薄暗い広場のような所に出ると一斉に目線を感じた。
「! 」
すぐさまマジックソードを構える。
襲って来る気配はない。
集中してみると相手の姿が見えてきた。
「……オーク」
「アルちゃん。奥を見て」
オークと出くわしたがすぐに襲ってくる気配がない。
少し違和感を感じながらもマリーが示す方を見る。
するとそこには黄色と緑のコントラストを作った、鞭を持ったオークがいた。
体の大きさは僕の二倍程度。普通のオークよりも大きい。
「あれはタイガーオークコマンダーね」
「タイガーオークコマンダー? 」
「ええ。指揮系統の力を伸ばしたオークよ。力自体は他のウォーオークと違いないんだけど、部下を強化したり指示を出したりするわ」
「……今あのオークが襲ってきていないのはタイガーオークコマンダーが指示を出して止めてるってこと? 」
「そうね。余程警戒されているみたい」
それほどの知能があるのか。
まずは先手だ。アリスに頼み転移封じをしてもらう。
完了して、もう一度タイガーオークコマンダーに目を移す。
オークが僕をギロリと睨む。
鞭で地面を何回か叩いたかと思うと、「ガガッ! 」と声を上げる。
「僕がやる」
正面からくるオークの懐に屈んで入り腕を切り上げる。
――ズシャァァァァァ!!!
腕を無くしたオークが悲鳴を上げながら後ろに下がる。
追撃をしようとすると挟むように二体のオークが拳を向けてくる。
それをバックステップで回避しながら、マジックソードを上段から振り下ろして、二つの拳を一撃で落とす。
体勢を整えつつ魔弾で三体仕留めた。
次が、こない。
慎重だな。
ならこっちから!
地面をけり他のオークを落としていく。
速度に驚いたのかベシベシと何度も鞭を打ち付ける。
――キン!
受け止められた?!
タイガーオークコマンダーの強化か。
オークの顔が醜悪に歪む。
これで勝ったと思ってるのか?
強化には強化だ。
マジックソードに魔力を流す。
鋭利さを増したマジックソードで次のモーションに移ろうとしていたオークの腕を切り裂く。
一瞬驚いたような表情をするが、再確認することなく切り裂いた。
「お前で、最後だ」
オークを全て倒し、タイガーオークコマンダーにマジックソードを突き立てる。
首を刎ねて、戦いを終えた。
「お疲れ様ね」
「お疲れ様なのです」
マリーとアリスが労ってくる。
ありがとう、と返して部屋の様子を観察と。
部屋の中をくまなく探すと外に出る魔法陣の奥に次に繋がる廊下が見えた。
「全部で三階層なら次の部屋が最後ね」
何も出ない通路を歩く。
少ないけど、今まで魔物を倒しながら進んでいたから、逆に警戒してしまう。
ちょっと歩くと光が見えた。
距離は他の比べて短かったらしい。
程なくして部屋に辿り着いた。
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